15.読書系魔術師と本格的な依頼再開
―神霊―
―死した人などの強い縁を有している存在が魔素に結びつき、そのカタチを当時のもの又は自らの思い描いたものにして現世にとどめる、いわば奇跡の具現。―
「…君はどっちなの?」
『知らないっスよ。俺には生きていた時の記憶はないし…いや、主の記憶ならあるか。ともかく!俺は多分主の中にあったメアの魔力に貴方の強い意志が結びついてできたんだと粗方の予想は立てているんで。それよりも、コレ』
続きを読むように指をさしてくる。図々しい怨霊だこと。まあでも、気になる続きの方は…っと。
―神霊にはほかの系統の魔術とは違い、独自の方法で魔素を操る力があると見える。魔素に体が結びついている証拠だともいえるその技の名は『神域』。神のごとし力を得た霊にのみ使うことのできる、魔術の最高到達点。―
「最高到達点って言いすぎだと思うけどなぁ」
『でも魔術じゃ到底言い表せないような威力してましたよ、アレ』
黄泉竈喰かぁ…確かに結構な威力をしてたもんなぁ。それよりもこれを書いた人って結構ポエマーなんだな。『神のごとし霊』とか倒置法を用いたりとか、僕なら恥ずかしくて書かないけどね。ひとしきりそんなことを考え終えたら再び本に目を向ける。
―保有者に聞いた話によると神域にもさまざまな形態があるらしい。
・神霊を一時的に顕現させる『神域顕現』
・己の体に憑依させる『神域反転』
・体に纏い、特定部位を瞬間的に強化する『神域武装』
・神霊の内に秘めた幻想世界を展開した『神域開放』
・保有者と神霊の内包世界を混ぜ合わせ、完全なる固有結界となった神域の終着点『神域展開』
確認されたものはこの五つだがこれ以上の情報が確認され次第随時追加を…―
「このページはこれで終わりか」
最後の部分も雑に破かれていたため、次のページに進もうとする。すると肩をつつかれた様な感触がし、ばっと振り返るとそこにいたのは…
「…?熱中して読んでる。なに、読んでるんだ?」
「ッ‼あぁ、ケンタ君か。今はこれを読んでるんだ」
ふと身構え、同時にゲッコウを隠す。そんな触れられ方をするとお化けが出たような感じがしてしまうじゃないか。小さい声がより一層雰囲気を出している。心臓に悪いからやめてほしい。とりあえず読んでいた本の表紙を見せる。
「『光臨の日』…。解るんだ、それ。まったくもってちんぷんかんぷんだよ。それについての解説書も…四番本棚のここに…あった」
「へぇ、『神の堕ちた日』かぁ。物騒なタイトル…って、よくそんな本の存在知ってるね。まさかとは思うけど、ここにある本全部読んだの?」
的確に本の場所と内容も知ってたんだ。この数日でここら一帯の本全部読んだんじゃあるまいな。二千冊以上もあるんだぞ!
「…?あぁ、当然。暇だったし…」
やはりかー。案の定だけれどもさすがに驚きを通り越して気色悪いんだけど…そんなことを考えているとケンタは隠していたところに目を向けてしまった。
「…その子、誰?」
「あぁ…えぇっと…そのぉ…」
マズい、見られた。まあ、別に隠さないといけない理由はないけどあまりゲッコウの存在は公にしたくなかい。でも見られたからには正直に話すか…
『人間、俺をその子扱いとは少々不敬じゃないのかね?』
「ッ‼」
やばそうなオーラとどす黒い瘴気をとんでもなく放って威嚇する。前言撤回、こいつは人に見せちゃいかん奴や。
「ゲッコウ‼戻れ‼」
『…ッ!承知…』
焦ったのか少々言葉遣いが荒れてしまったが、ゲッコウがおとなしく帰っていったのが意外だった。シュルシュルとゲッコウの体を構成していた闇魔術が右腕に戻っていく。そしてすべて戻ると、ゲッコウの蓄えていた知識が頭に流れ込む。頭が少し痛むが耐えられない程じゃない。だがこの状況をどう説明するか考える。意を決し、全てを伝えようとケンタを見ると…
「!しっ、死んで…」
『ない!こっ、殺してない!少し眠ってもらってるだけっスよ!…多分』
「最後の!おい、最後のォ‼」
結局、ケンタは立ったまま寝ているだけだった。肩を貸してやり、ケンタの部屋に寝かせる。そうはいっても白目を剝いたまま寝てる人ってこんなにおぞましいものなんだな。
図書館への帰り際、僕はレッカとばったり会った。心なしか服装が少し乱れているような…
「今日はもう遅い、また後日に本を読むといい」
「は、はい。わかりました」
また明日行くか、でもあの本の続きを見たい気持ちはあったから少し残念。ちょっと肩をすぼめてとぼとぼと帰ろうとする僕をレッカは呼び止める。
「そうだ、明日からフィンの依頼を再開する」
「え、マジ?」
「大マジ。それに生産区から出た謎の生物の調査にも行ってもらいたい。いわゆる、『マルチタスク』ってものだ」
戦闘区には生産区を中継しなければ入れない。その為、ついでに生産区の不祥事を解決すると言う魂胆か。それにしても二つの仕事を行うのか。順番にやっていった方がこっちとしても楽なんだが、彼女の依頼をこれ以上先延ばしにはできないし奇怪な生物も生態が解らない以上、住民たちの安全を約束できない。かと言って今ギルド職員は先の異形の調査で人手不足、動けるのは僕らしかいない。ならば…
「やります、やらせてください」
『覚悟を決めたか、なら俺も見てやりますかね…』
「わかった。明日、生産区側の入り口前で待っているぞ」
ここからが僕らのギルド活動の本格的開始だ!そんなことを考えつつ、僕は自身の部屋に向かって歩く。
とある人工島、モニターパネルに移されるは、いろいろな人の名前と数字。そのパネルののちょうど真ん中、そこに移されていたのは…
――被検体No.00 焔乃宮 氷牙――
――浸食率:5%――
ピコンという音とともに数字が上がった。この数字が何を指すのか、『浸食』がどのようなものかは未だ誰ひとり知りはしない…
お待たせして申し訳ありません。水曜からちゃんと元通りの投稿ペースで投稿します。




