実戦的な動き
王城の訓練所で僕はテール達と共に一週間後のフレア王女殿下の護衛騎士の騎士団長との立ち合いに備え稽古をしていた。
動きや剣さばきの良さをテールが褒めてくれたものの、これで護衛騎士に通じるかは疑問を感じられた。
「ニック様、確かに彼らは家を継ぐ資格なしと判断され、護衛騎士となりましたが、それは腕を見込まれての事」
「そうだよね、いくらなんでもただの救済処置ではないよね」
「更に王女殿下をお守りする任に着いたのです、その訓練も通常兵士が訓練する量も質も上回っているかと」
「そうなのか、僕でどこまでできるか不安になってきたな」
元々剣で勝てるとは思ってはいなかったけど、テールの話を聞く限り相当な使い手であるのが伝わってくる。勝ち負け以前に剣の腕を認められるか不安になってきたな。
「ですがニック様、ニック様にはガリアス様譲りの才があります。私ができうる限り剣技をお教えしますので、それで少しは力を示せれば護衛騎士としては認めてくださるでしょう」
「そうだね、テールの教えを一週間身体に叩き込むぞ!」
「甘いっスよ、ニック様、テール様」
「コール」
コールが突然僕達に甘いと言ってきた、その意味をテールが問うと、コールが返答をする。
「どういうことかしらコール?」
「だって護衛騎士は本来家を継げなかったからその任についてるんでしょう、嫡子であるニック様が片手間で護衛騎士をやる事は死んでも阻止したいと思っているんじゃないんですかね」
「阻止、それってつまり立ち合いを上手く利用するって事?」
「多分そうでしょうね、立ち合いは陛下も認めた決闘みたいなものですし、そこでニック様がケガをしたとしても……」
おいおい、コール怖いこと言うな。だけど、僕も懸念していた部分ではあるな。陛下や王女殿下が望んだこととはいえ、彼らも自分達の領分を侵されないように立ち合いを申し出て試験みたいな形式にして僕がその場でケガをして護衛騎士に参加できない状況を意図的に作ろうとしても不思議ではないのか。
「でも、コールそれを避けるにしてもニック様が強くなる以外に道はないわ、もっとも一週間で差を詰めるのは難しいけど」
「だからニック様、これを機に実戦の本格的な動きを身に付けましょう、ニック様なら剣技も、その動きも一週間もあれば身に付けられるはずです」
「実戦的な動きか、まだ早いと思ったけどいい機会ね、ニック様よろしいですか?」
「ああ、コールの言う通りだとすれば僕もケガを避ける方法は身に付けておかないとね」
とりあえず剣技とは別に実戦的な動きを身に付ける訓練、これらを身に付けなくては。