演習目的
オリビン家の陣に案内された僕はそこでテールの父であるマハール・オリビン卿と対面し、早速今回の軍事演習について説明を受ける。
「ニック様、今回の演習はニック様は見学と言う形で私についていただきます」
「うん、それで演習内容は?」
「部隊を2つに分けて進軍し、設定した目的地で合流するという内容にございます」
「それが演習?僕はこう、部隊同士の模擬戦みたいなものなんじゃないかなと思っていたよ」
少し想像と違った演習内容に驚き、僕はそれを口にするとオリビン卿が返答をした。
「ニック様はこれ程の規模の演習は初めてなのですな、そういう訓練もありますが、これはいかに部隊を迷わせず目的地に到着できるかの演習にございます」
「そうだね、戦場や帰還場所に正しく移動できないと大きなダメージを受けるからね、ん?ちょっといいかな?」
「何にございましょうか?」
「部隊を2つに分けて進軍するって言ったよね?1つの部隊はオリビン卿が指揮して僕がそれにくっつくけど、もう1つの部隊は誰が指揮するの?」
部隊を2つに分けるという事は当然指揮官は2人必要であるから、それに対して疑問を投げかけるとオリビン卿から返事が返って来た。
「テールめが指揮します、この演習目的にはテールの指揮能力を見極める事も含まれておりますゆえ」
「テール、君の為の演習だったのか?」
「はい、私もいずれ大きな部隊を指揮してニック様の手助けが必要だからという事で、私の指揮能力を見極める事も目的になっているのです」
「そうなのか、だけど確かテールは初陣で部隊を指揮して成果を挙げているし、指揮能力も優秀だったんじゃ」
訓練等は必要だとは思うけど、今更テールの指揮能力に疑問を抱くなんてと思ったが、そこでオリビン卿の考えを聞く事になる。
「ニック様、初陣は本来、少数の兵をもって、それほどで多くない敵を相手にするのが常道なのです」
「ええ、ニック様の初陣は少々例外的な部分が多くなってあのような事になりましたが、初陣は小規模の戦闘をするに過ぎないのです」
「そうだったのか、テールは領内の治安維持にも貢献してくれているからすっかり大きな部隊を指揮できると思っていたよ」
「私も今回、これ程多くの兵を指揮するのは初めてですので、指揮能力を見極められると思うと身が引き締まります」
「うむ、それじゃあテールすぐに部隊を集結させておけ、私はもう少しニック様に進軍ルートの説明をしておく」
「はい、父上……」
テールは今の僕より年上でお姉さんって感じだったが、考えたらまだ17歳で未熟な点も多いんだな。