レベルランキング一位の力
「うおおおおぉぉー!!」
虹丸は凶々しいメイスを構え、出現したばかりのゴブリンに肉薄する。
ゴブリンが何か言おうとするが、時は既に遅い。横薙ぎにされたメイスがその頭を吹き飛ばした。
「一体目ぇぇ!!」
張り切る虹丸は数を数えながら、次々と出現したモンスターを狩っていく。流石はレベルランキング一位だ。凄まじい身体能力。それにあの武器もやばい。
虹丸の持つメイスは凶々しい殺気を放っていた。とても地球上のものとは思えない。モンスターからのドロップ品だろうか?
「ちょっと成金マン! 腕組んで見てないで、モンスターと戦いなさいよ!! 負けてもいいの」
「まだ始まったばかりだ。焦ることはない。今はモンスターの出現も少ないし、虹丸に譲るさ。俺が本気になるのはもっと後だ」
スポーツセンターの周りには自警団のメンバーが三十名ほどいる。その全員が手持ち無沙汰にして虹丸の孤軍奮闘を眺めていた。
「……んんんぁぁ……!!」
ゴブリンを十体ぐらい倒した時だ。虹丸が突然動きを止めて恍惚とした表情になり、その身体が発光した。
「えっ、何! キモいんだけど」
七色のスパンコールスーツが光に包まれる。そして──。
「レベルアップきたぁぁぁー!!」
──その雄叫びは周囲を驚かせた。確か、虹丸のレベルは既に300を超えていた筈。それなのにたったゴブリン10体でレベルアップなんて……。
「見たか! 成金マン!! これが俺のスキル【超早熟】だ!!」
超早熟……!? 待てよ。このオッさん。
「おい、虹丸。お前は今何歳なんだ?」
「十八だ!」
と、とんでもない老け顔だ……! 絶対にアラフィフだと思っていた……!! これが【超早熟】を授かる為の条件なのか……!?
「なんだ? 俺様のあまりの強さに恐れをなしたか!?」
「そ、そうだな」
老け顔のことを突っ込むのは悪い気がしてきた……。なんだか申し訳ないぞ……。
「ちょっと成金マン! 勝負のことを忘れていないでしょうね!!」
四辻はどうしても俺に勝ってほしいようだ。俺としては虹丸に勝ちを譲ってもいいが、女の子の期待を裏切るのは主義に反する。……そろそろ動くか。
「虹丸の凄さは充分わかったよ。今度はこちらの番だ」
しゃがんでスニーカーの紐を締め直す。こいつを履くのは今日が初めてだ。
──NOKE AIR ZEEZY 2 BLACK──
成金系スキルの値段判定は午前零時に更新される。俺の足元を覆うスニーカーの未使用価格はオークションで約二百万円。使用したことで多少は値段が下がっているだろうが、まだまだお高い筈。
【成金ダッシュ!!】
バチンッ! と空気の層が弾け、今まさに出現したオークが俺の移動の衝撃で吹き飛んだ。地面に横たわり、目耳鼻口から血をながしている。死んでしまったようだ。
「な、なかなかやるな……」
さっきまで威張り散らしていた虹丸の顔が引き攣っている。
「ただの移動スキルなんだけどな。ちょっと速すぎたようだ」
「ふざけやがって! 俺様は負けんぞ!!」
メイスを振り上げ、虹丸が走りだす。目標は新しく現れたオーガか。
【成金ダッシュ!!】
オーガが吹っ飛び、血を吐く。これは楽だな。成金パンチを使うまでもない。
「ずるいぞ! 横取りしやがって!!」
虹丸が地団駄を踏む。
「遅いのが悪い」
「成金マン! その調子よ!」
月曜日は始まったばかりだ。俺はここにいる人々を守り、そして勝負に勝たなければならない。
「さて、始めようか」
俺は次々と現れ始めたモンスターに向かって狙いをつけた。




