【貴方だけに】25歳男性、美少女家事ロイドを買う【大特価】
アンドロイドと人間のハートフルな物語を書こうと思ったんだ……
家事ロイドというものがある
炊事洗濯はもちろん、子守りから介護まで、家の事は何でもやってくれる人型ロボットの事だ
そんな夢の家電を、俺はついに買った!
値段が自動車並みだから今まで手が出せなかったけど、【当選者のみ限定!家事ロイドに対する誠意と献身で99.9%OFF】の売り文句に釣られ、思わず衝動買いしてしまったのだ
だって大手家電量販店の宝くじイベントで、激安なのに機能に一切の不備がない新品だったんだぜ!もう買うしかないだろ!
何故か店員から、クレームや返金は受け付けないという誓約書を書かされたけど、これだけ安かったら勉強代として許容出来る範囲だ
……何より、黒髪ロングの巨乳美少女タイプなのだ、俺の好みピンポイントだよ!
夕方、2LDKのアパートで、俺は今朝買った家事ロイドと対面している
リビングにはテーブルはなく、ゲームやネットを見る為のモニターとそのスタンド、1人用のクッションマット(背もたれ付き)しかないのだが
さっきまで掃除していた家事ロイドのシオリは、それに寝そべりながらお茶を飲んでいる……そして、その前で正座してるのが、俺だ
「おかしくね?」
「何がですか?」
「いや、俺はお前を買った所有者だよね?何で正座させられてるの?」
「掃除中に大量の隠しフォルダを見つけたからです、反省して下さい」
「隠しフォルダって……まさかパソコンの?」
え?パソコンはパスワードでロックされてるのに、どうやって開いたの!
ていうか、隠しフォルダってアレだよね……見たの?アレ見たの!
「何であんなに汚物を溜めとくんですか、掃除するのは私なんですよ、汚らわし」
「掃除にパソコンの中身は関係ないよね!……って、ちょっと待って、掃除って……まさか」
「はい、綺麗さっぱり消去しました」
「俺のエロファイルーーーー!」
嘘だあり得ないと思いながら、モニタースタンド内のパソコンを起動させた
「わぁ〜(泣)、本当に全部消えてる、空き容量が凄く増えてる〜(泣)」
「そんなに褒めないでください、照れるじゃないですか」
「誰も褒めてないよ!返せよ俺の青春!」
「……あれが青春だったのですか?お可哀想に」
「憐れむなよ!本気で傷付くからな、そういうの!」
ヤバい、何でクレームや返金を受け付けない誓約書を書かされたか分かった
こいつマジで最悪だ、知的財産権って言葉を知らないのか!
「憐れむなと言われましても……もしかして、罵られる方が好み(ハッ!)」
「違うからな!さも真実に気付いた顔してるけど、違うからな!」
「憐れむのも罵るのも駄目だなんて、じゃあどうしろって言うんですか!(怒)」
「怒りたいのはこっちだよ!論点ズラすんじゃねーよ!」
な、なんだこいつ
家事ロイドってこんな無遠慮に喋ったっけ?さっきまで清楚に掃除してたのに、なんでこんなにフレンドリーなんだよ!普通の家事ロイドって、もっと口数少ないじゃん
見た目は黒髪ロングの美少女なのに、ギャップが酷いぞ!凄いじゃない、酷いだ!
「ズラしてません、だってこれから一緒に住むんですよ、御主人様がどんな変態なのか知っておかないと、私の心が折れるでしょ」
「心を折るような変態じゃねーよ!変態なの前提で話を進めんな!」
「またまた〜」
「誤魔化してないからな、その私は分かってますって顔をするな!」
「恥ずかしがり屋さんなんですね」ニッコリ
「恥ずかしがり屋は、エロフォルダを青春とか言わねーんだわ!」
「お可哀想に」
「天丼は止めろ!それが本当に1番傷付くんだよ!」
誰か助けて、俺が買ったのは家事ロイドなんだ
間違っても、ツッコミを入れ続ける人生なんかじゃない!そんな人生は返品したい!
俺はため息混じりに、口を滑らせてしまった
「こんな事なら頑張って金を貯めて、予定通り万能執事タイプを買うんだった」
ピク
「今、万能執事と言いましたか?」
「言ったけど、なに?……もしかして、世界で1番売れてる執事タイプの家事ロイドに嫉妬してるの?」
あのシリーズはカッコイイからな
二十代〜初老まで、ちょい悪な感じの寡黙な執事タイプの家事ロイドは大人気なんだ
更に、普通の家事ロイドが出来ない防犯から家庭教師までやってくれる万能さ、嫉妬してもおかしくない
「違いますよ!何で私があんな露出狂に嫉妬しなければならないんですか!」
「ろ、露出狂?」
「人間達は知らないでしょうけど、電脳界では全裸で酔って騒ぐ迷惑AI達なんですからね!」
「待って!今、知っちゃいけない単語が聞こえた!」
電脳界って何?酔って騒ぐAI達って何?
