よろしく頼む
小屋に段々と人が集まってくる。
そして、先生らしき人が一番最後に入ってきた。
皆ただ空気を食んだ。
いつもと違う人だ。
そして、厳格な雰囲気を醸し出しているその人は言った。
「前の先生は、国のために違う場所に行った。」
「だから、今日から私が先生だ。」
「以後、よろしく。」
皆そんなこと聞いてなかった。
新しい先生が持っているものに目線が集中する。
「銃だ。」
一郎が言ってしまった。
その言葉に先生が反応する。
「これか?」
「偽物だと思ってるだろ?」
そう言って先生は窓を開けて銃を構える。
"ドンッ"
初めて銃の音を聴いた。
こんな音なんだ。
そりゃ人は死ぬだろうな。
皆何も言わずにただじっと先生を見つめていた。
いや、何も言えないのだ。
言ったらその後の展開を想像できるから。
涙を浮かべているやつもいた。
神に祈ってるやつもいた。
まさに音のない混沌した空間だった。
「どうだ?」
「凄いだろ?」
「お偉いさんからもらったんだ。」
「いつも感張ってくれているからだとよ。」
笑顔を滲ませながら先生は語った。
この国は終わりに近づいている。
そう実感した。
実感せずにはいられなかった。
こんなやつに銃を渡すとか、もう終わりだろ。
皆の沈黙が先生に刺さる。
それに気づいていない。
それも異常だ。
「それじゃ。」
「自己紹介をする。」
「俺の名前は次郎だ。」
「改めて、よろしく頼む。」