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ニックの奇襲

 いよいよフレア王女殿下の護衛騎士団のカール団長との立ち合いが始まった。開始早々、カール団長は隙の無い構えを見せてうかつに攻撃しようものなら返り討ちにするぞというプレッシャーを僕にかけてくる。


 とりあえず僕も簡単に攻撃されないように構え、カール団長との間合いをはかる。


「しかし団長もいきなりあの構えを見せつけるんだから、相当本気だな」

「ああ、あの公爵家嫡男様は訓練を見たが、従者と遊んでいるようにしか見えなかったから、そこまでする必要はないように思うんだけどな」

「団長!さっさと終わらせてしまいましょう!我らには訓練と護衛がありますから!」


 リングの外からも声が聞こえる、少しづつ僕も彼も動いているがなかなか隙は見せないな、僕もどうにか今の構えを維持しないと。


「やっぱりあのカール団長は相当の腕前ね、あれではニック様は攻撃を仕掛けてしまえば返り討ちにあってしまう」

「テール様、ニック様にあの構えを破る方法はないのでしょうか?」

「剣技ではカール団長に勝つのは難しいから、私達の防御の隙をついたような戦い方ができれば」

「ニック様は俺達の動きの癖をつかんだのは数日かかりましたし、この立ち合いだけであのカール団長の癖を見抜くのは至難の業っスよ」


 基本的にこの立ち合いでは木剣以外の武器や魔法、もしくはそれに準ずるスキルも使用禁止。つまり木剣とお互いの肉体のみが武器なんだ。


 肉体が武器といっても、僕が彼に勝っている部分はなんだろうな、身長も彼より低いし、うーん小細工程度にしかならないかもしれないが、このままじゃジリ貧で体力差で負けそうだな。よし!


「何だ、あの坊ちゃん、突撃したぞ!」

「終わったな!」


 とりあえず向かっていく、そして……。


「ニック様!危険です!お止めを!」

「いや、ニック様には何か考えがあるんでしょう、そうじゃなきゃあんな突撃しませんよ」


 僕はまず右側から木剣でカール団長に仕掛ける。カール団長は反撃を試みるが、すぐに左側に動き、そこから仕掛ける。まあフェイント戦法だな。


「甘い!」

「うっ!」

「まさかこの程度の戦法が私に通じるとお思いか、ニック・テリナン殿」

「ふふふ、近づく事はできたね」


 そのまま僕はカール団長に体当たりをして、彼をぶっ飛ばす事には成功するが、彼はリングには出ず、何とか踏みとどまる。


「陛下!今の行為は禁止行為なのでは!立ち合いにふさわしくありません」

「いや、あくまでも木剣以外の武器、魔法等のスキルを禁じているに過ぎんからニックの行為は禁止行為にはあたらん」

「陛下のおっしゃる通りだ、ニック殿は活用できるものを活用したに過ぎん、それを思考から外した私の怠慢だ」


 自分の肉体の活用は立ち合いでは認められているからね、ただもうこの手も通用しないし、どうするかな?

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