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若者は大家を目指す  作者: 大沢 雅紀
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家賃滞納

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また、読者の意見も参考にしたいので、どんどん感想もお寄せください。それによって展開に反映したりします

コールセンター

いつものように新庄さんと雑談し、新しくもう一軒家を手に入れたことを話す。

「すごいじゃない。これで自宅と賃貸物件二つでしょ? 大矢君ってお金持ちだね~」

「い、いや。そうでもないですよ」

新人は頭をかいて照れる。

たしかに二軒分の家賃が入ってくることになって、新人の生活は格段に楽になった。

相変わらずバイト先のコールセンターでは下っ端で給料は変わらず16万円だが、最初の物件の家賃が6万円、次の物件の家賃が45000円で合計すると26万5000円入ってきている。

実家暮らしで家賃もかからないので、一人で生きていくには充分すぎる収入だった。

ようやく毎月貯金もできるようになり、生活に余裕も出てきている。

「うらやましいわ……。うちなんて、二人合わせてもそれくらいよ」

「そういえば、娘さんはどうなされているんですか?」

ふと思いついて、新庄さんの娘さんについて聞いてみる。

「、うちの娘、結局就職も進学もせずに、フリーターで働く事にしたみたい。コンビニで働いているんだけど、夜勤があるから心配でね……」

新庄さんは、夜も働いている娘の事を心配しているらしい。

「なんでまた女の子なのに、夜勤を?」

「なんでも、昼間働いたら時給700円くらいで、ぜんぜん稼げないんだって。だからと言って夜働なんかなくてもね……男の子ならともかく、女の子だし。何か起こるかもしれないし……私の若い頃みたいに、変な道に進んでほしくないわ」

不安そうな新庄さんに、思わず同情してしまう。

「時給700円って、安いですね……そうだ! ここのコールセンターで働けばいいんじゃないでしょうか? 一応綺麗なオフィスで冷暖房完備だし、女性も多く働いているし」

新人はそう思いついて提案してみるが、新庄さんは首を振った。


「私もそういってみたんだけどね。ママが働いている所は嫌だって」

「まあ……たしかに……」

身内が居たら、働き辛いかもしれない。

「それに、ちょっと女子高で苛められた事があったのよ。女の人ばっかりの職場は怖いって。だから、今のところ水商売をする気はないみたいだけど」

「そんなもんなんですかねぇ……」

新人は首をかしげる。

たしかに自分の最初のうちは無視されたが、最近ではそこまで嫌な人間関係ではない。

仕事が出来るようになると、いい意味で放っておかれているので、結構気楽に働けていた。

「まあ、大矢君はこの職場では特殊だからね……正直、最初に入ったときはすぐに辞めるかとおもったけど、よく続いていると思うよ」

新庄さんはくすくすと笑う。彼女はこの職場でも古参の一人で、何人も入ってすぐ辞める人を見てきた。特に男性は入ってもすぐにいなくなり、一年以上勤めているのは新人だけである。

女の中で男一人ぼっちという状況を見かねてか、よく話しかけてくれるのだった。

「まあ、正直ここしか知らないですからね。でも、いつかは正社員になれればいいとおもうんですがね……」

新人は愚痴を漏らす。

このコールセンターは管理職であるASVが二名。さらにそれを統括するSVが一名だが、彼女達もアルバイトである。そこから上に行って、初めて正社員になれるのであった。

「うーん。私が知る限り、アルバイトから正社員になった人は居ないわね……」

新庄さんも気の毒そうに新人を見る。昔だったら数人の部下を持つ係長、さらに一つのフロアを統括する課長クラスでさえ、アルバイトというのが今の日本の現場の現状だった。

「まあ、当分がんばってみますよ。いつかいいことがあるかもしれないし。それに、大家業を続けるなら、時間的余裕があって休みも取りやすいアルバイトの方がいいかもしれないし」

新人はそういって、前向きに仕事に取り組むのであった。


それからしばらくは何の問題も無く過ぎる。

最初の物件も生活保護なので、完全に放置していても家賃が自動で振り込まれる。第二の物件も特に家賃が遅れることなく振りこままれてきた。

異変が起こったのは、半年ぐらい過ぎてからである。

「??? おかしいな。家賃が振り込まれていない……」

通帳を記帳して、新人は首をかしげる。

いつもなら月末までに振り込まれているはずの第二の物件の家賃が、振り込まれていなかった。

「おかしいな……忘れているのかな?」

法人に電話しても、なかなかつながらない。

そのまま家賃が入ってくることはなく、半月が過ぎたころにやっとつながる。

「あの……家賃が振り込まれていないんですけど……」

「あ、はい。すいません。すぐに振り込みます。ご迷惑かけました」

電話の向こうの運送会社の女社長は、申し訳ないと電話で謝る。

そして次の日、45000円が振り込まれていた。

「まあ、こんなこともあるか」

ちゃんと家賃が入ってきて安心した新人であるが、このことをきっかけに問題が起きる。

翌月からどんどん家賃が遅れ始めたのである。

「あの……こんなに毎月遅れると、迷惑なんですけど……」

「本当に申し訳ありません」

電話に社長が出て、殊勝に謝って来る。

「それで、家賃はいつごろ振り込まれますか?」

「明日には何とかなりますから……」

申しわけなさそうにいってくる相手に、新人も譲歩する。

「こんごはこんなことないようにお願いします」

「はい……」

そういって電話が切れる。

約束通りに次の日家賃が振り込まれたが、新人はこの時点で違和感を感じていた。

「おかしい。個人ならともかく法人で、支払いが遅れるなんて。なんかやばいんじゃないか?」

新人が感じた不安は当たってしまい、そりから毎月家賃が遅れるようになるのだった。



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