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若者は大家を目指す  作者: 大沢 雅紀
17/42

二軒目

コールセンター


新人と新庄さんが、仕事の合間に雑談している。


「というわけで、何とか落ち着きました。今は毎月6万ずつ、きちんと家賃が振り込まれています」


新人は、比較的良く話するようになった新庄さんだけには不動産投資をすることを話していた。


「へえ……それはよかったわね。なんかうらやましいわ」


新庄さんは新人の成功を聞いて、ため息をつく。


「新庄さんもやってみたらいかかですか? 適当な物件を買って引越しするとか。思ったよりは簡単に出来ましたよ」


新人はそう勧めるが、彼女は苦笑して首を振った。


「競売物件とか、そういう事に挑戦できるのは若いうちだけなのよ。もう年を取ると、今の生活を維持することで精一杯。子供も今年高校卒業するし、もしかしたらこれから大学や専門学校に行きたがるかもしれないし、もしものときにお金はためておかないと……」


「え? お子さんはもうそんなに大きいんですか?」


新人は驚く。


「当然よ。だって私はもう50近くのおばあさんだもの」


新庄さんは屈託なく笑い、自分の年をカミングアウトした。


「え? 40歳前後かと……」


新人は少し大げさに言うが、確かに新庄さんにそんなに大きな子供が居るようには見えなかった。


「うふふ。ありがとう」


「新庄さんの娘さんなら、きっと可愛いんでしょうね」


新人は調子に乗って、そんなお世辞を言ってみる。


「そうなのよ……。私の若い頃に似て可愛いんだけど、そのせいでクラスの子から苛められたみたいでね。何度も中退したいっていってたけど、それでもくじけずに卒業してくれたの。でも、やっぱりこの不況で進路は決まらなかったみたい。とりあえず、アルバイトするって。ふふ、親子二人でアルバイト生活ね。まあ、二人で仲良く生活できれば、それで充分よ」


新庄さんはそういって柔らかく笑う。


(可愛いって言ったの冗談だったんだけどな……新庄さんに似ている娘さんなら微妙だろうし)


新人は心の中で酷い事を思っていたが、同時に羨ましくも感じていた。


「家族仲良くて、羨ましいですよ。俺なんか兄貴にも見捨てられて、両親が死んだ後はずっと一人暮らしですよ……たぶん、結婚も出来ないでしょうね……」


「大丈夫よ。新人君はしっかり将来の事考えているし、家も持っているし。がんばっていれば、きっといい人がみつかるわよ」


そういって慰められる新人だった。



「今月もまた競売物件が出ているな……。またあの家みたいないい物件があればいいけど……」


新人は最初の物件を手に入れてから、ずっと毎月競売物件をチェックしていた。


ともかくも家賃も入るようになり、利回り20%を確保していたので、第二、第三の物件を手に入れようと思っていたのである。


現在の貯金残高は約600万円なので、あと2軒は同じような物件を手に入れることができた。そうしたら家賃収入が三件あわせて毎月18万となり、アルバイトの給料とあわせて月収34万円となる。


そうなると、新人一人暮らしとしてはかなり余裕がある生活が出来そうだった。


「それに……次は新しく買った物件に引っ越して、今住んでいるいうを売るという選択肢もあるし」


彼にそうした場合、さらに多くの貸家を手に入れることができる資金が手に入る。


「楽しみだな……これを続けていったら、最終的には働かないで生活できるかも」


同じことをあと数回繰り返すだけで、夢のニート生活が送れるようになるかもしれない。


新人は毎月ワクワクしながら、競売物件のチェックをしていた。



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