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第2話:おっさんの戦いはじめ


森を抜けた先に、ささやかな村が見えた。


「なるほど…こういう世界か」


正一はまだ半信半疑のまま、少女・エルナと一緒に村へ向かう。


「村人たちも、魔物のことを恐れているようです」


エルナが小声で説明する。


正一は眉間に皺を寄せた。


「俺は戦えないって…いや、戦う気もないぞ」


ところが、村の入口に差し掛かった瞬間、空気がざわついた。


「ガオォォォ!」


巨大なオークの群れが、村の方向から突進してくる。


「え…うそだろ、もう来たの?」


正一は慌てて体を引くが、どうにも逃げ道がない。


「仕方ない…」小さくため息をつき、正一は森で覚えた動きを思い出す。


いや、思い出すというよりは、自然に体が動いた。


転がる木の枝を利用して魔物の進路を塞ぎ、石を蹴って視界を遮る――


「な、なんでこんなにうまくいくんだ…?」


正一は自分でも驚くほど正確に動き、オークたちは次々と倒れていった。


村人たちは目を見開き、口を開けたまま固まる。


「勇者…より強い……」


エルナも感嘆の声を漏らす。


戦闘が終わると、正一は汗をかきながら息を整えた。


「いや、偶然だから。たまたま、だ」


しかし、村人たちは正一を囲み、次々と感謝と称賛を口にした。


「あなた…本当に勇者なのですか?」


「いや、違う!俺は…ただの定年退職者だ!」


正一は頭を抱えながら叫ぶ。


しかし、これが村人にとってはまさに“勇者そのもの”の姿だった。


その日、村は小さな戦勝祭のような雰囲気に包まれ、正一は困惑しつつも、少し照れくさそうに笑った。


夜、星空の下でエルナが正一に問いかける。


「これからも、魔王を倒すために…戦ってくれますか?」


正一は星を見上げ、深く息をついた。


「…俺は勇者じゃない。でも、必要ならやるしかないか」


こうして、60歳のおっさんの異世界冒険は本格的に始まった――


笑いと混乱に包まれつつも、無自覚無双の伝説が静かに広がり始めるのであった。


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