表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

承。田中という人間


オノ:えー、武蔵さんに下す判決はとりあえず保留で


オノ:次、田中さんの裁判をお願いします


武蔵:おい、どうせ俺の地獄行きは覆らねぇんだろ


武蔵:勿体ぶってねぇでさっさと連れてけや


オノ:それです!


武蔵:あ?


オノ:武蔵さん、貴方はこれから一人称を俺様にしてください


武蔵:い、いきなりなんだ…… 


オノ:案外、武蔵さんの粗暴な感じが視聴者に受けているようでして


オノ:これはもうそっちに寄せていくしかないだろうと。所謂、俺様系です


武蔵:俺様系キャラだってマジで一人称が俺様な訳じゃねえだろ


サル:何でそんなこと知ってるんすか?


武蔵:……うぜぇ妹がそういう漫画好きだったからな、よく聞かされてたんだ


琴乃:妹さんと仲いいんですね


田中:ギャップ受けまで狙ってるじゃないですか。人気獲得に貪欲ですね


武蔵:なんでお前らもそっち側なんだよ!


武蔵:あと別に仲良くもねぇよ


武蔵:……っ!


サル:あ、今顔顰めたっす! 嘘ついたから舌チクッとしてんすよ!


閻魔様:そういえばあったな、そんな設定


オノ:全く、少しくらい撮影に協力的な姿勢を見せて欲しいものですね


サル:そうっすよ。若いのに何とか威厳を出そうと儂とか言ってる閻魔様の気持ちを考えるべきっす


閻魔様:お前ほんと遠慮ないよな。一話冒頭の忠臣感はなんだったの?


サル:閻魔様、くどいメタは人を選ぶっすよ


閻魔様:こいつ……


武蔵:いいから! 早く! 始めろ!


オノ:毎度毎度、軌道修正ありがとうございます。閻魔様、続きの方を


閻魔様:うむ


閻魔様:えー、名を田中太朗。罪状『退廃的生活』


閻魔様:弁解があるなら申せ


田中:と、言われましても、仰るところが……


閻魔様:飲酒や賭博の経験は?


田中:ええ、あります……賭博と言っても競馬ですが。酒も嗜む程度です


サル:ここではそれも罪っすよー


田中:そんな……? 経験がない日本人の方が稀では?


オノ:その通りです。罪ではあるのですが、それを理由に捌いていては亡者全員が地獄行きとなってしまいます

 

田中:では、なぜ僕は地獄行きなんでしょうか


田中:生まれてこのかた、地獄に行かされるような悪事は何もしていないはずです


オノ:そうですね……強いて言うなら、()()()()()()()()でしょうか


田中:は?


オノ:先程、貴方がた三人は事前の調査により地獄行きが確定していたと言いましたね。実はその調査に使われているのは『ネオ・閻魔』というAIなんです


田中:AI?


オノ:ええ。話せば長くなりますが……


オノ:AIで亡者の人生を数値化してるんです。死後直後に数値がプラスの人物は天国へ、マイナスの人物は地獄へ、という風に選別していってる訳ですね


サル:良いことしたら数値がプラスされて、悪いことしたらマイナスされちゃうっすよー


田中:はぁ


オノ:生まれたばかりの人間は、この数値がマイナス百からのスタートなんですよ


オノ:地獄と天国にも定員があるので、どちらかに偏らないようにするために必要な措置ですね


田中:すると僕は……


オノ:ええ、田中さんは数値がマイナスのままその生涯を終えられました


閻魔様:……地獄の沙汰にAIが導入されてから、このような自体は度々起こっている


閻魔様:大した悪事はやっていないが、大した善行も()()()()()()。最初に与えられたマイナス百を解消できずに、そのまま死に、地獄へ行く亡者が後を絶たないのだ


田中:余りに不公平です。だいたい、地獄でなんの罪を償えと?  


閻魔様:それについては同意するがな。若くして死んだ亡者には特別な措置を講じたりもしているが、お前はそれに該当せんのだ


田中:……そうですか


琴乃:……それは、おかしいです


田中:琴乃さん?


琴乃:私見ました。死んだ後、ここじゃなくて市役所みたいな場所にいた時です


オノ:死んだ亡者の手続きを行う場所のことですね


琴乃:はい。そこで、何が何だか分からない様子で泣いている子供に近寄って、懸命に励ます田中さんの姿を


田中:見てらっしゃったんですか


琴乃:そんなことを出来る人が、善行をやっていないなんて信じられません。何かの間違いです!


田中:……気持ちは大変嬉しいです。しかし、僕はそう大した人間ではありません


田中:思えば、仕事に追われるばかりで親の死に際すら見れませんでした


田中:この裁判は自分を見つめ直すいい機会でした。動揺しましたが、確かに僕は地獄行きと言われてもおかしくない人間です


琴乃:そんなっ……


オノ:受け入れるということですか?


田中:ええ。住めば都という言葉もありますし、地獄というのもそう悪くないと信じましょう


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