掴む
「じゃあ、やってみよう。
マオがダイチに攻撃するから、避けてマオの懐に入り込んで、首を腕で引っ掻けるようにして引き込んで!」
そして、マオの拳が飛んできた。僕は、右に避けた。
「違う!しゃがんで避けて」
もう一度やり直し。僕はしゃがんで避けた。
「うーん。なんか違う。マオが手本を見せるよ」
そして、僕がマオに拳を突き出す。
すると、マオは半歩僕の方に脚を出してそれで頭が低くなり拳を避けた。そのまま接近して僕の首はマオの腕の中に包み込まれた。
「こんな感じだよ」
「わかった。やってみる」
そのままマオのやった通りにする。
「それも違う!したから、斜めに手を首に向かって持っていったら相手に避けられるよ。一度、手を胸の付近まで上げる。そして、相手にの首に向かって真っ直ぐと持っていく。
こうしたら、相手からダイチの手が近付いてくるって遠近感がわからなくなるから、気付いたら首を持たれていた!ってなるんだよ」
「わかった。やってみる」
マオに言われた通りにやってみた。
「それだよ。出来たよ。これを高速でやるんだよ。
そうだね。マリサがやっているレベル8?の速度で打つから、ダイチは避けてマオの首を掴んでね」
それから練習が始まった。マオの拳の速度は目で追えるギリギリの速度だけどなんとか避けることができる。しかし、なかなか懐に入っていけない。
そのまま練習を繰り返していた。
何度かしていると出来るようになった。
「あれっ?これ…どこかでやったような…」
「そうなの?」
「うん…どこだっけな…?」
僕は色々と過去の記憶を辿っていった。
そして…あっ!これっ!準備運動でやっていたナイファンチってやつだ!
「ナイファンチ?」
「うん。孤児院のモモカ先生の授業開始時にやっていたんだよ。なんでも、武術の基礎的な動きが覚えられるらしい」
「へー。一回やってみて?」
「うん。何回もやっていたから覚えたよ」
そして、僕はマオに披露した。
「凄いねこれ。確かに、首を掴む動きのようにも見えるよ。そして、膝蹴りを顔に…そのまま首をグルングルンに回して、最後に首の骨を折る動きだよ。これ、早くできるようになったら使えるよ」
「えっ?本当に?ただの準備運動だと思ってたよ」
「凄いね。多分これ考えた人は、鍛練してることがバレてはいけない立場の人だったんだろうね。だから、準備運動とみんなが思うようにしたんだと思うよ。とりあえず、相手の首を掴んでることを意識しながら、速度を上げてやってみて?」
「こうかな?」
「うーん。それじゃあ遅いね」
そうして、僕はナイファンチを速くする練習をした。
「じゃあ、やってみようか。マオがダイチに突きを入れるから、ダイチはマオの首を掴んでナイファンチの動きをやってみて?」
「はーい」
そのままやってみた。すると、見事にスルスルとマオの首を折る動きまでできた。
「いいね!」
「痛くないの?」
「かなり効いたよ。人間の技でここまで効いたのは久しぶりだね。ぐるぐるされて目も回る…」
「マオちゃん…大丈夫?私だったらそれ喰らうとやばいかも」
マリサさんもお墨付きの威力らしい。
「ダイチ、やったね!これはダイチの必殺技だよ!まさかもう必殺技を考え付くなんて凄い事だよ!」
「そうかな?あんまり自覚ないや」
「ダイチくんの成長速度は、アオイと同じくらいだね。いや、それ以上かもしれない。アオイってのはSランク冒険者に居るんだけど、実はまだ冒険者登録して半年なんだよ。ちなみに私は8年かかってるからね。」
そんなに早い人がいるんだ。って僕もそんな速度なの?ありえない
「はははは…」
僕はあまりにもびっくりしすぎて空笑いしかできなかった。頭の整理がつかなかった。
その夜、ミノタウロスと闘った。
蹴りも突きもばっちりと攻撃が入った。
また、ナイファンチはミノタウロスにも有効で一気に倒すことができた。
そのまま、今日のトレーニングは終わった
ナイファンチとは、空手の型の一つです。
昔は、空手を始めたら一番最初に教わる型でした(今は、ピンアンって型を教わります)。
ナイファンチは、他の空手の型と比べて異質で解釈が難しく準備運動だと認識されている場合もあります。
しかし、空手家の中には「空手はナイファンチに始まりナイファンチに終わる」と言う人も居ます。
曰く、空手の熟練度はナイファンチを見ればわかるみたいです。
また、筆者のナイファンチの解釈は筆者のオリジナルではありません。あまり、メジャーではない解釈です。これは、空手をスポーツとして認識しているからです。したがって、掴む行為は反則です。顔面に膝蹴りも反則です。なので、この解釈はあまり受け入れられまそん。しかし、実戦においては、この反則技こそが最強なのです。生死を賭けた闘いに反則だー。なんて言ってられないですからね。
今回は、このような解釈を使わせていただいたのですが、他にも色々な解釈があるので興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。




