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若者は大家を目指す  作者: 大沢 雅紀
13/42

完成

少しでも「面白い!」「続きが気になる!」「更新がんばって!」と思っていただければ、↓の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援して下さると嬉しいです。


また、読者の意見も参考にしたいので、どんどん感想もお寄せください。それによって展開に反映したりします

リフォームは続いていき、家はどんどんきれいになっていく。


おっさんとも少しずつ仲良くなっていき、新人はプライベートでもニート時代のコミニュケーション不全を少しずつ克服していった。


「にいちゃん。資材を家の中に運ぶのを手伝ってくれ」


「はい」


休日になれば自発的に物件に行って、おっさんの仕事を手伝ったりしていた。


そうすると、色々と新しい事を学ぶ事も出てくる。


「このドアノブはガタついているな。交換したほうがいいんじゃねえか?」


おっさんが二階の洋間のドアをガチャガチャしながらつぶやく。


「交換ですか……」


「確か請け負った仕事には入ってなかったな。だけど、サービスで交換してやるぜ」


そういわれてホームセンターから買ってきたドアノブを交換してもらう。


新人はおっさんがドアノブを交換しているのを興味深そうに見ていた。


「へえ、そんな感じで簡単に交換できるんですね」


「この程度なら素人でも簡単にできるぜ」


「なるほど……ついでに居所や風呂場のドアノブも交換しておこうかな。30年前のドアノブだから,かなリ古いし」


おっさんから教えてもらい、調子に乗って全部のドアノブを自分で交換したりするのだった。


「兄ちゃんは結婚しているのかい?  夫婦でここに住むとか? 」


弁当を食べながら、おっちゃんが聞いてくる。


「いえ、独身なんですよ。仕事もアルバイトだし……。たぶん一生結婚できないでしょうね」


新人がさびしく答えると、おっさんは豪快に笑った。


「人生なんてどう転ぶかわかるもんかい。兄ちゃんでもいいって女が、世の中に一人ぐらいはいるかもしれねえぜ。小さいながらも自分の家を持っているんだしな」


慰めてるんだか馬鹿にされているんだか分からないが、新人はそれを聞いて苦笑する。


「そんな人がいたら紹介してくださいよ」


「ああ、いたらな。ところで、この家は中古で買ったんだろ? いくらだったんだい? 」


それを聞いて、新人は逆に聞き返す。


「いくらぐらいだと思います?」


「そうだな……この辺りの相場から考えて、500万くらいか?」


おっさんの返事を聞いて、新人は顔をほころばせた。


「ふっふっふ……実は諸費用込みで、170万で買いました」


「ほう。それはまた安かったな……。いったいどうやってそんな値段で手に入れたんだい?」


価格を聞いて、おっさんは素直に驚く。


「実はですね……競売で出ていたのを見つけて、落札しました」


この家を手に入れた経緯を説明する・


「ふーん。競売なんてヤクザがするもんだと思っていたけど、兄ちゃんみたいな素人でも出来るのか。ボロだと思ってたが、その値段ならむしろ大得だったな。ここは近くに24時間スーパーとホームセンターがあるし、暮らすには困らないしな。この家だって思ったよりしっかりしているから、安心してすめるだろうし。下手に新築マンションなんか買って住宅ローンに追われるより、賢いやり方かも知れんなぁ……」


