旅立の日
ここは、『自由の母孤児院』。魔族に両親を殺された子供達が預けられている。
院長であるリョウコママに拾われた子供達が約20人の子供が暮らしている。
そこには、最年長の子供であるダイチという少年が居る。
「ついにこの日が来たね。ダイチ。ここを卒業する日が。あなたが、ここに来た日が昨日のように思い出すわ。」
「ママ、本当に10年間お世話になりました。ママにここに招いていただいて本当に助かりました。これからは、冒険者として生きていきます。」
「本当に、あなたが私の話した卒業生の話を聞いて、冒険者になるって言った時はびっくりしたけど、その時から気持ちは変わっていないんだね。」
「はい!魔族を殺すのは正直嫌です。でも、僕の気持ちは変わりません。」
「わかったわ。冒険者ギルドの人たちにはダイチのことを伝えてるから、話したら歓迎してくれるはずよ。
これ、少ないけど餞別ね。報酬が出るまではこれで、生活するんだよ。」
「ありがとうございます。あれっ?どうしてママは泣いているのですか?」
「あはは……。もちろん、ダイチが卒業するから悲しくてよ!」
「そうですか、いつかまた顔見せに帰ってきますよ。では僕はそろそろ出発するね。」
そして、院長室から出ると孤児院の子供や料理係のシローさん。読み書き計算を教えてくれたコマツ先生。武術やスポーツを教えてくれたモモカ先生。その他職員の皆も勢揃いで僕を待っててくれた。
「みんな、ママや先生の言うことをよく聞いていいこにするんだよ。」
「ダイチ兄ちゃん、今までありがとう。
そういって、皆の寄せ書きが書かれた色紙が渡された。」
「ありがとう。大切にするよ。
シローさん、お料理いっぱい教えてくれてありがとう。僕が冒険者になるって言ってから、随分と色々なサバイバル料理が出来るようになりました。」
「お安い御用よ!俺は、いつかダイチの活躍を耳にする日を待ってるぜ!」
「シローさん、ありがとう。
コマツ先生、まだ文字も読めなかった僕に色々と教えてくれてありがとうございました。当時のお兄さんやお姉さんの助けもあって、今は僕が弟や妹達に教える立場になるほど、上達しました。」
「いえいえ、私は何もしてないわ。本当に、ここの孤児院は年上が年下に教えるってシステムが徹底されていて楽なお仕事だったわ。
ハンターさんだったら掲示板を見るために文字を読める人が多いと思うけど、書ける人は少ないと思うわ。困ってる人が居たら教えてあげてね。
ダイチは、それが出来る冒険者なんだから。」
「はぃっ!『困っている時はお互い様』ですよね。よくママから言われてきました。
モモカ先生も武術やスポーツを色々と教えてくださりありがとうございました。ハンターの仕事というのは闘うことなので、きっとお役に立つと信じています。」
「ダイチくんは、特に武術を率先して頑張っていたわね。先生にもその頑張りは伝わったわよ。でもね、先生が教えた武術は体術が殆んどなの。今のダイチくんの実力ではスライムですら苦戦すると思うから気をつけてね。」
「はいっ!肝に銘じておきます
その他、職員の人達も色々とお世話していただきありがとうございました。皆さんの支援があったからこそ、僕は快適に毎日を過ごすことができました。」
「いえいえ。わたし達は、好きでやっているので気になさるな。いい冒険者になるんだぞ」
「はい!立派になって、ニュースにも連日名前が出てくるような冒険者になってみせます。」
その時、ママを始め年配の職員達の顔が曇り重苦しい空気になった。
「ダイチ、あんまり無理はするなよ!命はあってこそじゃ!命を掛けたお仕事なのだから、そのことは分かってると思うが、死んだらワシらは悲しい。だから、絶対に生き抜くんじゃぞ!」
職員最年長のトト爺だ。いつも、庭の掃除とかしてくれている。
「はい!トト爺こそ、僕の活躍を見るまで死なないでね。」
「あぁ。ワシは、200歳まで生きるぞ!」
トト爺の発言で笑いが起き、周りの空気が明るくなった。
「それでは、行ってきます。」
と言ってダイチは孤児院を出て歩き始めた。
振り替えると皆が万歳三唱をしている。ダイチは手を振った。
「「「バンザーイ!バンザーイ!」」」
と声が響く中ダイチは歩き続けた。
既に伏線に気付いてる人もいると思うけど、「シーッ!!」だよ。