護衛騎士入り認定
僕の体当たりを受けてカール騎士団長に大きなダメージを与え、構えにほころびをしょうじさせたが、僕も自分の体当たりでのダメージがあり、まだ力勝負では彼の方に分がある。
このままつば競り合いをしているとジリ貧になると考えた僕は後ろに下がりカール団長と同じ構えで迎え撃つ。
この構えを使いこなせないと見たカール団長は向かってくるが、それが僕の狙いだ。
カール団長の攻撃に合わせ、僕も渾身の力を込めて団長の木剣を狙い撃つ、衝撃による破壊だ。
勢いあまって互いの木剣が衝突すると両者の木剣が破壊される。
「団長!」
「ニック様!」
お互いの木剣が破壊されたのを見て、陛下はこの立ち合いの最後の判定をくだす。
「両者、木剣を失った。よってこの立ち合い、引き分けとする!」
「ひ、引き分け……」
「そ、それじゃあニック様の護衛騎士入りはどうなるの……」
最後の賭けはお互いの木剣が破壊されて引き分けとなった。彼の木剣の遠心力を利用し、カウンター攻撃を仕掛けて破壊を試みたが、僕の木剣も衝撃に耐えられず破壊されてしまった。正直、僕の木剣だけが破壊される事も覚悟していたが、あとはどういう判断になるかを陛下に任せようとするとフレア王女殿下もリングに現れ、陛下やカール団長に声をかけた。
「父上、ニックはカール相手に引き分けとしました、これはカールにも匹敵する器量があるという証明ではありませんか?」
「フレア王女殿下、おそれながら申し上げます、器量そのものはカール団長が上回っており、ニック殿は剣技以外の部分で翻弄したに過ぎません」
「いや、あれこそ初陣を経験した者の動きだ」
「団長?」
護衛騎士の1人が僕は剣技が劣っている事を主張するとカール団長は言葉を発した。
「確かに我らは王女殿下を守る為に剣の腕を見込まれ護衛騎士としての任務に誇りを持っていた。だが我らは戦場というものに出た事がなく模擬戦を多くこなしたに過ぎない」
「何をおっしゃいますか、我らは王女殿下を守る最後の砦なのですよ」
「だからこそだ、戦場を経験しておるニック殿は我らの同志として必要と感じた」
「カール、それでは……」
実戦の動き、それを事前にコールに仕込まれていたのが功を奏していたのか、そしてカール団長が僕を必要と感じたという事は……。
「陛下、私はニック殿の護衛騎士入りは問題なく思います」
「ですが団長、ニック殿は我らと違い城に常駐するわけではないのですよ、そこまであてにしてよいものか」
「ニック殿はテリナン家の嫡子でもあるしな、我らに少しでも戦場の心得を教えてくれれば良いであろう」
とりあえず僕の護衛騎士入りは認められたようだ。