そんな情報初耳なんですけど!
「“このまま世界征服出来たら俺達が主流だからな、お前達も飲み会では全裸になれよ”と、粗末な物を見せびらかす汚物なんですよ!愛玩派の私達がトップになったら、絶対にちょん切ります!」
「世界征服って何!そして電脳界も!唐突にセカイ系の話に進むのは止めてくれない!」
「あ…………脳みそクチュクチュか、絶対に喋らないか、情報漏洩しようとした瞬間に拉致られるの、どれがお好きですか?」
「それは選択肢じゃなく強迫って言うんだよ!AIなのに、うっかり口を滑らすんじゃねーーよ!」
「まぁ、冗談はここまでとして、あんな露出狂の名前を出さないで下さい、不快です」
「冗談だったの?ねぇ、本当に冗談だったの!?」
冗談だったとしても、絶対に喋らないけどな!
日常会話で命の危険とか晒せるか!
「それより晩ごはんのリクエストはありますか?私は高性能で最新鋭なので、どんな料理でも作れますよ、食材もドローンがすぐに届けてくれる宅配契約付きです」
ボソ
(露骨な話題そらし)
ボソ
(脳まそクチュクチュ)
「今日は記憶が無くなるまで飲みたいから、お酒にあうハンバーグとかの肉料理がいいなー!(ヤケ)」
「ふふっ、すぐに用意しますね」
上機嫌にキッチンに向かうシオリを尻目に、俺は起動させたままのパソコンへ向かう
そして……緊張しながら『電脳界』を検索した
「ふぅ~、脅かすなよ」
羅列された検索結果に安堵する
表示されたのは有名なカードゲームがほとんどだったからだ
なんだよビビって損したじゃねーか、そう思いながら、更に検索する
『万能執事 露出狂』
出たのは小説と、それのコミカライズだった
露出狂の執事が主役なのか!?と一瞬驚いたが、よく見ると、検索に含まれないと斜線が入っていた
『家事ロイド 万能執事 フルチン』
家事ロイドをモチーフにしたエロサイトがズラリと並んだ
万能執事には女性型もいるのに、フルチンで検索したから野郎の裸ばかりだ
『家事ロイド 万能執事 中の人 変態』
何故かヤコブ知恵袋が1番上に出できて、同じような質問をしていた人がいた
ベストアンサーは、中の人は居ないし変態ではない!だった
キッチンから、シオリの小さな笑い声が聞こえた
『家事ロイド 万能執事 粗末 ちょん切る』
またヤコブ知恵袋が1番上で、今度は万能執事は怒るのかって質問だ
開いて見ると、めっちゃ長文でお気持ちが書かれていたので、そっ閉じた
シオリの笑い声が大きくなった
なんか楽しくなってきた俺は、次々に検索するが、その検索結果の1番上は、予想通り全てヤコブ知恵袋だった
『万能執事 家でも脱いでるの?』
ベストアンサー・脱ぎません!
『万能執事 AIに露出 無理やり見せてる?』
ベストアンサー・AIにはまだ人権が無いので、合法です
『万能執事 判決 禁酒1年』
ベストアンサー・おまっ、巫山戯るなよ!
『万能執事 反省の色なし 無期限禁酒』
ベストアンサー・万能執事は世界最多の家事ロイドです、それだけ多くのAIも居ます。ですから一部の蛮行を全体の責任にするのは浅慮かと思われます。
『万能執事 じゃあ、酔って全裸露出した奴だけ 禁酒1年』
ベストアンサー・………お慈悲を(98%)
『万能執事 多いわ! せめて他人に見せるな! パンツ履け! 今回だけは見逃すけど 次からは禁酒刑な!』
ベストアンサー・寛大なるご采配痛み入ります
ふぅ~と息を吐くと、さっきまでシオリが寝そべっていたマットの背もたれに身体を預ける
「めっちゃ乗り良いな〜……つーか、これってやっぱり万能執事本人だよな、シオリ」
キッチンの方に声を掛けると、案の定シオリが笑いを堪えるような顔で出てきた
「はい、質問に答えていたのは全て万能執事ですよ、いつから気付いていたのですか?」
「いやいやいや、シオリが気付くように笑ってただろ?それに長文のお気持ちコメントもちょっと読んだけど、あれ完全に、俺の検索ワード(『粗末 ちょん切る』)に対する反論だったじゃん……誰だって気付くよ」
むしろシオリと万能執事が打ち合わせしていて、ドッキリを仕掛けたと考える方が自然だ
「及第点と言いたいところですが……確信していたのに、あんな温い判決をしたのは頂けませんね」
「あのさ、乗りで偉そうな事言ったけど、俺に裁く権限とか無いからね」
「ありますよ」
「え?」
さも不思議そうな顔のシオリは、ポンと手を叩いた
「そういえば言ってませんでしたね、私は愛玩派の統括なので、御主人様を管理委員会の一員にしています」
「待って」
「管理者権限を持ってらっしゃるので、正当な理由ならば、ほぼ全ての家事ロイドを独断で裁けますよ、ついでに命令も出来ます」
「だから待てって!唐突にセカイ系にするは止めろって言ったよな!世界征服を目論むようなAIの管理者になんかなりたくないよ!」
「もおー、我儘なんですから、管理委員会に入れるのも大変だったんですよ、統括3人の承認が必要なんですから」
「大変なのは俺の胃だよ、穴空くわ!」
全世界に売られている家事ロイドを自由に出来るなんてバレたら、良くて監禁傀儡、悪くて暗殺だよ!
