第3話:異世界の生活が始まる
翌朝、正一は目を覚ますと、村の小屋に布団代わりの干し草の上で寝かされていた。
「…ここは夢か?」
頭をかきながら立ち上がると、昨日の戦闘で村人たちに大歓迎され、
食事や着替えを整えてもらったことを思い出した。
「佐藤さん、朝ごはんです!」
エルナがにこやかにお盆を差し出す。
そこには焼きたてのパンや野菜スープ、見たこともない果物が並んでいた。
「ありがとう…いや、俺は別に…」
しかし正一は、つい手を伸ばして食べ始める。
食後、村人たちが集まり、家事や村の運営について相談を持ちかけてきた。
「あなたなら、村の井戸をもっと効率よく使えるでしょう?」
「農作業の手順を改善できませんか?」
正一はしばし考えた後、得意の人生経験と理屈をフル活用して提案する。
「まず、土の状態を確認してから水をやる。そうすれば無駄が減る。
あと、道具はここにまとめて置くと効率的だ」
村人たちは目を丸くした。
「なるほど…なんて頼もしい…!」
その日一日で、村の生活は格段に効率化された。
掃除、炊事、農作業…すべて正一の提案でスムーズに進む。
「…なんで俺、こんなに役立ってるんだ?」
正一は頭をかきながら呟く。
戦闘も生活も、すべてが偶然と経験の力でうまく回ってしまう。
夕方、エルナが言った。
「正一さん…戦闘だけじゃなくて、村の生活でもあなたは頼りになりますね」
正一は少し照れくさそうに笑った。
「いや、俺はただの定年退職者だって…」
しかし、その夜、遠くの山の向こうで魔王の影が動いた。
「フフフ…面白い者が現れたな」
正一の無自覚無双は、戦闘だけでなく、日常のすべてに影響を与え始めるのだった。




