月光拳
日が落ち月が出てきた頃に、それははじまった。
ちょうど、甲板の上で月がよくでていた。
「こういうのはシチュエーションが大事ですからね。今日は満月で雲も出ていません。絶好の機会です。」
「月光拳ってこういう日じゃないと使えないのですか?」
ダイチが聞いた。
「いいえ。いつでも使えます。ただ、雰囲気を出すためです。ダイチさん、あの海に浮かぶ月が見えますか?」
「はい。見えます。」
「あの月は触れる?」
「あれは、月の光が水に反射しているだけで触れません。」
「そうですね。あれは、月を映し出しているだけであって月ではなく海水です。これは、目の錯覚という現象です。」
「うーん。よくわからないです。」
「そうですね。実際とは違ったように見える現象を目の錯覚といいます。」
「なるほど。わかりました。」
「では、続けます。月というのは自分で光ってません。」
「えっ?そうなの?」
「はい。月の光は太陽の光が反射して光っているように見えています。」
「つまり、太陽の光が月に反射してその光が水面に反射して水に月が浮かんでいるように見えるってことですか?」
「そうです。飲み込みが早いですね。助かります。」
うっ……マオにはよくわからなかった。
「ダイチさん。貴方にはミスズ様の力で周りに霧を発生させる力を取得するようにと言ってきました。できますか?」
「はい。女神様のいいつけ通りその技はすでに出来るようにしておきました。僕の身体の一部のみを水に変えるので『明鏡止水』よりも持続時間が長くていいです。霧を発生させて相手の目眩ましをする技ですよね?『五里霧中』」
ダイチは辺りに霧を発生させた。
「普通に霧を発生させたらそうだね。それをコントロールすると光をコントロールできるのよ。やってみて。とりあえず、自分の身体の周り数センチの所を覆ってみて。」
ダイチは霧を動かした。
「うっ、難しいですね。」
「慣れる迄は難しいね。」
「これが、レイス対策になるんですか?」
「そうね。光ってのは水の中では屈折という現象が起きるのよ。それを利用して君の居場所を偽る事ができる。それに、レイスって雷属性でしょ?霧を上手く動かせば雷の軌道も誘導できるわ。間違えたら、全体がビリビリだけどね。」
「それが、『月光拳』ですか?」
「『月光拳』は、霧の力で自身の認識を恣意的に狂わせ、相手に攻撃のタイミング等を悟らせない技よ。以前、水魔法が得意な冒険者を育てていた時に開発した技よ。ダイチさんは、ミスズ様との契約者なのでこの技と相性がいいのよ。」
女神様の実績経験は凄まじい。過去に育てた色々な冒険者の実績から今のダイチに合った技を提供してくれる。
「そうなんですね。ありがとうございます。」
「ダイチさんは、明日迄にある程度霧をコントロールするようにできる?」
「頑張ってみます!」
ダイチはその後も自主練をしていた。
次の日にはダイチは自信の周り数センチの所に移動させることができていた。
「ダイチさんいいですね。ちょっとまだフラフラとしていますがいいわ。では、その状態でマオさんと組手をして。」
「わかりました。」
ダイチと組手をした。なんか、少し闘い辛かった。少しだけダイチの場所がズレている感じがして……
また、ダイチは霧を維持するのに何度か失敗していた。闘いながらこコントロールが難しいみたいだ。
しかし、それも何度か繰り返していたらダイチは慣れてきていた。
「うん。いいわね。あとは、霧の範囲や濃度色々と変えてみて試してみて。貴方の見えかたが変わってくるから。」
ダイチが大きくなったり、小さくなったり移動したり色々な違いがあった。ダイチが霧の状態を変更してマオがどのように変わったかを言った。それを何日間か繰り返した。
数日後、調べた結果を踏まえてもう一度組手を行った。
ダイチの魔力の流れを見るとどこにいるのかわかるけど、目視ではなかなかダイチを捉える事ができなかった。
「これが、『月光拳』よ。よくぞ、ヒルコ大陸に着く前に修得できたわね。ダイチさんおめでとう。これで、あのレイスにも対抗できるわ。もう、しばらくするとヒルコ大陸に着くわ。準備しておいて。」
そう。マオ達はこれからヒルコ大陸に着く。どんな光景が広がっているのか楽しみだ。
第4章完
第4章終わりました。
まだ4章続けたかったのですが、これから先まだまだ長くなりそうだったので一度切らせていただきます。




