Mr.センシティブ
いつもの総合スポーツセンター。人々はモンスターの出現に備えて避難し、外にいるのは自警団のメンバーばかりだ。
ただ、最近は少しややこしい。
自警団員以外にアクションカメラを構える奴等がいるのだ。配信者達は俺の戦闘シーンを配信し、小銭を稼いでいる。まぁ、無駄で隠し撮りされる訳ではないので、有名税だと思っているが。
そんな配信者達が、俺の隣にいる存在についてざわついていた。
「師匠! いよいよですね」
俺のことを師匠と呼ぶ男。かつては「タダシ」として被ダメランキングのトップに載っていた。今はHNを「Mr.センシティブ」に変更した。ヒーローとなる為に。
「成金マン、なんなのタダシの格好は……」
「タダシって呼ばないでください! Mr.センシティブです!!」
四辻はタダシの格好を見て揶揄う。タダシは戦隊モノのタイツでその身体を覆い、胸にはセンシティブの頭文字「S」が刻まれている。俺がプロデュースした。
「Mr.センシティブ。自警団のメンバーに【オーバーヒール】を頼む」
「はい! 師匠」
タダシの手が光に覆われ、それに触れた者のHPを上限を超えて回復していく。タダシのオーバーヒールさえあれば、防具なんて考えなくていい。HPの壁が守ってくれる。
配信者達は実況しながら、タダシを映している。何事かと。
今日の戦いを見れば、タダシの凄さが分かるはずだ。
「そろそろ日付が変わる。気を引き締めろ」
タダシや四辻、自警団のメンバー達が頷き、配置についた。
「来たぞ!」
その声の先には実体化しつつあるオークの集団。一気に十体、現れた。そこに一人の若いメンバーの男が短剣を構えて突っ込んでいく。
先頭のオークが手に持つ棍棒を振りかぶった。
若いメンバーは止まらない。
オークの棍棒がメンバーの頭に振り下ろされ──。
「……!?」
オークの目が見開かれる。確かに棍棒は若い男の頭に炸裂した。しかし、効いた様子はない。そして、隙が生まれた。
オークの下っ腹に短剣が深々と突き刺さっている。
若い男は素早く引き抜き、次のオークに襲い掛かる。
多勢に無勢。男は何度もオークの集団から攻撃を喰らう。しかし、体に傷は出来ない。HPの壁が数字を減らすことで肩代わりしているのだ。
十分足らずでオークの集団は沈黙した。若いメンバーはレベルが上がったと喜んでいる。
「凄いわね……。タダシのスキル」
「あぁ。めちゃくちゃ有能だ」
自警団のメンバーを成長させることは急務だった。レベルを上げるにはモンスターを倒すしかないが、戦闘に危険はつきもの。人間は簡単に死んでしまう。その課題を【オーバーヒール】はあっさりクリアしてしまった。
レベルが上がれば、スキルも増える。
自警団のメンバー達はモンスターを奪い合うように戦っている。こんな積極的な姿は今まで見たことのないものだった。
「師匠! これでは僕の活躍する余地がありません!」
「慌てるな。時間が経てば強力なモンスターがポップする。Mr.センシティブのお披露目はそれからだ」
「そうでしたね! 待ちます!!」
配信者達は気合いを入れるタダシの様子をカメラに収めていた。




