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 今日も学校に向かう。

 日本がこんなときに。

 学校に行ってもしょうがないじゃないか。

 こんな知識がどんな役に立つんだ。

 そう声を張り上げたいが、出来ない。

 言ったらきっと……。

 想像するだけで身体が震える。

 もう、考えるのをやめよう。

 そうしよう。

 学校は家から歩いて三十分ぐらいのところにある。

 意外と近いな。

 みんなは一時間かけて来るのに。

 それだけは運が良いと言える。

 歩いていると雀の鳴き声がする。

 近くの川のせせらぎが聞こえる。

 東京じゃこんな音は聞こえないのだろうな。

 この瞬間だけは田舎で良かったと思える。

 畦道を進むと小さな小屋が見える。

 着いてしまった。

 ここにいる先生が怖いのだ。

 まるで、軍人みたいに竹刀を持っている。

 いまの時代に合わない風貌だ。

 この小屋には機械が沢山ある。

 どんな機械かは教えてくれない。

 教えてくれと願ったやつは、学校に来なくなった。

 どんなことがあったかは知らない。

 でも、少し羨ましい。

 この小屋に来なくてよくなるのだから。

 こんなことを言ったら、きっと大人から怒られるだろうな。

「よぉ、太郎じゃん。」

 後ろから声をかけられる。

 この声は。

「一郎。」

「おはよう。」

 一郎はいつもこの時間ぐらいに小屋に来る幼なじみだ。

「こんな早くに来るなんて珍しいな。」

「やっと、お国のために動き出したか?」

 そう言って俺の肩に一郎は腕を乗せてきた。

 俺は一郎の腕を乱暴に振り払って出来るだけ嫌な顔をしながら言った。

「そんなんじゃない。」

「たまたま早く起きたんだ。」

「早く起きたなら少しでも国の役に立てって母さんに言われたから仕方なく来たんだ。」

 一郎は手をたたきながら、天を仰ぎながら笑った。

 俺はますます不機嫌になった。

 嫌な笑い方だ。

 人を馬鹿にしたような声。

 俺はこいつが嫌いだ。

 自分のいきる道は国の役に立つことだと信じている。

 俺はそんなこと思えない。

 ただ従うことしか出来ないからそうしてるのに。

 一郎の人生楽しそうだ。

 俺たちは小屋に入る。

 まだ、誰もいない。

 二人きりか。

 そう思うと少し落ち込む。

 まあ、無理に話す必要もないけど、話してあげないと可哀想だ。

 一郎の落ち込んだ顔で俺は無理をしてしまう。

 その顔が子犬のように見えるから。

 犬は好きだが、国家の犬は嫌いだ。

 可愛くないからだ。

 お国のためとか言いながら、自分たちのことしか考えていないから。

 でも、一郎はそいつらとは違う。

 自分のことしか考えていないなら、もっとサボるはずだ。

 でも、サボっているところを見たことがない。

 ちゃんと先生の話を聞いてから、行動している。

 やっぱり尊敬するべきなのかもしれない。

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