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星降る夜に

作者: クマイ クマ

 私たちの街には、星の降る丘として有名な場所がある。

 なんでも星がたくさん降る日に、そこで恋人たちが愛を誓うとどんな困難が起きても2人で乗り越え、命尽きるその日まで生涯を共に出来るらしい。

 その噂が、本当かどうか私には分からない。

 分からないけど、今の私はそんな噂に頼らざるを得ない状況なのだ。


 最近、私はずっと好きだった人に、告白をし無事付き合えたのだ。

 けれども、ほんの些細なことで1週間前に喧嘩をしてしまった。

 自分にも非があるのに怒りに任せて言ってはいけない事を言ってしまったのだ。仲直りをしたいと思っているのだけど、なかなか2人のタイミングが合わず、すれ違い続けている。


 いつも以上に連絡をマメにし、なんとか今日の夜に会う約束が出来た。

 天気が悪く、最悪雨が降るかもしれないらしく、来てくれるか不安ではあるけど。

 約束の時間までまだ時間がある。

 その間に、出来る限り身だしなみを整え、向かう準備をしていく。

 準備を終えて、ふと2人で歩いたこの街を少しだけ歩いてみようと思った。

 そうと決まれば、すぐに靴を履き、鍵を閉めて、街へと向かおう。傘も忘れずにしっかり持って。

 向かいながら、まだ行っていないところもたくさんあるなと思った。

 このお店もあそこの公園もまだだけど、歩いていると2人で過ごした思い出で溢れていることに気付いたのだ。

 2人で初めて待ち合わせをした場所、手を繋いだ場所、嬉しいことを共有した場所……

 例え、たくさんの場所へ行っていなくっても、たくさんの時間を共有してきたのだ。

 これからもっと2人でたくさんの時間を共有して、経験していきたい。

 嬉しいことや楽しいこと、悲しいこと。そして、喧嘩しているこの時間も全部。

 そんなことを考えているうちに、約束の時間が迫っていた。よかった、天気もなんとか持ちそうだ。

 急いで、丘へ向かうとそこにはすでに人がいた。

「おまたせ」と声をかけると、「待ってないよ」と返ってきた。

 そして、2人の間に無言の時間が流れた。

 謝らなきゃ……!!

 そう思って、口を開いたら

「「あの!!」」

 同時に声をかけてしまったけれども、なんだかそれがおかしくって、2人して笑ってしまった。

 そして、「ごめんね」と仲直りした。

 それから、喧嘩してから話せてなかったことをお互いたくさん話した。たわいない話ばかりだけれども、それも私たちにとって大事な時間である。

 仲直りをしてから大分時間が経ち、結局雨降らなかったななんて思いながら、そろそろ帰ろうとふと空を見たら、そこには満天の星空が広がっていた。

 あんなに雲で覆われていた空が一面、綺麗な星でいっぱいになっている。

 星空に見惚れていると、1つだけキラリと光って流れ落ちた。

「流れ星だ!!」

「お願い事急いでしなきゃ」

 なんて話しているうちに、どんどん星が流れ落ちてくる。

 キラリ、キラリ、と落ちてくる。

 まるで、仲直りをしたことを星に喜んでもらっているみたいに。

 私たちは静かに降ってくる星を眺めていた。

 私はふと、ここの噂を思い出した。

 星降る夜の丘で愛を誓うと、ずっと一緒にいられるという噂。

 噂に頼るつもりでいたが、不器用な私は、どうしたらよいのか分からず、手を握り、星を眺めていることしかできないけどそれをきっと分かっていて、今この手を握り返してくれているんだろう。

 そして、心の中でそっと愛を誓った。

 しばらく星を眺めていたが、そろそろ帰ることにした。

 愛を言葉にして誓うことは出来なかったけれど、きっと大丈夫だ。

 改めて、手を握り直し丘を下る。

 丘を下り終えて、この小さな街を2人で歩けることの喜びを久々に感じている。

 握った手から同じものを感じ、今私たちは同じこと考えていることに嬉しくなった。

 街や家の灯りを見ながら、自然と夕飯の話しをしていた。温かい気持ちでいっぱいのまま、家へと向かう。

 そして、こんな素敵な時間が永遠にこれからも続くことを願って。

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