最後の激突
どうにかカール団長へのフェイント戦法で接近する事に成功し、そのまま体当たりでリングアウトを狙ったが、彼はリング上で踏みとどまった。
その際に護衛騎士より僕の体当たりは禁止行為に該当しないかという抗議があったが、陛下は禁止行為に当たらないとし、改めて立ち合いについての説明をしようとした。
「先程のニックの行いが禁止行為ではないかという抗議があったので、改めてこの立ち合いについて説明をしよう、両者、一度リングの中央へ」
「はっ!」
僕達がリングの中央に行くと、陛下は立ち合いについての説明を始めた。
「まずは禁止事項についてだが、木剣以外の武器使用並びに魔法に準ずるスキルの使用を禁止しておる。だが自らの肉体を活用する事は禁じておらんので先程のニックの体当たりも攻撃としては該当する」
「しかし陛下これは剣技での立ち合いなのでは」
「無論だ、両者は把握しておるようだが改めて説明すると木剣の破壊や落とした場合はそれにより失った者は敗北と規定しておる。つまり剣技の披露ができなければ敗北なのだ」
僕は体当たりという実戦でもありえる行動をしたから、その事で禁止行為とはならなかった。だけど木剣を失えばそれは即敗北となる。あくまでも剣技の立ち合いということを改めて強調した。
「以上で説明を終える。では改めて始め!」
再度立ち合いが開始されるが、すぐにカール団長はさっきと同じ構えをする。だが、僕の体当たりをまともにくらったせいか、若干ほころんでいるようにも見える。
「お、テール様、さっきよりはほころびが見えますし、これはチャンスなのでは」
「そうとも言えないわ、ニック様ご自身も体当たりでダメージを受けているし、どう転ぶかは分からないわ」
「それじゃあ次の一撃が勝負っスね」
うう、さすがに僕もあの体当たりでダメージを受けてしまったから、結構きついな、だけどこれで決めないともう持ちそうにない、いくぞ!
「はああああ!」
「うおおおおおお!」
手負いの僕と、カール団長は木剣でつば競り合いをする。ダメージを受けているとはいえ、向こうはまだ相当な力だ。腕力勝負は不利か、ならば!
「ニック様が後ろに下がった、一体何を」
「あ、あの構えは!」
僕の剣の構えを見て、カール団長がその構えを指摘する。
「私の構えと同じ、だがその構えは見よう見まねでは使いこなせまい、終わりだな」
やっぱり、カール団長はそう読んだか、これが最後の賭けだ、いくぞ残りの力を振り絞る!




