領地に向けて
もしかしたら僕は王女殿下の花婿候補になったかもしれないと言われたが、結局想像でしかなく、僕達は城の前に集まり馬車でクッキ領に帰る準備をしていた。
陛下はお忙しいという事でフレア王女殿下と護衛騎士団の面々がお見送りに来てくれた。
「テリナン卿、ニック、皆様道中お気を付けを」
「フレア王女殿下、わざわざお見送り感謝いたします、ん?ニックお前も礼を申さぬか」
「はっ!失礼いたしました、お見送り感謝いたします」
「ふふふ、ニックはお疲れなのでしょう、早めにお帰りになってお休みくださいませ」
昨日のオリビアの発言が気になって、反応が遅くなったがとりあえず僕は王女殿下へと感謝の言葉を言い、更に僕は気遣いに対しても返答した。
「お心遣い感謝いたします」
「ふふふ、それじゃあ皆様ごきげんよう」
そう言って馬車は発ち、王城をあとにした。例によって襲撃者に備え僕と父は別々の馬車に乗っていたが、僕の馬車にはテールが同乗しており、僕に話しかける。
「ニック様、失礼を承知で申し上げますが、やはりニック様は昨日のオリビアの言葉が気になっておいでですか」
「ん?ああ、そうだね、だけどやっぱり突拍子もない事であるとは思うよ」
「私もそう思います、ニック様はテリナン家嫡子ですし、簡単にテリナン家を断絶させるような事は陛下もお考えにはならないでしょう」
「うん、やっぱりそうだよね」
テールの言うように、テリナン家は代々王家を支えてきた貴族の家だし、そう簡単には断絶させないというのは僕も同意だな。
「ですが、王家を優先し、場合によってはテリナン家を断絶する事も考えられるかもしれませんので安心はできませんが」
「ええ、じゃあやっぱり場合によっては花婿になるの?」
「まあ、王女殿下だけの御意志では実現しませんでしょうし、今はニック様以外にもカール騎士団長がいらっしゃいますし、ニック様は余程の事がないと話が来ないと思いますが」
余程の事か、カール団長は王女殿下をしっかりと守り抜いて欲しいな。
「それからニック様、帰ったら、また学びの日々ですからね」
「ああ、分かっているよ、オリビアやコールも一緒に頑張ってもらわないとね」
「そうですね、今後はコールにも魔法を、オリビアにも棒術による護身を学んでもらわなくてはなりませんが」
特別護衛騎士の任命、王女殿下の花婿候補説、いろいろあったが、僕のスキルを見極める為の話なんだよな。とりあえずもうすぐクッキ領だ、帰ったら、また嫡子としての仕事が待っているぞ。