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3.入団試験

 「入団試験かぁ…はぁ…」


 突如告げられた死刑宣告(試験)、しかも聞いたところに

よると戦闘訓練みたいじゃないか。鬱になりそう。


 「まあそんなに緊張しなくてもよい。武器の使用は自由なんだろ?剣とか使って試験官を殺せばよいではないか」


 「何があっても殺しまではしたくないのよ。というよりなんで戦闘訓練なのよ、筆記試験でよかったのに…」


 「それは分からん。なんせ派遣ギルドでは初の試みらしいのだ」


 カウンセリングで使われた部屋を待機部屋として使わしてくれた。メアは僕の連れということで一緒にいる。


 「これより試験を開始します、裏庭に来てください」


 あぁ…ついに始まるんだ。嫌だな、殺されないかな…


 「せめてこれを持っていけ、お守りだ」


 そう言って渡されたのは雫の形を模したペンダントだった。少しでも元気づけようとしてくれているのだと分かる。


 「ありがと、行ってくる」


 「おう!潰してこい!(グッジョブ!)」


 「いや、潰しちゃダメでしょ…」





 裏庭、なのか?どっちかというと焼け野原に似ている。それほど草木が何一つない、文字通り不毛の地だった。少し寂しげのある地に大勢の人が集まっている。


 「昨日の人!入団試験を受けるのはあなたでしたか!」


 聞き覚えのある声、昨日聞いたあの声だ。すると女性が向こうから走ってきた。彼女がフレイなのだろう。少し長めの髪に茶色のワンピースが似合う女の子だった。よく見ると、


 「ヴァンパイア⁉︎」


 「ヴァンパイア?吸血族ですよ、私」


 「いや、どっちも同じなんですが…」


 そんな話をしていると威厳のある男性が遠くから大声で言葉を放った。


 「私がギルドマスターのレッカである!焔乃宮(ひのみや)よ、フィールドへ」


 「…!はい!」


 レッカに呼ばれた僕は草のないあの地に立つ。周りの喧騒がおさまり、とある少年が前に出てくる。年は同じくらいだろうか、黒髪の男子がステージに出てきた。妙に殺気立ってる気が…


 「今回試験官を務めるモグだ!レッカに全力で潰せと言われたので全力で行かせてもらう!」


 「やっぱみんな考えることは一緒なのね…」


 そう考えつつ拳を構える。深呼吸をし、精神を集中させ、初撃で決めきるように足に力を込めた。



 「勝利条件は相手の戦闘行動ができなくなったと判断したときのみだ。それでは、初め‼︎」


 その言葉と共に相手に向かって飛んでいく。自分でも信じられないほど速いスピードで出た一撃は相手の腹に入るそのままステージの端に吹き飛ばす。しかし、


 「…ッ!硬っ!」


 あまりの硬さに手が痺れる。人の出せる硬さじゃない。これはまさか…


 「魔力か!」


 「…そ。俺の魔力『硬化』。自身と触れたものを硬くする、俺の固有魔術さ!ちょっとは響いたけどねッ‼︎」


 そう言って彼は僕に一撃を加える。


 「…‼︎ガハッ‼︎」


 硬化された腕から放たれる一撃は僕の体にダメージを与えるのには十分だった。そのまま建物の壁に打ち付けられる。壁にも硬化が効いており、さらに追加でダメージを入れられた。ただ一撃が重すぎる。壁にぶつかったときに口から血が少し吹き出た。後2、3発喰らうだけで…


 「死ぬな、こりゃ」


 相手が魔術を使ってくるならこちらも魔術を使うだけだ。そう言って体からあのときのモヤを出そうとする。しかし出ることはなかった。


 「なんで…あのとき…ッグッ!」


 体に電撃が走る。血管が無理矢理こじ開けられるような痛み。その痛みでさらに吐血する。




 「メア様、彼は何をしようとしているんですか?魔力を持っていないのに一瞬魔力回路が出てきたように見えましたけど」


 フレイが問う。それに対してメアは厳しい顔をしてこう答えた。


 「馬鹿者め。奴は闇魔術を使おうとしておるのだ。あの体で使おうとすれば暴走するのに…!」


 「そんな、闇魔術は神秘魔術の一種。あの体では使った途端に倒れるのになぜ彼は使おうとするのでしょう⁉︎」


 2度目のフレイの質問には答えず、彼はただ氷牙を見つめるだけだった。




 あれからしばらくの時が流れる。僕はモグと一進一退の攻防を繰り広げている。最初は冷やかしていたギャラリーも今では両者を応援する観客となっていた。


 しかし本当は一進一退の攻防などしていない。僕が鉄のようなモグの体を殴り、逆に相手の攻撃を避け続けると言ったヒットアンドアウェー方式で戦闘は続いた。そしてついに戦闘が動く。


 「焦ったいな、もうおわりにするぞ‼︎」


 そう言って彼は今までにないほどの魔力を右手に込めた。というか魔力が動くのを何故か見えるようになっていった。その魔力はまるで空間が歪むほどの質量を持っていた。これを食らったら間違いなく死ぬ。


 (避けるしか…)


 その途端に彼は袋を投げてきた。その袋を反射的に殴ってしまう。中にある砂が外に飛び出る。


 「硬化ッ!」


 砂は僕の周りで固まる。身動きが取れない。やば、これ死ぬかもな。


 「じゃあな!氷牙君!『衝撃インパクト』!」


 ゴギャッ‼︎


 彼の一撃が僕の肋骨ろっこつをくだく。しかしそれだけにとどまらず二度目の衝撃が僕の体に放たれる。


 パァン‼︎


 ドゴォォォン‼︎


 とてつもない轟音で僕の体は建物に激突する。痛い。硬化で加工されていたはずだが、それを易々と貫通した威力。僕の意識は深い闇に飲まれる。


 これ、何回目だろ?


 魔力が使えればなぁ。


 微かに残る意識の中、僕は魔力の発動を感じた。黒いモヤが体を渦巻いている。今じゃないのよ。


 すると突然強引に意識が戻された。なんと砕かれた肋骨が完全に治っていた。


 「…は?」


 思わず口から言葉がこぼれ出る。あの痛みは嘘だったのか?色々な可能性を考えている中、突如脳内に言葉が流れた。


 ー借りるぞ、この身体(器)ー


 パキッと音を立ててペンダントが割れる。そして考える間も無く、再び意識が刈り取られた。




 「しぶといな、まだ生きているのか?」


 モグは氷牙の方に視線を向ける。しかしそこに立っていたのは黒い目をした少年、しかも体から『闇』が漏れ出ていた。


 「お前、氷牙か…?」


 明らかに違う覇気、周りのものを刺し殺すような眼光。それらに当てられ、ギャラリーの一部は立つこともできなくなっていた。その姿はまさに悪魔そのものだ。


 『これ以上(このからだ)を痛めつけないでもらおうか、安全に顕現できなくなるんでね。じゃあ第二ラウンドを始めようか』


 解き放たれた悪魔が言葉を発し終えたと同時にモグめがけて高速で突っ込む。この第二ラウンドが終わる1分前の出来事であった。

戦闘シーン、まだ少し続きます。

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