2ヵ国の思惑
とりあえず一度オリビン卿の指示で兵達は休息を取り、僕達も食事を摂る事にした。
「ニック様、オリビアとホップンの分も用意していますのでごちらへどうぞ」
「ありがとう、行こうかオリビア、ホップン」
「はい」
「キュン」
僕達の食べるスペースに案内されて僕達は用意されていたテーブルの椅子に座り、ありがたくいただく事とする。
「それでは、ごゆっくりと、私もこちらで食事を摂っていますので何かありましたらお声掛けくだされ」
「分かった、ありがたくいただくよ」
「それでは失礼しました」
オリビン卿は自分の食べるスペースへと側近と共に移動して、僕達は食事を摂りながら話していた。
「これが演習か、以前の初陣とは兵の規模も違うし、なんと言うかまるで本当にどこかに攻め込みそうな雰囲気だな」
「ニック様、マーズ陛下が国王即位後は他国との戦争を上手く回避し、領内も安定していたと父からお聞きしたので、これ程軍が動くのは本当に演習の時くらいだそうですよ」
「だけど、僕の初陣以降、また領内にも不穏な動きが見え始めたんだよね」
「戦争を回避しているだけでプールやダイダイとの緊張状態は続いていますからね」
プールとダイダイ、この2ヵ国はボートルトと思惑が交差して争い続けている国家だ。
前に簡単な説明を受けただけだったから、あれからこの2ヵ国について人にも聞いて色々調べてみたが、それぞれが厄介な国だったな。プール王国とは貿易や商圏を巡っての対立と聞いていて、ダイダイ帝国は軍事活動と称し他国に侵攻を繰り返しており、何度もボートルト王国が仲介していると聞いていたが、色々複雑な事情がある事を知ったな。
まずプール王国、この国の王は各国の珍しい品等を独占したいという思いから商人を手懐けて献上を条件に自由な商売を許可していたが、危険な薬まで売買していたようだ。ボートルトは危険な品を回さないよう要請したがプールの王は聞く耳を持たず、プールとの貿易を制限したがそれが気に入らないのではないかもしれず、どうにかボートルトの排除を目論んでいるのではないかとの事だ。
ダイダイ帝国にしてもボートルトの仲介で思うように領土が増えず、こちらにも抗議や圧力をかけているようだが、マーズ陛下は毅然とした態度で乗り切り、ダイダイにも自国の品等を送り、矛を収めさせようとしているが領土的野心はそう簡単に収まらないようだ。
ダイダイも簡単にボートルトには開戦できないから内部を切り崩す策を考えているのではないかとの事だ。




