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1.派遣ギルド

 大陸の真ん中で僕は目覚めた。意識が持っていかれる前の、あの廃墟の真ん中だ。


 「なんとか成功したか。だが、少年の人生を曲げてしまったな」


 「…曲げられてはいないさ。むしろ助けてくれたことに感謝さえしているよ。ありがとう」


 「…何故私が君を助けたことを知っているのかな?寧ろ私は君の命を一度奪っているんだよ?」


 言葉が詰まる。正直に冥界のことを言うべきなのか否か、考え込む。冥界の主が教えてくれたと言えば筋は通るかもしれない、しかし正直に信じてくれるとも思えない。っていうか、冥界のことを言うだけで笑われるかも…ちょっと傷ついてしまうかも…


 「…フッ、そういう事か…アイツも動くのか…面白い」


 僕の葛藤を見て目の前にいる少年は薄ら笑いを浮かべながらそう言い放つ。もしかして、冥界のことを知っているんじゃ…


 「取り敢えず自己紹介と謝罪を。私の名はメア。"神秘"の体現者。『闇帝』の名を冠する人間だ。その名を以て君に謝罪させてもらう。生き返らせるためとはいえ、君の人生を曲げてしまった。誠に申し訳ない」


 「さっきから何の事なの?人生を曲げたなんて、そんな物騒な事…」


 「…まさかとは思うが君、体に何も異変はないのか?」

 大して体に異変と呼べる程の不具合はない。それを見せつけるかのように少年の目の前でバク転をして見せる。


 「いや、身体の方ではなく魔力の方…」


 それを聞いて少しムスッとする。あーはいはい、僕は旧人類だから魔術は使えませんよーだ。でも勝手に決めつけるのは良くないよね、という事で掌に少し力を入れてみる。すると僕の掌の上で黒い()()が発生した。取り敢えず力を振り絞って最大火力を放ってみようとする。すると、


 「ストーーップ‼︎そんなことしたらここら一帯の地面が消えてなくなるぞ‼︎」


 そうだったのか、あまり力を出しすぎないようにしないとな。そうして体の周りにもやを大量に出して遊んでみる。便利なことに自分の一部であるかのようにもやを出せた。さらにこれには寿命を奪う効果があるらしく、勢い余って暴発したもやが近くの集会所らしき建物に掠った途端、砂と化して崩れ落ちていった。あまり遊びすぎないでおこう。でも魔術が使えたことに少々ウキウキになり、誰にも干渉しない程度で試し打ちしまくる。…やべぇ、楽しい。


 「闇の魔術、気に入ってくれたのか…?」


 「あぁ、僕には魔力がないから、これで他の人と対等に話せるんだ‼︎それに命まで助けてくれてありがとう」

 その言葉を聞いた途端、メアの表情が硬くなる。


 「旧人類なのか?」


 「…あ。えーっと、そのー、…ハイ」


 しくじった。フレアに話すなって言われてたのに…ゴメン!フレア!、と脳内で謝っていると、


 「実はさ、私もなんだよ‼︎よかったー、仲間がいて」


 「…え?そうなの?」


 帰ってきた答えは想像の真反対のものだった。彼曰く、この世界で旧人類は差別の対象らしく、とある機関を除いてはどの職にも就けないようだ。


 「その機関って?」


 「同じ旧人類のよしみだ、教えてやろう。ズバリ、『ギルド連盟』である‼︎」


 ギルド連盟。大規模な職業提供組織の集合だ。書類に記載された情報だと、6000年も前から人類の発展のために尽力している…らしい。期間が長すぎてにわかに信用できない。でも現存している組織の中で最も信用できるのも確かだ。


 この連盟には全部で5つのギルドが存在する。


 戦闘職を手配、各地の危険モンスターを狩る冒険者ギルド。魔道具を製作し、人々の生活向上に役立てる生産ギルド。各地の魔法学校に優秀な人材を送り込み、その技術の全体的なレベルアップをさせる魔術ギルド。基本、王族以外からの暗殺依頼などをこなす暗殺ギルド。そして世界各地の被災者の支援を行ったり、遠方の配達依頼などを主な仕事とする派遣ギルド。これら5つの中からメアが僕にお勧めしてきたのが…


 「派遣ギルドなんてどうだ?そこなら私の知り合いがいるし、ギルドマスターはとてもフレンドリーな人だから受け入れてくれると思うぞ?」


 それは助かる。なんせこの世界の情勢がどうなっているのかわからないから、こういう所でしか外界の情報を得られないからね。


 「じゃあそこに行かせてもらおうかな」


 「あいわかった!」


 そうして僕はメアとこの廃墟を後にした。運がいいことに、ギルド連盟の本拠地は今いる大陸の中央に位置しており、3日ほど歩けば着くことを知った。しかし、どことなく嫌な予感がする…


 ドドドドドドドドォ‼︎


 1日経った。案の定、メアのスピードは尋常じゃない。一日中走り続けないと地平の彼方に沈んでしまう。というより問題なのはそこじゃない!ずっと走り続けたら流石にバテてしまう。その時に、だ。彼は首を鷲掴みにして一直線に走り続けるではないか。時折食事の休憩が入るが、睡眠の休憩がない彼曰く、「寝たら着く日が1日遅れるぞ‼︎わかったら走れ‼︎」だそうだ。そんな無茶な…


 2日目。この日の感想としては、昨日より休憩する数が減ったくらいだ。それと、新たな廃墟を3つほど見つけた。そのうちの一つを最短経路ということで突っ切ったが、少し違和感を感じた。死体がない。初めに寄ったあの廃墟は死体があったのに、だ。さらには建物が異様なほど綺麗だった。まるでそこに人がいなかったような…そんな考えをしているとメアに投げられた。そろそろ走れ、だそうだ。人使いの荒いことだよ、全く…


 3日目。とうとう彼の走りに追いついた。さらには体力も彼と並べるほどになったと思う。あの細い体のどこにあんな体力が残っているのやら。でもまあ、ここぞというときの体力はできたと思う。ギルドに着いても走り込みの鍛錬は続けていかないと…そのように考えを巡らせていると壁にぶち当たった。


 「『派遣ギルド本部』…ここが…」


 質素な作りの巨大な建物は、5つのギルドの真ん中に位置していた。


 「たのもー!」


 「うわぁぁ!ち、ちょっと‼︎」


 慌てながら僕はその建物の中に足を踏み入れた…




 「ギルド長、メア様とお客人です」

 ギルド長と呼ばれた青年は笑みを浮かべて秘書に言い放った。

 

「ここに入れてくれ。(メアのことだ、どうせ話があるんだろうさ。…全力で拒絶したろ」

いよいよ本編スタートです!

応援してくれると作者のやる気につながります!

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