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テールの申し出

 僕が王女殿下の護衛騎士に認められたお祝い会を終えて、その翌日、今日は木剣を使った稽古をコールと共にしていた。


「えい!えい!てやーーー!」


 僕は渾身の一撃をコールに放ったが、コールにかわされて背後から首元に木剣を突き付けられた。


「う……、参ったよ」

「へへへ、前より動きは良くなっていますが、まだまだ俺を捉えるのは難しそうですね」

「ああ、神速スキル無しでもこんなに速いんだね」

「そうっスね」


 コールは元々足が速く、それを活かす為に神速スキルを身に付けたのだ。僕とコールの模擬戦を見ていたテールが僕達についてのさっきの模擬戦の評価を話してくれた。


「ニック様、ニック様は確かに動きは良くなっていますが、カール騎士団長に成功した体当たりの成功体験が忘れられず、無理な突撃が随所に見られましたね」

「ああ、あれは結構上手くいったからね」

「奇策は想定されていないからこそ効果的なのですね。コールにはすでに見切られているし、実戦でも危険な事が多いのでお控えください」

「うん、分かったよ」


 そうだな、僕もどこか浮かれて調子に乗っていたところがあるな。これは反省だな。


「それからコールも、ニック様より速いし、捉えきれないのは確かだけど上手くいくと気を抜いている部分があるわね」

「ええ!そうなんっスか?」

「ニック様がその隙を逃さなければ結果が逆もあり得たわ、それくらいニック様の剣技は上達しているって事だから」

「はーーい、気をつけます」


 コールにもなかなか辛らつだなテールは。そんな中テールより大事な知らせを聞かされた。


「ニック様、ガリアス様より既に許可はいただいたのですが、ニック様も我らオリビン家の軍事演習に加わって欲しいのですがいかがでしょうか?」

「軍事演習?僕が?」

「ええ、近々オリビン家では軍事演習を開く事になっているのでニック様にも見学させてはと父、マハール・オリビンの申し出にございます」


 軍事演習、それは軍の動きを実戦形式で動かす訓練なのだ。テールの実家であるオリビン家で近々開かれて、それに僕も参加して欲しいという申し出がテールの父であるマハール・オリビン卿よりあったというのだ。


「もちろんだ、近くで君の父上の指揮能力を学ばせてもらうよ」

「ええ、よろしくお願いします」

「テール様、それって俺達も同行するんですか?」

「もちろんよ、あなた達にはいざとなったらニック様をお守りしてもらうし、あなた達も父の指揮を間近で見て欲しいわ」


 オリビン家の軍事演習か、大変そうだが、これも嫡子の仕事という事だね。

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