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0-5.そして災悪へ

 広大な海に点在する、人類の叡智が込められたとある島。本来の名を知らぬ人々はそれを『時の玉手箱』と呼ぶ。どうやって作られたのか、誰が作り出したのか、それらが一切不明という謎に包まれた島。透明のガラスに包まれたこの菱形の人工島の中には4種類の大地が広がっており、それらの区分にもガラスが使われている。

 第一区域、生けるものの命を刈り取らんとする灼熱の砂漠。過酷な地に生きることの出来る彼らは正に生きるためには手段を選ばない「モンスター」。4区域の中では生命の種類が最も少なく、生存本能に駆り立てられた彼らは今日も生きるために狩りを続ける。この地は北欧神話の灼熱地獄から「ムスプルヘイン」と名付けられた。

 第二区域、万物を凍らせる絶対零度の雪山。この地では唯一、一つの種族のみが生きることを許されている、言わば魔境の絶対王者達のみによる家族社会。食事という生命活動に必要な行動を完全に取り去った「矛盾」が治める残酷と神秘の、北欧神話の氷結地獄より「ニブルヘルム」という名を授けられた世界。

 第三区域、腐毒と呪いにより成り立つ原初の写し鏡、生けるものを拒絶する死の絶対領域。この地にて生存を許されるのはここを構成する意思ある猛毒のみ。それらが生き延びるために行うことはただ一つ、命ある者を誘なうこと。その為にそれらは魔法を覚えた、それ故に付けられし名は魔毒(ペイン)。同じく北欧神話にある「ヘルヘイム」の名を(もっ)てこの地は存在を位置付けられた。

 第四区域、人理の集大成を否定する、模倣と贋作の住まう地、「アスガルズ」。ここの生物は子孫を作らない。ただ生まれ、喰らい、そして当然に死ぬ。二度と同じ種は生まれない。神の思し召しか、それとも悪意の悪戯か、彼らには知性がない。どこで生まれ、何処へいくのかさえ彼らには分からない、ただ異なる種が無限に湧く(生まれる)という、醜悪と矛盾に包まれた領域圏。

 絶景と終焉が巣くう、世紀末な人工島の中心に場違いな黒いボックスが点在している。その場にて今まさにとある人々が会議を始めようとしていた。

 


 「今年初集会なのであります。そろそろあの計画を実行に移すのでありますか?」


 先に口を開いたのは小柄の少女だった。マイクロビキニを着た赤髪ロングの少女にこんな格好で街を歩かれたらそれこそ痴女だと思われるかもしれないだろう。


 「そう急ぐな、妹よ。しかし我達(われら)全員を集めたということは、計画に不都合があったと。そう捉えて良いのだな」


 痴女を妹と呼んだ銀髪の大男は鏡から見える地獄(そと)を眺めながら言った。固い表情を一切変えることなく。


 「ヒヒッ!しかし僕らの一斉招集などいつぶりでしょうか。フヒッ!お久しぶりです♪」


 薄気味悪い笑みを隠さない男は大男の後ろに立つと気色悪い指の動きをしながら徐々に近づいていく。しかしその指が肩に触れる前に大男が手首を掴んだ。


 「俺にお前の魔力は効かん。それは前回の会議で見せたはずだが?それとも、我にこの腕をへし折って欲しいか?」


 「フフッ、それは怖い。正面戦闘では貴方に勝てないことはここにいる誰より知っていますので、ええ。今日のところは引かせていただきます。…ヒヒッ!」


 「そうさ、今ここで殺し合い(おふざけ)をやられでもしたら、魔獣共に一斉に攻められて終わりだよ。ボクはまぁ、それでもいいけどね」


 2人の話し合いの最中、新たな少年が2人の足元に現れた。珍しい黒髪をふわりと舞わせて。


 「貴様の快楽主義に付き合っていられるほど我らは暇ではない。それより早く出てきて要件を話せ、ルード」


 突然空間の中心に机が現れ、その上をたくさんの剣が宙を舞っている。その剣は次々と爆散していき、最後の一本が爆破した瞬間に空の一部が割れ、そこから1人の白銀の騎士が現れた。


 「…これより集会を始める。静粛に」


 ルードと呼ばれた騎士は笑い続けていた男に一瞥する。すると薄気味悪い笑いを止め、真顔で部屋の隅に立った。


 「今回話す点は三つ。端的に伝えさせてもらう」


 淡々と話を始める。声が小さいからか、その場にいる全員が近づく。近づききった後に黒髪の少年が口を開く。


 「それって、残りの3人がいないことに関係がある…んだよね?」


 その言葉を聞き、ルードは頷く。


 「一つ目、死に体だった闇帝『メア』が蘇った。それで…」


 それを聞いた途端、少女のまわりの空間が歪み始める。


 「あのガキ、まだ生きてやがりましたか…今度こそ私の手で…!」


 「阿呆か。やるなら全員でだ、妹よ」


 皆の怒りを(なだ)めるように騎士が口を開く。


 「それに関して、残りの3人に後を追わせている。これが二つ目の報告だ。蘇ったとはいえ、まだ魔力の回復が済んでいないだろうからな。不安の芽は摘んでおくに限る」


 皆の怒りが収まるのを見て、ルードが話を再開する。


 「三つ目だ。神の器(ニア・ルーラー)が目覚めた。これより例の計画を開始する」


 「フフッ…「大波」も近いようですし、やるには絶好の時期ですねえ…ハハッ!」


 ルードの言葉を聞き、皆がやる気に包まれる。そして彼の言葉で遂に計画が開始される。


 「全ては我らが大義と旧人類のために…」


 皆が一斉に拳を前に出す。全員の拳が出揃った時、一斉に掛け声を放つ。


 「「「「「我ら、『暁の光(トワイライト)』の名の下に‼︎」」」」」


 その掛け声と同時にルード以外の全ての人が消える。そして誰もいないことを確認して、兜を取った彼は外を見て言葉を放つ。氷牙と同じ、水色の髪を靡かせながら。


 「ようやくだ。やっと会えるね、氷牙」


 彼の目には何も映らない。光を映さないその目には確かな決意が込められていた。



 そして物語が動き出す。

これにて0話終了です。大変長らくお待たせしました。次回から本編スタートです‼︎

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