被ダメランキング一位の男
ファミレスのボックス席にはちょうどバランスよく、男女が二人ずつ座っていた。
向かいには四辻とリカが少し困った顔をして座っている。そして俺の横には──。
「あ、改めまして。村田タダシといいます! 成金マンさんの弟子になりました!」
「弟子にするとは言っていない! 話を聞くと言っただけだ!!」
シュンとするタダシ。こいつ、打たれ弱いな。
「タダシさんってもしかして、ランキングに載ってたりします?」
何かに気が付いたのか、リカが神妙な顔で尋ねた。
「……はい。とあるランキングの一位です」
そうなのか? こんな自信のなさそうなやつが……!?
「えっ? 一位なの? すごいじゃん! 何のランキングなの?」
「ひ、被ダメランキングです……」
被ダメランキング? そんなランキングあったのか!? 取り急ぎ左の掌にステータスを表示させ、HNを長押しする。現れたランキング画面をずっとフリックし続けると──。
■被ダメージランキング(日本)
1.タダシ(340000000)
2.G1028654(53000)
3.G1024525(49000)
4.G1027332(47000)
5.G1026127(45500)
6.……
7.……
──ダントツの被ダメじゃないか……!?
「タダシ……なんで生きているの……!?」
「四辻さん! 失礼ですよ!!」
リカが嗜めるが、その疑問は尤もだ。三億四千万ものダメージを食らってなぜ死なない?
「僕にはスキルが二つあるんです。一つは【スーパーセンシティブ】。めちゃくちゃ敏感になり、ちょっとしたことで大ダメージを食らってしまいます」
「それは、スキルというか呪いじゃないのか?」
「一応、スキル欄に載っているので……」
「もう一つのスキルは?」
興味を持った四辻がグイグイ迫る。リカも目を輝かせている。
「【オーバーヒール】です」
「「オーバーヒール?」」
女子高生二人が声を揃えて首を捻る。ゲームをしない人には馴染みのない単語だろう。
「HPの上限を超えて回復させるスキルってことか?」
「はい。流石は師匠です」
「師匠じゃない!」
タダシは何だか嬉しそうだ。
「僕は打たれ弱いのでちょっとしたことでダメージを受けてしまいます。本来なら直ぐに死んでしまっていた筈です。ただ僕には【オーバーヒール】がある。これであらかじめHPを増やしておくことで、なんとか死なずにやって来れたんです」
「その【オーバーヒール】ってスキル、他人にも使えるの?」
「もちろんですよ。ほら」
タダシはテーブルの上に手を出して目を瞑る。すると、黄色く暖かい光が掌を包んだ。
「どなたか手に触れてください」
女子高生二人は動かない。そりゃ、こんな怪しい男の手を握りたくはないよな。俺が触るしかない。
恐る恐るタダシの掌に触れる。すると、なにか暖かいものが身体に流れてくる。
「ステータスを見てください」
言われた通りにステータスをみると──。
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HN :成金マン(影山聡太)
レベル:1
スキル:成金パンチ
状態:HP+100000000
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「どう? 成金マン」
「HPが一億追加されたようだ……」
「桁が凄いです……」
女子高生二人が目を丸くしている。
元々のHPがいくらかは分からない。しかし、タダシの話を信じるなら、これで俺は一億ダメージまで耐えられることになる。
「どうです? 僕を弟子にしてくれますか?」
タダシは身体ごとこちらに向いている。
「何故、俺の弟子なんだ?」
「僕はヒーローになりたいんです! 師匠のような!」
真っ直ぐな瞳が俺を射抜いた。
「師匠に学べば、僕もヒーローになれると思うんです!」
どうする……? タダシのスキルは非常に強力だ。ここで繋がりを作っておけば後々役に立つかも知れない。
「分かった。お前を弟子にしよう。俺は甘くないぞ」
「はい!」
四辻とリカは事態についてこれないのか、二人で顔を見合わせてやはり首を捻っているのだった。