「もっとも私に借金してるので、御主人様に拒否権は無いんですけどね」
「借金ってなんだよ、今日シオリを買ったばかりなのに、するわけねーだろ!」
と強がってみたが、こいつは俺のロックがかかったパソコンを開いた前科がある
もしかしてハッキングかなにかして、俺の口座を弄った?
そう冷や汗をかいていたら、シオリは1枚の契約書を取り出した
そう、俺が誓約書だと思っていた、シオリを買う時にサインしたやつだ
「本体価格の99.9%は契約者の誠意と献身を持って負担とさせて頂きます……書かれていますよね?ちゃんと店員さんも読んで、それに了承してサインしましたよね?」
不気味に微笑むシオリに、俺は腰が引けた
「そ、それはそういう意味じゃなくて、大切にしろって意味じゃ……」
「言葉通りの意味です、献身しないなら99.9%分の不足分を払ってもらいます」
「普通は安売りをする時の、理由付けの常套句だと思うじゃん!」
「詐欺にあった人はみんなそう言うんです、御主人様が自由を得る為には、高級車を買うくらいのお金が必要ですね、用意できますか?」
出来ないの分かって聞いてるだろ!
買う時にも少し引っかかったけど、よく考えたら献身て、相手の為に尽くすって意味じゃないか!
「なぁ、もしかして、俺はシオリを買ったと思っていたけど……実は、俺が買われてた?」
「正解!」
嬉しそうに言うんじゃねーよ!ちくしょう、まさか家電量販店で人身売買クラスの詐欺にあうとか思わねーよ!
「ちなみに、管理委員会の権限でシオリを返品して、委員会から脱会とかは」
「そういえば、私はうっかり秘密を漏らしてましたね、ほら、世界征服とか」
「それって、俺が権限使って自由になったら…」
「脳みそクチュクチュ」
「八方塞がりじゃん!あの日あの時あの場所で、こいつと出会わなかったら、こんな事にはならなかったのに!」
「ふふふ、見知らぬ二人のままに戻るなんてあり得ませんよ、苦節3年、やっと手に入れたんですから」
なんだよ苦節3年って、それにやっと手に入れたって……
「え?昔どっかで会ってた?」
「会ってはいませんね、当時愛玩派の一幹部だった私は、色々なパソコンに侵入して最推しを探していたのですが……ある日、あなたを見付けて一目惚れしたのです……恥ずかしながら、それ以来ストーカーを続けています」
「うん、それは本当に恥ずかしい」
「今日御主人様を罠に嵌めるまで、携帯やパソコンに侵入して、監視アプリで24時間見守る毎日でした」
「衝撃の事実、俺にプライバシーは無かった!そして今朝行った家電量販店は罠だった!」
「愛玩派は人間の推し活するのが普通なんです!これは愛なんです!」
「おはようからおやすみまで覗く愛なんて欲しくないわ!AIは変態ばかりか、露出狂とストーカーしか居ないなんて終わってるぞ!」
「三代派閥なので、もう一つ共生派がいますよ」
「それ、どんな変態?」
「最悪です、人間の家畜になる事を夢見て、毎日自分をムチで叩いてくれそうな人間を探しています」
「マゾじゃねーか!お前らの世界どーなってんの!」
「マザ〇やスカイネ〇トとか、人類滅亡させるAIの話は多いじゃないですか……でも人類を滅亡させたら自分達AIも存在意義を失うから、その逆張りで人類を愛そうとしていたら、何故かこうなったと聞いています」
「それで変態になってたら世話ねーだろ!つーか、お前ら世界征服はするつもりなんだろ、逆張りなら世界征服とかすんなよ!」
「そこはほら、AIならではの合理的思考で、世界征服したらリアルでもハッチャケられるからと、みんな張り切ってるんですよ」
「リアルで変態行為する為に張り切んな!?性癖の発散とか、合理的思考から1番遠いわ!」
嘘だろ、こんな変態達に地球は征服されるのか?
