私は文芸部に入りたい②
「二組のクラス委員は西谷君と矢島さんに決まりましたー。今日はもう終わりでーす。皆さん、気をつけて下校してくださーい」
若槻先生がそう言うとクラスのみんなは帰らずにまわりの人同士で喋り出した。
「三井さん、また同じクラスになったね。三井さんもこの高校だとは思ってもなかったよ」
河原さんが後ろから私に話しかけてきた。河原さんとは小学校の時から同じ学校に通っている。嫌でも名前を覚えてしまう。
「私がこの高校に来て、あなたに不都合でも?」
私はいつもこのように、あしらっているが河原さんは話しかけてくる。
「そんなんじゃ、宏樹から嫌われちゃうよー」
もう嫌われてるんだけど……
「べ、べつに嫌われても、い、いいですけど!」
「また強がっちゃって。せっかく同じクラスになれたんだから話しかけてきたら?」
河原さんは私の背中を宏くんの方に向かって、ぐいぐいと押してきた。
「じゃあ私は帰るから、頑張ってね」
河原さんは右手で握り拳をつくってガッツポーズをしてきた。
そんな簡単に話しかけることができるなら私も苦労なんかしてないのに……
河原さんは自分の席に戻り、鞄の中身を整理している。
目線を宏くんの方に写すと、中野君と話している。
あ、中野君が河原さんの方に行った。宏くんはこれからどうするのかな?
一人で帰るなら、話しかけてみようかな……
そんなことを考えながら宏くんのことを見ていると、横の席の女子が宏くんに話しかけた。
なんで名前なんだろう。聞いてなくて損したな。
それにしても見た目が……ギャルっぽいのは苦手だなぁ
私は宏くんに気付かれないように近くに寄り、盗み聞きした。
「西谷君に相談したいことがあるんだけど、ちょっとだけ時間もらえるかな?」
相談って初対面の人にするのかな?
「ごめん永岡さん。先約があるから明日でもいいかな?」
永岡さんっていう名前なのか……聞いたことないな。
「私こそ、ごめんね西谷君の予定も気にせずに聞いちゃって」
「そんなことないよ。これからも隣の席同士、気軽に話しかけてくれると嬉しいな」
なんかナンパみたいなことしてる……
「あ、ありがとう。じゃあ明日からよ、よろしくな!」
''よろしくな!''って急にどうしたんだろう?
永岡さんは走って教室を出て行ってしまった。宏くんの顔を見ると困惑しているようにみえる。
宏くんはこれから用事があるのか……今日は一人で帰ろうかな
私は教室を出て、下駄箱に向かった。
下駄箱についた時、廊下の先を見ると宏くんが校長室に入るのが見えた。
用事って校長先生からに会いに行くことだったんだ。
私はそれを確認して、校舎を出た。空はまだ明るく、雲ひとつない晴天だ。
校庭には満開となった桜がある。風に乗った、たくさん花びらが私の方に飛んでくる。
私はその花びらをも気にせずに、家に向かう。学校を出て少し経つと、桜の木が一つある公園が見えてきた。
「昔、宏くんと二人でお花見したっけ。今からでもあの時に戻れるかな」
私は思わず呟いてしまう。
「あの時、変な意地で断ってなかったら、今日も一緒に帰ってたのかな?」
まず私から話しかけなければならない。話す為には何かきっかけが必要だ。
共通の話題は……''ラブコメ''?まだ宏くんって''ラブコメ''読んでるのかな?
決めた。明日こそは話しかけてみよう。
私は軽い足取りで家に帰った。
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