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私は文芸部に入りたい④

 私は体育館を出た後、若槻先生に言われた通りに図書準備室を目指した。図書準備室ということは図書室の近くにあるのだろう。


 図書室なら今日の校内探検というどうでもいい行事で紹介されたので場所だけは覚えている。ここから図書室まではなかなか距離がある。


 私はゆっくりと図書室まで歩いた。図書室がある階まで階段を上り、角を曲がると宏くんと誰かが一緒に図書準備室に入るのが見えた。


 私はゆっくりだった足取りを早め、図書準備室の前まで行った。


 ここが文芸部の部室。けど、どうして宏くんかこの部屋に入って行ったんだろう?


 私は疑問を抱えながら、図書準備室の扉を三回叩いた。


「どうぞ」


 中から声が聞こえて来た。この声は宏くんだ。


「失礼します。一年二組の三井栞里です。文芸部の見学に来ました」


 部屋の中には驚いた顔をした宏くんと矢島さんがいた。


 私はここで一つの疑問が解けた。


 一緒に宏くんといたのは矢島さんだったのか……


「ま、まあ、見学していってよ、三井さん……」


「ありがとうございます矢島さん」


 矢島さんの顔には少し渋い表情が浮かんでいる。


「三井さんはなんで見学しに来たの?」


 見学する理由なんて一つに決まっているだろう。どうしてそんなことを矢島さんはいちいち聞いてくるのだろうか。


「入ろうと思っているからです」


「「え?」」


 宏くんと矢島さんは明らかに驚いている。


「三井さん、文芸部って''インキャ''の巣窟だし私と宏樹しかいないから入らない方がいいと思うけどなぁ……」


 矢島さんには私が入部すると不都合か生じるのだろうか?


 私はこのまま押し切ってみることにした。


「私''インキャ''ですし、人数は気にしないので関係ありませんね?」


「け、けどそれじゃあ……」


 やはり矢島さんには何かしらあるのだろう。


「なあ、栞里」


 今度は宏くんが話しかけて来た。宏くんと話すのはいつぶりだろうか。あの日以来だろうか?私は思わず表情が崩れてしまった。


「なに?宏くん?」


「栞里は昔から運動が得意なんだからテニス部とかバスケ部に入ったら?」


 宏くんはわけのわからないことを口にした。私は昔から運動ができない。なのに得意とはどういう意味だろうか。


「私、運動音痴よ」


「じ、じゃあ吹奏楽部とか……?」


 私は昔から音痴だ。今まで口パクしかしたことがない。さっきからなにを言っているのだろう。もしかして宏くんはもう忘れたとか……


「私、音痴よ。宏くんはそんなことも忘れたの?」


 私はしまったと思った。意図せず口調が強くなってしまったからである。


「あ……、そうだったな……。じ、じゃあマネージャーとかは?栞里は昔から人に尽くす性格だったろ?」


 やっぱり忘れたのかな?私はだんだんと苛立って来てしまった。


「私、他人に尽くしたことなんて一回もないわよ」


 宏くんの顔には焦りの表情が浮かんできている。


 もしかして宏くんと矢島さんは結託して私を入れないようとしているのではないだろうか。


「宏くん。そこまでして私を入れたくない理由があるの?」


 私は宏くんに聞いた。なにか重要なことがあるのなら私はここで引くべきだと考えたからだ。


「こ、ここはお、俺とや、矢島の、ああ……」


「あ?」


「愛の巣だぁ!!」


「「えぇぇぇぇぇ」」


 愛の巣?ってことは宏くんと矢島さんの関係って……


 諦めるのはまだ早い。宏くんの考えている意味とは違う可能性もある。あるはず……


「宏くん、あ、愛の巣ってど、どういう意味……?」


「そのままの意味だ。だ、だから誰も入れることはできない……」


 っ。私はなぜだか恥ずかしくなりこの部屋から出て行きたい気持ちになった。


「き、今日はも、、もう帰るわ……」


 私は鞄を手に取り、扉を開けた。


 扉の近くに誰かスーツを着た人がいたがそんなことを気にしてる場合ではない。私はその人とは反対の方向に走り出した。


 気づくと家の近くまで私は走っていた。


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