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時間を稼ぐために

テールが身を呈し時間を稼いで僕を逃がす案を示す中、コールが突然現れて刺客をなぎ倒しながら僕達の馬車に近づき、声をかける。


「ニック様、お助けに参上しました!」

「コール、どうして?父上やオリビアは?」

「こっちに向かってますよ、俺は神速のスキル持ちなので一足先に駆け付けましたが」

「そんなスキルを!君もすごいな」


 神速スキルはテールとの講義で速度に関するスキルと習ったことがあったが、まさかコールがそのスキルを持っていたとはね。


「おっと、ニック様、ゆっくり話している場合じゃないっスよ、早く逃げてガリアス様や姉上と合流してください」

「しかし、君だけで大丈夫なのか?敵の数は多いぞ」

「まだ、伏兵が潜んでいてニック様のお命を奪う算段を整えているかもしれません、ニック様周りの護衛は手厚い方がいいです」

「コール……」


 敵の作戦をある程度想定して、僕や護衛を逃がす為に戻って来たのか、コール、やっぱり君は頼もしい従士だ。


「テール様、ニック様をお願いします。それからホップン、ニック様をしっかり守ってやってくれ」

「分かったわ、コールも機を見て離脱してね」

「キュ……キュン!」

「ええ、速さは一級品なのでね、その表情は任せろって事だな、頼むぜホップン」


 ホップン、あんなにコールを嫌っていたのに、いやあくまでも僕を守る為にコールに任せる事にしたんだろうな。


「おらおら、お前らようく聞きやがれ、我こそはニック・テリナン様の従士、コール・ガニアンだ!ニック様のお命が欲しければまず俺を倒すんだな!」


 口上と共にコールは槍を持って刺客を突き、更にはその槍で勢いよく敵を叩いていた。


「今です、ニック様隙ができました」

「ああ、馬車を出してくれ」

「はっ!」


 御者に指示を出し、馬車を動かすと刺客を数名撥ねてそのまま前方の父と合流する為に移動を開始した。


「くそ!逃がすな追え!」

「待てよ、さっきも言っただろう俺を倒してからにしろって」

「くっ、このガキが!」


 コールが敵を引き付けている何名かは追いかけてくるが馬車を包囲するほどの人数はいなくて、どうにかまいたな。


「ふう、どうにかまけたか」

「いえ、油断は禁物です、コールの申すように伏兵が潜んでいるかもしれないのでニック様も周囲の警戒を怠らないように」

「ああ、分かったよ」


 とりあえず僕達は伏兵に備え周囲を警戒するが襲撃の気配はなさそうだ。


「ん?テール!あの馬車って!」

「ええ、ガリアス様の馬車ですね」


 父上の馬車と合流できそうだ、あとはコールだな。

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