表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/19

体育館

「絶対ここだろ」


「絶対ここね」


 体育館の扉は開け放たれていた。ただ、そこに出入りするのは生徒でも近隣の住人でもない。黒い体に赤い模様の入った蜘蛛のモンスターだ。見た目でいうとセアカゴケグモに近い。ただ、サイズが全然違う。象亀のようなサイズの蜘蛛だ。


「さっき校舎にいたのは幼体だったみたいだな」


「ねぇ。あの繭みたいなモノの中身って……」


 蜘蛛のモンスターの中には白い繭のようなものを引き摺っているやつがいる。それはちょうど人間ぐらいのサイズだ。


 四辻の杖が青白く光る。


「やぁっ!」


 繭を引き摺る個体に火球が命中した。瞬く間に火球が蜘蛛を包み、大きく燃え上がる。どうやら、本当に火に弱いらしい。


「成金マン!」


「任せろ! 【成金ダッシュ!!】」


 白く大きな繭に向かってダッシュ。それを抱えて体育館から離れた。誰もいない教室に入り、そっと繭を寝かせる。


 手をベトベトにしながら繭を破ると、老婆の顔が出てきた。顔色は悪いが、死んでいるわけではなさそうだ。


「大丈夫? 生きてる?」


 教室に入って来た四辻の顔は真っ青だ。


「息はあるようだ。眠らされているだけかもしれない」


「体育館の中、どうなっているのかな?」


 嫌な光景が脳裏に浮かぶ。


「急ごう!」


「うん!」


 教室から飛び出し、体育館を目指した。



#



 暗い体育館の中に吊るされてゆらゆらと揺れる物体。それは先程見たものと同じだ。一体、どれだけの人が捕まっているのだろう。


 蜘蛛のモンスターは俺達のことなどお構いなしに作業を進める。さっき仲間が倒されたばかりだというのに、気にならないのか?


 人型のモンスターはかなり知性が高そうだったが、他はそうでもないらしい。


 蜘蛛達の淡々とした様子に、四辻の杖が青白く輝く。


 直ぐそばにいた一体の蜘蛛が反応するが──。


「やぁっ!」


 火球がぶつけられ、そのまま燃え上がる。その炎を見て、周りの蜘蛛がさっと飛び退いた。


「奴等は火を恐れている! 行けるぞ!!」


「任せて! 伊達に火遊びばっかりやってないから!」


 やっぱり火遊びやってるじゃん!!


 逃げる蜘蛛に向けて火球が連続して放たれる。その度に蜘蛛は燃え上がり、暗かった体育館が照らされた。


 火がついたまま逃げる蜘蛛が他の蜘蛛とぶつかり、連鎖するように燃え広がる。そして、全貌が明らかになってきた……。


「何あれ……」


「デカすぎるな……」


 体育館の前方、ステージ上に構えているのは桁外れにデカい蜘蛛だった。脚まで入れると二十メートルはありそうだ。


 大蜘蛛は周りの騒ぎが見えていないかのように落ち着いている。そして、ゆっくりと白い繭を口に運んでいた。


「許せない!! 燃えろ!!」


 特大の火球が大蜘蛛に向かっていく。がっ──。


 シュウウゥゥゥッ!! と気の抜けた音とともに白い糸が吐き出され、火球が絡め取られた。


 なんだよ、この蜘蛛! 尻からじゃなく、口から糸を出すのか!?


「もう一度!」


 ムキになった四辻が特大の火球を連発するも、全て白い糸に巻き取られ、体育館を照らすばかり。


「はぁ……はぁ……」


 スキルの使い過ぎか? 四辻は急にガクンと膝を落とした。


「成金マン……お願い。何とかして」


 こんな場面で女子高生に頼られたんだ。中途半端は出来ない。


「任せろ。派手にいく」


 俺はリュックからあるものを取り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