5、理想
「そうかい、僕に君のその理由を教えてくれよ。」
青年は試すかの様に言う。
そんなもの、聞く価値など無いに決まっている。
そんな言葉はただの理想論。
理想とは、不可能であるからこそ尊さを感じるものなのである。
そう無意味だと理解した上で、自分を騙しながら理想を望む。
それには意義など皆無。
青年は返答を決め付けている。無意味だと。
女性が口を開く。
「私が生きる理由でしょ?別に私が生きているという事に意味がある訳でわ無いわ。」
なんなんだ、さっきは理由が有ると言っていた気がしたんだが。
もしや、今気づいたんだろうか。
自分という存在の無意味さに。
取り合えずはっきりさせてみよう。無意味だけど。
「なんだい、さっきは意味が有ると言っていたのにもう撤回かい?」
「撤回?私は別に、矛盾を発生させるような事は言ってないわ」
「そうなのかい?ということは、生きる理由が無いという事と、自分の存在の意義は存在するという事は同義なのか。」
女性は首を傾げる。
「貴方は何を勘違いしているの?」
貴方の話しを聞いた上でのこの疑問なんだが。
まぁ、良い。話しを聞こう。
「勘違い?何がだい?」
見てくれてる人いるのかな?
寂しいです…