おっさんは新人に感心する。


「ありがとうございます」


褒められて、新人は照れるのだった。


「しかし、何でまた独身なのに家なんか買おうとおもったんだ? 実家から自立するためか? 」


「いえ、親はいないんですよ。実は、両親は交通事故で亡くなってしまって……」


おっさんに自分の身の上話をする。


今までニートしていたせいで実の兄にも見捨てられてしまったと聞いて、おっさんし憤慨した。


「そのアニキとやらも冷たいよなぁ。二人きりの兄弟なんだろ。兄ちゃんの面倒ぐらい見てやればいいのに、金だけもってとんずらかよ」


「いえ……今なら兄の気持ちもわかる気がします。結局、俺がバカだったんですよ」


両親が死んで、新人は曲がりなりにも自立して生きてきた。


そうすると世の中の事もだんだんと分かっている。


早くから自立して一人で生きてきた兄にとって、いつまでも親元ですねかじりしている新人は、理解不能の許しがたい化け物に見えていたのだろう。


「今じゃ、強制的に自立するきっかけを与えてくれた兄にも感謝しているんですよ」


今の新人にとっては、兄に対する恨みなど全くなかった。


「そうか……あんたも苦労しているんだな。がんばれよ」


おっさんは気さくに新人を慰めてくれる。


「それでですね。住む場所は両親が残した家があるので困らないけど、人から社会に出るのが遅れた分、何かをしなければいけないと思って……」


いろいろと考えた結果、収入を増やす方法として不動産投資を思いついた。


「ここをきれいにして、人に貸そうと思います。アルバイトの給料と足せば、なんとか人並みに暮らせるんじゃないかと思います。そうやって、徐々に物件を増やして収入を上げていこうかと」


新人は自分なりの考えを話す。


仕事の面で出世できないのなら、大家として資産家になろうというものだった。


「なるほど。面白い考えじゃないかじゃないか。うん、ここならたぶん借り手自体はいるんじゃねぇか? 月6万くらいで貸せば、五年くらいで元が取れるし、ここを担保に入れて銀行から金を借りる事もできる。最初はこんなボロ家を買うってどうしたのかとおもっていたが、あんた若いのにしっかりしているんだなぁ。いいと思うぜ」


何年ぶりかに他人から褒められて、新人は嬉しくなるのだった。


工事開始から一ヵ月後、ついにリフォームが終了する。


「これは……予想以上だな」


美しく仕上がった家を見て、新人は一人でニヤニヤとする。


ぼろぼろだった170万円の家は、見違えるようにきれいになっていた。


「やっぱり外壁まできれいにしてよかったな。これなら実家よりも新しくみえる」


以前はくすんだ灰色をしていた外壁は、吹きつけ塗装により真っ白な壁に生まれ変わっていた。


「苦労した甲斐があった」


家の周りを一周して、新人は満足する。


あれから新人なりにがんばって掃除をした結果、草ぼうぼうだった庭もきれいになっており、下段には花が植えられている。


「駐車場も問題ないな。近くにホームセンターがあってよかった」


以前の駐車場は土むきだしだったが、今は綺麗に砂利が敷き詰められている。


新人がホームセンターで大量に購入して、せっせと撒いたのであった。


「まあ、確かにここは山の上でバスもないけど、車があれば関係ないか」


公共交通機関がないのは痛いが、新人はそう割り切る事にした。


新人は鍵を開けて、家の中に入る。


以前は重くてちょっと持ち上げないと動かなかった玄関の引き戸も、カラカラと軽快に音をさせながらスムーズに開いた。


「うん。問題ないな。特にキッチンが素晴らしい」


床そのものが落ちかけていた台所も、綺麗なビニールクロスが張られて新築同様である。


キッチンは安物とは新品であり、ピカピカに輝いていた。


「脱衣所も問題なし」


洗面台も新品に交換され、その横には洗濯機置き場もちゃんと作られている。


風呂場の割れたタイルも補修され、ちゃんとシャワーも取り付けられていた。


「次は二階だな……。階段はまだちょっとギシギシ鳴るけど、仕方ないか」


できるだけの補修はしてもらったが、やはり築30年の家である。


完全には直らなかった階段を上りながら、二階に向かった。


「なんということでしょう。まるで新築みたいです」


二階は天井と壁にクロスを貼り、畳の表層換えをした。


ただそれだけで古い部屋が新しくなったように感じる。


「うーん……今の家を売って、ここに引っ越してきてもいいかも」


新しい匂いがする畳に寝転がりながら、新人はそんな事も思った。


「まあ、面倒くさいからそれは今はやめておこう。どうしても入居者がいなかったら、ここに住んでもいいな。他にも、高い値段で売ってしまうという手もあるし」


綺麗にリフォームをした今のこの家ならば、いろいろ使い道はありそうである。


「よし。賃貸と売買で両方で出してみよう。どうなるかはこれから次第で」


一応家賃65000円と、販売価格500万で平行して不動産屋に依頼している。


「どっちに転んでも、これで儲けられるぞ。これからどうなるかな?」


新人はうきうきしながら、反応を待つ間だった。


少しでも「面白い!」「続きが気になる!」「更新がんばって!」と思っていただければ、↓の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援して下さると嬉しいです。


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