表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

起。三人の亡者


閻魔様:てかさ。さっきから今朝の会議、今朝の会議って言ってるけど、儂それ呼ばれてないんだけど


閻魔:なにそれ、聞いてないんだけど


オノ:……そうでしたっけ


閻魔様:いや無理あるでしょ。一応、儂、閻魔なんだけど


オノ:以後気をつけます


閻魔様:なんか腑に落ちんな……


サル:俺も呼ばれてないっすよー


閻魔様:サルはまぁ、そうだろうけど


田中:僕も会社の会議では発言権がありませんでした……お互い辛いですね


閻魔様:なんでお前はさっきから自分の境遇と重ねたがるんだよ


オノ:お、今のはいい掛け合いですね、同接も順調に上がってますよ


田中:同接?


琴乃:同時接続数の略だと思います。その瞬間の視聴者数のようなものですよ


田中:なるほど。詳しいんですね


琴乃:は、はい……恥ずかしながら、そういうコンテンツが好きだったもので……


閻魔様:え、てかもう配信してるの? 最近プライバシーとかうるさいけど、亡者を勝手に映すのは大丈夫なの?


オノ:そこは抜かりなく。ここに集められた三人は事前の調査により地獄行きが確定していた者たちです


オノ:我々には新たな資金源が、彼らには再審の機会が。これは双方にメリットのある企画となっています


オノ:ので、三人にはもう既に許可を取っております


サル:えぇ!? あれだけイキってた武蔵くんも撮影許可にはOKしたんすか!?


武蔵:マジでぶっ殺すぞお前!


オノ:ごほん。では話もそこそこに、本題の方へ


オノ:すぐに裁判を執り行うのもいいですが、まずは視聴者のために自己紹介といきましょう


オノ:不肖ながら、私、オノと申します。閻魔様の補佐を務めますので以後お見知り置きを


サル:サルっすよー


閻魔様:あ、ああ。閻魔だ、よろしく頼む


オノ:では次に向かって右の男性から。本日の主役は貴方がたなので、詳細に願いしますよ


田中:詳細に、ですか……


サル:経歴とか死因とか言っときゃいんじゃないっすか?


田中:はぁ、分かりました


田中:えぇと、トップバッターを任されました。田中太朗と申します


サル:ありふれた名前すぎて逆に珍しいっすね


田中:よく言われます。御多分に洩れず、僕自身もありふれた人間です


田中:自分で言うのも不思議な話ですが、生前は一介のサラリーマンをやっておりました


田中:ここにきてから聞かされた話ですが、死因は過労死だったそうです


琴乃:大変でしたね……


田中:ははっ。実感がないというのが正直なところですが


琴乃:……次は、私ですね


琴乃:今泉琴乃です。えと、死ぬ前は一応学生でした


田中:一応?


琴乃:病気がちで、あんまり学校行ってなかったので……


田中:なるほど。いや、不躾でした。申し訳ないです


琴乃:いえ、いえ、とんでもないです


琴乃:それで、そのまま病気で死んじゃいました


琴乃:この通り話すのとか苦手なので、皆さんを楽しませられるような人間ではありませんが、あの、よろしくお願いします……


武蔵:暗ェなぁ


琴乃:あっ、す、すみません


田中:ちょっと、本人の前で言う必要はないじゃないですか


武蔵:あ?


田中:……なんですか


両者、数秒睨み合う。


サル:そっちの金髪くんは元気っすねぇ


武蔵:サルっつったか? お前この中で一番強ェだろ! そんなとこから見下してねぇで俺と喧嘩しようぜ!


武蔵:ぐッ……


飛びかかろうとする武蔵だが、全身に取り付けられた拘束具の束縛が強まり静止を余儀なくされる。


オノ:それは獄卒用に作られた拘束具です。自由に身動きが取れるとは思わぬよう


閻魔様:まさに檻の中の猛獣だな


武蔵:おい、こんなの他の二人は付けられてねえじゃねえかッ! 不平等だぞ!


オノ:拘束具を取り付けた私の判断は間違ってなかったと、今あなた自身が証明したと思いますが


サル:心配しなくても、きみが地獄行きになった時は俺の管轄っすからね。その時は遊んであげますよー


武蔵:ははっ、案外地獄も悪くねェかもなぁ


オノ:引き続き自己紹介をお願いします


武蔵:ちッ


武蔵:武蔵だ


田中:……終わりですか?


武蔵:上の名前は好かん。死んだ理由は言わん


オノ:まぁ、今はそれでいいでしょう


オノ:思わぬアクシデントもありましたが、撮れ高的にはこれも一興でしょうか


オノ:では、本日のメインイベントにいきましょう


閻魔様:あぁ。これより、地獄の沙汰を執り行う


閻魔様:ここから先の一挙一動、一言一句、その全てがお前たちの酌量に差し響くと心得よ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