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起。地獄の沙汰

閻魔様:偉い人

オノ:閻魔様の補佐

サル:閻魔様の補佐


武蔵:亡者

太朗:亡者

琴乃:亡者


広々とした空間、床一面に張り巡らされた大理石。中央には石材で造られた机と椅子が堂々と据え置かれている。そこに鎮座するのは泣く子も黙る閻魔様。そして、両翼を担うように直立する軽薄そうな男と、固そうな女。


それに相対するのは三人の亡者だ。一人は敵愾心を、一人は不信を、一人は恐怖を。それぞれの思いを抱いて立つ。


そして一室を取り囲むように位置する屈強な鬼、地獄の獄卒共。金棒や鉈を片手に、みな一様に身の毛もよだつ二本の角を携える。


天か地獄か。亡者の行先を決する冥界の一大イベント、俗に言う『地獄の沙汰』が今まさに、始まろうとしていた。




◆◆◆




閻魔様:ここから先の一挙一動、一言一句、その全てがお前たちの酌量に差し響くと心得よ  


武蔵:はっ、偉そうに


サル:偉そうに、だと……? おい無知蒙昧な亡者、この方をどなたと心得る!?


武蔵:あー? 誰だよ


サル:そこにおられるは、言わずと知れた閻魔様! 三千世界の番人、冥界の主宰者、地獄の沙汰も彼次第!


閻魔様:ふん


サル:任期は六年!


閻魔様:おい黙れサル


田中:衆議院の任期と一緒なんですね


閻魔様:現世の者共と一緒にするな!


武蔵:くだらねぇ茶番する前にさっさと始めろや


オノ:一理ありますね。円滑な進行のため、ここからは私が取り仕切らせて頂きます


オノ:しかし、閻魔様に対しての狼藉。それを見過ごす訳にはいきません


武蔵:ならどうすんの? あそこにいる鬼共をけしかけるか? 俺は構わねぇぜ、返り討ちにしてやるよ!


オノ:口の減らない亡者ですね……


武蔵:ははっ! そんなら今すぐ俺の舌でも引っこ抜くかァ?


オノ:いえ、その必要はありません。貴方はその態度を後悔することになるでしょう、直に分かります。


武蔵:へェ、楽しみにしとくわ


オノ:では改めまして、これより貴方がたには裁きを受けてもらいます。閻魔様、何卒


閻魔様:うむ、ご苦労。早急に終わらせるぞ


閻魔様:サル、浄玻璃の鏡を持って参れ


サル:了解っす


オノ:口調!


サル:あっ、了解であります


サル、退出する。


閻魔様:……


琴乃:じょうはりの……?


閻魔様:お前たちの生前の行為を映し出すものだ。いかなる虚偽もこの鏡の前では通用しないと思え


田中:高性能な監視カメラみたいな物ですか?


閻魔様:まぁそうだが、そう言うと身も蓋もないな


琴乃:小説で何となく聞き覚えがありますが、本当にあるんですね……


サル、戻る。


サル:ありゃ、鏡がいつもの所にないっすよ? 


閻魔様:え?


オノ:閻魔様……大変申し上げにくいのですが、今朝の会議で浄玻璃の鏡を裁判で用いることは禁止する方針となりまして……


閻魔様:なぜだっ?


オノ:昨今のコンプライアンス厳格化に伴い、いかに亡者といえど、プライバシー保護の権利は守られるべきだと天国の民より批判が殺到しました


オノ:それにより、我々も組織改革が余儀なく……


閻魔様:えぇ……


サル:ろくな時代じゃないっすね


琴乃:し、死後の世界にもそういうのってあるんですね


田中:いやぁ、僕の勤め先でも働き方改革が推進されてましたよ


閻魔様:だから現世の者共と一緒にするなと言ってるだろ!


田中:お陰様で残業時間が百二十時間から百時間になりました


閻魔様:……百時間も大概だと思うが


武蔵:いつまで馴れ合ってんだよ、早く始めろ!


閻魔様:あぁ、うん。閻魔帳は使えるのか?


オノ:一部機能を制限されておりますが、問題なく扱えます


閻魔様:……あ、そう。じゃあこの者共の悪行を読み上げてくれ


オノ:承知致しました。これより罪状を読み上げます


オノ:その後、亡者一人一人に自己アピールの場を設けますので、情状酌量の余地があるかはそこで判断致します


閻魔様:待って、なんでそんな面倒なことするの。普通に儂が決めるからいいよ


オノ:エンターテインメント要素です、閻魔様


オノ:天国における近年のソーシャルネットワーク普及と熱狂ぶりを鑑みるに、我々も重い腰を上げる時がやってきたのですよ


閻魔様:つまり?


オノ:今朝の会議にて、今後は某サイトで裁判の様子を生配信する運びとなりました


オノ、カメラを取り出す。


オノ:名付けて地獄の沙汰LIVE☆。これで天国に一大ムーブメントを巻き起こし、ひいては商業展開、グッズ販売を……


閻魔様:世も末だな


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