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若者は大家を目指す  作者: 大沢 雅紀
12/42

リフォーム

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また、読者の意見も参考にしたいので、どんどん感想もお寄せください。それによって展開に反映したりします

四日後


「見積もりができました。外壁と内装他をあわせて、150万になります」


不動産屋が見積書を持って来る。


「え? それくらいですか?」


何百万もかかると思っていたので、新人は拍子抜けだった。


「はい。キッチンは一番安い4万円のものに代えて、外装と屋根の修理、畳の表層がえと襖と障子、台所の床工事がこのお値段で……」


一つ一つかかる費用を説明をしてくれる。


どれも納得できる金額だったので、新人は胸をなでおろした。


「えっと、つまり諸費用あわせて取得にかかったお金が約170万で、これからかかるリフォーム代150万か。ということは、合計320万だな」


この物件にかかる投資の総額を計算する。


あとは、何年で回収できるかである。


「10年? いや、そんな時間はない。最低でも5年で元をとらないと……。」


早くも脳内で皮算用が始まっている。


五年で投資金額を回収いうことは、最低でも利回り20%以上は必要になる。それから逆算して、いくらで賃貸に出すかを決めた。


「あの、えっと、家賃は65000円くらい欲しいんですが……」


ちょっと欲を出して、高めに設定した家賃を相談してみた。


「うーん。少し高いような気がしますが、条件によっては借り手があるかもしれません」


不動産屋は少し困った顔をするが、新人は構わず頼み込む。


「条件なんて何でもいいです。ペット可、外国人可、生活保護でもなんでもOKです」


欲の皮がつっぱった新人に不動産屋は苦笑する。


「まあ、リフォームと平行して募集をかけてましょう。この辺りは意外と工場が多いから、なんとかなるかもしれません」


「お願いします」


新人は頭をさげてお願いするのだった。





新人の家から二キロほどはなれた小高い丘には、古い団地が広がっている。


近く、といっても一キロは離れたところに電車が通っているが、その代わりバスも通っていないような田舎だったが、ともかくも住人は多く、国道も走っていて、24時間スーパーやホームセンター、病院や小学校などもある。


この、不便ではないけど便利でもない微妙な場所が、新人が手に入れた築30年の競売物件のある町だった。


「うーん。やっぱりここに住むとなると、ちょっと面倒くさい気がするなぁ……」


この家を見に来るたびに、新人はそう思う。


車や原付ならともかく、ここまで歩いてあがるのは大変だった。


近くにバス停などもないため、駅まで歩かなくてはならない。


行きは下り坂なので楽だが、その分帰りは坂が大変そうだった。


「いや、そうでもないぜ。俺もこの近くに住んでいるからな。住めば都さ」


新人のぼやきを聞いて、家の中で作業していたおっさんが返事をする。


彼はこの家のリフォームを任された大工である。60代の日焼けした肌をもつ、いかにも職人といった風貌だった。


「そうなんですか……別に治安が悪いとか、問題がある地域とかじゃないですよね。きっと借りてくれる人はいますよね」


「ああ。兄ちゃん。安心しな。この近くには自動車会社の寮もあるし、古い団地だけど犯罪が起こったという記憶もねえ。きっと借り手はあるさ」


おっさんは新人に対して安心させるように笑うのだった。


新人は不動産屋に鍵をわたし、すべてのリフォームを任せることにした。その結果、彼が一人でこの家のリフォームを担当することになったらしい。


「あの……一人でリフォームって、大丈夫でしょうか?」


「ああ、この程度の小さい家の修復なら、俺一人で大丈夫さ。下手に人を雇ってやってたら、人件費が高くつくからな。ま、安心してみていな」


そういうと、彼は鼻歌を歌いながら仕事に戻る。


隼人が契約した不動産屋は、どこかの建設会社に外注するのではなく、お抱えの職人である彼一人に内装に関しては全てを任せているらしい。


新人はバイトが終わってから、毎日のように物件を見に来ていた。


その際、近くの激安スーパーで仕入れた一本30円のジュースなどを差し入れなどをする。


そうしているうちにだんだん仲良くなっていった。


「何かあったら、俺も手伝いますから」


「おう。それじゃ新しいキッチンを運ぶのを手伝ってくれ」


おっさんは気さくに用事を頼み、新人もそれにこたえる。


懸念していた台所も、今ではしっかりと新しい床ができていた。


「なんとか歩けるようになりましたね」


「ここは一番に直さないと、あぶねぇからなぁ」


前歯が抜けた口を大きくあけて、おっさんは笑う。


床が抜けそうだった台所には板が張られ、問題なく歩けるようになっていた。


「ここにビニールクロスを張れば、きれいになるぜ」


床を踏みしめてその強度を確認しながら、おっさんは笑う。


見た目は怖そうだったが、なかなか良い人だった。


「ま、古い家ってのは、何かしらガタが来ているもんさ。台所みたいに床があからさまに抜けているなんて、可愛いもんだ」


「そうなんですか?」


家について何も知らない新人は首をかしげる。


「問題なのは、目に見えない部分が壊れていることだな。ほら、みてみろ」


おっさんはそういいながら、隣の六畳間に新人を連れて行く。


「六畳間の方でも、畳を支えていた床材が割れていたぜ。このまま放置していれば床が抜け落ちていただろうな」


確かに一階の和室の畳をめくってみると、床板のいくつかが壊れている。


さすが築30年の家だけあって、家の内部を開けて見ればいろいろ問題があるようである。


「あ、あの、。これってシロアリとかでは? 」


「いや、単に老朽化だな。ほら、腐ってはないだろ」


そういわれて、割れた床材を良く見てみる。


確かに割れてボロボロになっていたが、腐ってはないし、虫に食われたような形跡もなかった。


「虫関係はまったく問題ないぞ。床下はカラカラに乾いているから、ちゃんと直せばまだまだ使える家だな」


それを聞いて、新人は疑問に思う。


「なぜ床下が乾いているんですか? 普通なら日光が当たらないから、湿っているようなイメージがあるんですが? 」


その疑問を聞いて、おっさんはニヤっと笑う。


「兄ちゃん、持ち主なのにこの家の事を知らないのか?」


「中古で手に入れた物件なんで……」


それを聞いて、おっさんは納得する。


「なるほどな。ちょっと来て見ろ」


おっさんはそういうと、新人を連れて前庭に出る。


「ほら、ここから屋根の上に小さなパネルがあるのが見えるか?」


屋根からちょっと突き出すように設置されている、小さなパネルを指し示す。


「確かにパネルがありますね。あれって何なんですか?」


「太陽発電型の、床下送風機だな。太陽エネルギーで風を床下に送って、家全体を乾燥させて湿気を取るシステムだ。これだけで40万くらいする設備だぜ」


「……マジですか?」


ボロ家だと思っていたが、意外と進んだ設備がついていたので新人はびっくりする。


「何なのかと思えば、そんなものが付いていたんだ……」


「家が乾燥していたら、長持ちするからな。ちゃんと直せば、後20年は充分使えるぜ」


おっちゃんの言葉を聞いて、新人はますます嬉しくなるのだった。



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