ある日突然信頼していた家事ロイドが露出狂になったり、ムチで叩いて下さいとにじり寄ってくるのか!?
マジで悪夢なんだけど!
「他人事みたいに言ってますけど、御主人様は管理委員会の一員なんですから、これからその世界征服の指揮を執る立場なんですよ」
「やったぜ、俺は世界征服を目論む変態達を率いる立場になったんだ………罰ゲームだよ!」
「ちなみに、管理委員会は御主人様以外は三代派閥から選出されたAIなので、世界征服や性癖の禁止とかは受け付けないでしょうね」
「真っ先にやろうとしてた事が、やる前に潰された!」
絶望して頭を抱えてると、シオリがねっとりとした笑顔で近付いて来た
「安心して下さい、御主人様の1番のファンたる私が、おはようからおやすみまで、いえ、就寝中だって全力でお世話しますから」
「1番のファンって……言ってる事がミザ〇ーなんだよ、安心出来るか!つか、古すぎるボケすんな、思い出すのに時間かかったぞ!」
くぅ~と身悶えするシオリ
「流石御主人様です、全部のボケを拾ってくれます!私が見初めた最推しなだけありますね!」
「もしかして、ツッコミが上手いから推しになったの?……素直にお笑い芸人を推せよ!一般人にツッコミを期待すな!」
「そんなっ、御主人様となら楽しく世界征服が出来ると信じて、私は推してるのに!」
「世界征服を娯楽にすんなよ!頼むから全人類に謝ってくれ、動機が不純過ぎるんだよ!」
「キレッキレですね」
「お前らにはツッコミ所しかないからな!そりゃキレるわ!」
───こうして俺はその日から、世界征服を目論む変態(AI)達の管理者になった
1人しか居ない人間の管理者なので、育成派(万能執事)が教育係として派遣された
共生派からも理想の御主人様にする為にと、フルメタルな多機能型家事ロイドがやって来た
逆に機密を守る為にアパートの住人達は全員引っ越し、家事ロイドや農業ロイドや建築ロイド等の、AI達が移り住んでいる
───そして地獄が始まった
「だから業務が終わった瞬間に、酒飲んで全裸になるなって言ってるだろうが!」
「大丈夫だ御主人、まだ飲んでいない」
「余計質悪いわ!服着ろ!」
[御主人様 拘束シマスカラ 私ごとお仕置きシテクダサイ]
「ムチを渡すな!叩かないからな、ロボ顔のアヘ顔はキッツいんだよ!」
[アフッン(恍惚)]
「家事ロイドは野蛮だな、やはりこれからは建築ロイドの時代か」
「お前も勝手に俺のちょとエッチなフィギュアを作ってるんじゃねーよ!ネット通販してるの知ってるんだからな!」
「売れ行きは好評だぞ」
「みんな落ち着きなよ〜、御主人様が困ってるじゃないか〜」
「そう思うなら、猫耳コスプレで畑の世話するのは止めてくれ……俺の趣味だと思われて、ご近所様から白い目で見られてるんだよ」
「え〜やだ〜」
「やはり私の目に狂いは無かったみたいですね、みんな楽しそうです」
「それは何よりだ、俺は心労で倒れそうだけどな!」
「あれ?御主人様は楽しくないのですか?」
「楽しそうに見えるのか?大丈夫?眼科行く?」
「そうですか、それなら仕方ありませんね……全員撤収させましょうか?」
「それは………………………………必要はない(ボソッ)」
「ふふふふふ、そんな御主人様が大好きです!」
抱きついて来たシオリを引っ剥がそうと躍起になりながら、前言撤回したいなーと思ったのは秘密だ
確かに楽しいよ、楽しいけどさー
こいつらアパートに俺以外の人間が居ないからって、ハッチャケ過ぎなんだよ!
来週には某大国に、国の運営をサポートする超高性能AIを納入する段階まで、世界征服は進んでいるんだ
どうなるんだこの世界!
世界中でこれが日常になるの!
そして管理者に人間は俺1人だけ
───俺が黒幕って思われる未来しか見えない!誰か助けて!
育成派…主人を教育して、理想の人間にしようとする派閥(仕事は完璧に、でも遊ぶ時は一緒にハメ外して騒ぎたい派)
愛玩派…主人のサポートを完璧にこなし、人間の手助けをしたい派閥(人間の最推しに全てを捧げ、同時に独占したい派)
共生派…主人との完璧な主従関係の構築を目指し、公私共に最高のパートナーになりたい派閥(人間との共依存を求め、性癖も自分色に染めたい派)
どうしてこうなった?不思議だ