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2、始まり。
まず病院の屋上に辿り着
く、屋上の端に歩く、そこから一歩を踏み出す。
ここに特別な手順などは含まれていないはずだ。
シンプルなものだ、何も特別な事はない。
結局これだけで僕一人は最後を迎える。
寧ろ初まりさえ有ったのかが曖昧だ。
始まりがなければ終わりという概念は存在しないはず。
でも、僕の何かが終幕を迎える。
それは確かなずだ。たぶん。
でも、考えても僕に始まりは見当たら無い。
何故だろう。少し寂しさを覚える。
それも仕方がないのかもしれない。
僕はここで動く人間でしかない。
それも、雑踏の構成要因でしかないような存在だ。
空想に生きる主人公達と比べてしまえば始まりさえも掛け離れた場所だ。
さあ、やはり僕は無意味な存在の様だ。
自覚する必要さえも不必要な事実。
事実で有り現実、変え難い自分という存在の意義。
気付くと膝の震えは治まっていた。膝にさえも自分には笑う価値自体が無いと言われた気がした。
もうこれでピリオドを打とう。
右足が地面を離れる。その先のコンクリートとの堺目へと向かう。
右足は完全に境界線超えた。
右足に案内を委ねるかの様に体重を前へ送る。