31.集結
レッカに肩を貸してもらって歩くことおよそ5分、まるで糸が切れた人形の様に地面に突っ伏しているモグとフレイの二人を見つけた。近くにあった大きな瓦礫に僕を座らせ、レッカは二人のもとへ歩いていく。何やら黒い笑みを浮かべて。
「寝坊助達にはァ、お仕置きするのが一番だよなぁ⁉」
日頃の鬱憤がたまっているのだろう、周囲に散乱している少し小さな瓦礫を持ってくると彼らの周囲に置き始める。崩さないように、丁寧に…
「よしできた」
完成したそれは最早棺と呼べる品物だった。ご丁寧に墓石まで作りやがって、起きたらキレられるぞ。こんな考えもすぐに回収されることとなるのだった。
「さっき拾ったこれを使うとするか」
「……?メガホン?」
レッカはここに着く前に落ちていたメガホンを手にする。所々穴が開いているそれは今にも形が崩れそうなほどボロボロになっていたが、そんなことも構わず彼は大きく息を吸い込む。息を吸い込んでいる間、周囲の魔素がメガホンの周りに集まり始める。発声する直前のメガホンは、あまりの魔素の濃さにブレているように確認できた。
(コレを発射するのはまずい‼なんでか分からないけどヤバい気がする‼)
直感で危険を感じ取った僕は全速力で氷の箱を生成する。レッカと棺組を覆うように氷を生成し、『硬化』でそれの強度を補う。それでも心配になり、その場で耳をふさぐ。透明な氷なので中が見えており、発射される直前にレッカがこちらを向いてウインクしたのも見えた。思わず苦笑してしまう。そして心の中で棺組に…
(ご愁傷様、二人共)
そう唱えるのだった。
「おい、さっきのって…」
「…一体、何が…」
「あ、ちょっ‼ストッ…」
ハヤテとレッカが走って駆け寄ってくる。『さっきの』とは恐らくマインの魔素暴走の事だろう。あまりにいきなりだったので思わず耳をふさいでいた両手を話して反応してしまう。しかし運命は無慈悲、拡声兵器は彼らの声すら聞こえずに巨大な爆弾を爆破させた。
「大変申し訳ございません」
「「「『……』」」」
ギルドの関係者が居ればこの状況を不思議に思うだろう。今この場には3人の青年に睨まれて土下座しているギルドマスター、その二組の間に挟まれているメガホンだったモノ、それの被害に遭って白目を剥いて気絶する2人の男女がいるという珍妙な光景が広がっているのだ。徐々に野次も増えているのでこの場を早く離れたいレッカであるが、前方の3人ないしは4人に睨まれているのでむやみに動けば雷が落ちるのは目に見えていた。
「あのメガホンがまさかここまでの音を出せるとは思わなかったんです。音量のリサーチ不足、それによる他周辺住民への被害の考慮不足等、すべては私の不徳の致すところであり…」
「それで?モグ君とレッカさんにどう申し開きするというのだい?」
「責任をとって辞職いたします」
―えぇー‼―
―それは責任から逃げているのではないのでしょうか⁉(笑)―
―冗談でもやめるって言わないでギルマスー‼―
野次が僕らの悪ふざけに付き合ってくれてるこの状況、なんかすっげ―楽しい‼謝罪会見のようなノリが続いている中、先ほどの音爆弾による被害について説明しよう。
まず棺組なのだが、案の定二人とも気絶。一瞬だけ起きたようだが意識を保っていられなかったようだ。次、僕らは爆音が響き渡った結果、気絶とまで入っていないが結構な立ち眩みが起こった。しかも脳内に音が反響したことにより僕は気を保つのに精いっぱいだった。ケンタたちは気を失ってしまったために少し介抱していたのは言うまでもない。もちろん一般人にも被害が出ており、避難をしていた人のうち数十人ほどが気絶、その他ほとんどの人が体に影響があったと訴えている。その影響は幸か不幸か彼女にも出ていた。
「…んぁ。ここ、は?」
洗脳状態が解けあたりを見渡す少女、フィンだ。気が付いたら商業区の真ん中で突っ立っている状況に理解が追い付かなくなっている様子。とりあえず戻ろうとすると、
どっと人の歓声が沸き上がる。気にせず戻ろうとするも、意識が向こうへ引き寄せられてしまう。彼女にとって、ここまでの賑わいが戻ったのは数年ぶりだった。
(少しだけ…少しだけなら、いいよね)
歓声の湧く方へ向かってみる。そこに広がった光景は…
「氷牙…君?」
「…あれ?フィン⁉何でここに?」
レッカを尋問している氷牙達の姿だった。
―残り3時間―
ここで一章の序盤(想定)が終了です。
ここから一段と物語を加速させるつもりですので頑張ってついてきてください。




