西の民
胡椒? マリサがハンバーグを作ってくれた時に臭み消しに使っていたやつだ。
「あぁ。西の民の人たちから需要があるんだよ。」
「へぇー。西の民に需要があるんだー。」
「西の民って何ー?」
マオは、初めて聞く言葉だ。思わず聞いてしまった。
すかさず、ダイチが世界地図を広げながら答えてくれた。
「この世界って、4つの大陸でできているんだ。『ヒルメ大陸』、『ヒルコ大陸』、『スサナル大陸』、『ツクヨミ大陸』。僕たちが居るのが、ヒルメ大陸だよ。」
「おお! ヒルメ大陸大きいね。」
「うん。一番大きな大陸って言われているんだよ。そして、ここに魔王城がある。」
指を指された場所は丁度ヒルメ大陸の真ん中辺りだった。
「おお! 魔王領って広いんだね。」
「うん。そうだね。広いね。それだけ魔王軍の力が凄いってことだよ。それで、人間達は、魔王領を通過して行き来することができないんだよ。」
「えっ? どうして?」
「魔王軍が強すぎるからさ。」
「えっ?」
「まあ、マオは強いからね。魔王軍もそんなに強いと思わないかもしれないけど、普通の人間は力を合わせないと一匹の魔物に勝てないんだよ。」
「そんなものなのか。」
「それで、ヒルメ大陸の魔族領の西を『西の民』東を『東の民』って言ってるんだよ。」
「へー。そうなんだ。マオ、知らなかった。」
「それでね、最近世界が丸いってことを西の民の人が発見したんだっけ? そうだったよね、アズミ。」
「そうだよ。西の民の人たちが発見したんだ。ヒルメ大陸の西側から西に行くとヒルコ大陸があって、更に西に行くと、ヒルメ大陸の東側があるってなったんだよ。それで、スパイスを求めてここに来てるんだよ。」
そんなことが起こっていたんだ。マオも世界が丸いなんて知らなかった。これまでずっと魔王領で暮らしていたからだ。そういえば、スパイスってなんだろう?
「スパイスって胡椒のこと?」
アズミが続けて説明をする。
「胡椒はスパイスの、一種だよ。ここから西にあるイナミ町とか、マリル町とかフィクス町で取れる植物なんだけど、辛さと匂いがあるんだよ。カレーって知ってる?」
「知ってる! ミスズ町で食べた。」
「あれ、辛かったしいい匂いするでしょ?」
「うん。辛かったけど美味しかった。」
「カレーはね、色んなスパイスを混ぜ合わせて作ってるんだ。だから、あんなにも辛いけどいい匂いで美味しい味が出せるんだよ。それで、胡椒はそのスパイスの中でも肉の臭みを消す力が強いから人気なんだ。」
「そうなのか。西の民も胡椒栽培すればいいのに。」
「西側では気候的に栽培しても育たないんだよ。本当、特定の地域でしか栽培できないんだよ。」
「そうなんだ。それで、西の民の人たち海を渡ってここミナトに胡椒を買いにくるんだね?」
「うん。そうだよ。」
人間って面白い料理の匂いと辛さ為にわざわざ海を渡るなんて。だからこんなにも人間の料理は美味しいのか。それにしても、魔族って酷いよね。大陸を西と東に分けるなんて……ってマオも魔族か。でも、今は人間か。
「そういえば、ここミナト町には珍しいものがあるんだよ。ダイチくん、マオさん案内してあげるね。」
そういって、アズミはスタスタと歩いて行った。
魔族……人間…… マオも人間に産まれたかったな……




