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やばいスキル

「えっ、四辻やばくね?」


「フルフェイスで全身真っ黒の男に言われたくない!」


 四辻のスキルを聞いた俺のリアクションである。何せこの子のスキルの名前は【火遊び大好き】だからだ。杖を握ると火球を飛ばすことが出来るらしい。


「よ、四辻は放火とかするの?」


「しないわよ! 私は焚火とかが好きなだけだから!」


 それだけで【火遊び大好き】なんてスキルは手に入らないと思うぞ!! 絶対やばい奴だろ!!


「で、成金マンのスキルは?」


「俺のスキル? 俺のはいいよ……」


「ずるい! 言いなさいよ!!」


 四辻が杖を構える。目が笑っていない。


「俺のスキルは【成金パンチ】だ……」


「えっ、あれってスキルの名前だったの!?」


「そうだ……。ちゃんと口に出して言わないと発動しない……」


「あはははっ! アン○ンマンみたいじゃん!」


 確かに……。


「成金パンチはどんな効果があるスキルなの?」


 杖を下ろした四辻が瞳を輝かせている。そんな顔をされたら言うしかないだろ。


「……手に持ったモノの値段を攻撃力に変換出来るスキルだ」


「えっ! 高いモノで殴ったら、大ダメージを与えられるってこと!?」


「そーいうことだ。ちなみに今手に嵌めている腕時計は150万ぐらいする」


 四辻の顔が固まった。


「成金マン……。本当に金持ちじゃん」


「まぁな」


「ひー! 否定しない! その余裕が憎い!!」


「やめろ! 火を出すな!」


 本人は冗談のつもりだろうが、杖の先からちょっと火が出ている。コートに燃え移ると俺が死ぬ。



 四辻を鎮めながら歩いていると、駅が見えてきた。タクシー待ちの行列が出来ていることから、電車は動いていないようだ。


「電車ダメみたいね……。成金マン、車はないの?」


「ずっと引き篭もってたから、ない」


「えぇぇ! 車って金持ちアイテムの一つじゃん!」


「俺は部屋の中に並べられるアイテムが好きなの!」


 しかしどうしたものか。レンタカーでも借りるか? それともタクシー待ちの列に金を握らせて順番を譲ってもらう? いや……それは流石に成金ムーブ過ぎるなぁ──。


 ドゴオンン!! と何かがぶつかる音が響いた。思考が中断され顔を上げると、歪な形の車が宙を舞っている。


「わあぁ! こっちに来る!!」


 四辻は素早く退避した。妙にゆっくりと映像が流れる。これ、直撃したら死ぬな。


 そう思うと急に身体が動き始めた。しっかりとロレッタス・サブマリーナを握り、腕を引く。そして──。


【成金パンチ!】


 ドバンッ!! と車を殴り返した。面白いように車が飛んでいく。そしてその先には……。


「ブモォォォオオ!!」


 体長が三メートルはありそうな牛の頭をした人型のモンスターがいた。ミノタウロスだ。


 全く次から次へと、どうなっているんだよ!

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