私は文芸部に入りたい
急に栞里視点になってすみません<(_ _)>
入学式が終わって、自己紹介の時間となったが担任の先生が教室に来ない。
その時教室前方にある扉が開いた。
「皆さーん。自分の席を確認して座ってくださいねー」
見た目は小学生くらいの女の子がそう言いながら入ってきた。
「おーいみんなー。女の子が入って来たけど、だれかの妹なんじゃないか?」
扉付近にいた男子はいそう言うが誰かの妹などではない。
この声は担任の若月先生だ。入学式の時に私たちの名前を呼んでいたから、考えればわかるだろう。
「私は妹ですが、この教室に姉はいません!姉は今アメリカにいます!」
そこは普通に二組の担任っていえばいいのでは?そうすればわかりやすいのにどうしてそんなどうでもいい事を言うのだろう。
「あー、三姉妹ね。じゃあ二人目のお姉ちゃんはどこにいるのか教えてくれないかな?」
どこかの、なぞなぞみたいなことになってる。この男子冴えてるのかな?
「私に姉は一人しかいませんよ。そんなことより皆さん早く席に座ってください!」
だから担任って言えばいいのに……。もう私が言うしかないのかな……。
そう考えていると後ろから声が聞こえた。
「もしかして若月先生ですか?」
声の主は宏くんだった。
「「「「「そんなわけないだろ」」」」」」
さすが宏くん。私が困っているといつも助けてくれる。以心伝心ってやつかな?今回は困ってないけど。
みんなは宏くんのことを笑っているが間違っているのはみんなの方だ。
「そうですよ。私がこのクラスの担任、若月小春です。早く席に座ってください!」
最初からそう言えばよかったのに……。
「「「「「「え!?」」」」」
私はみんなが驚いているのを見ながら椅子に座った。黒板には座席表が貼ってあるが誰も気付いておらず、既に見ているのは私だけだ。
残念ながら宏くんとは席が遠いが席替えはすぐにあるだろう。
「お、遅れてすみません!ちょっと迷ってしまって」
さっき若月先生が入ってきた扉から、ガラガラと大きな音が鳴った。入ってきたのは矢島さんだった。
「まだ大丈夫ですよー。自分の席を確認して座ってくださいね」
「は、はい。すみません」
矢島さんは座席表を見に行ったあと、私の目の前を通り過ぎて、宏くんの席がある方に歩いていった。
私の近くの席でなくてよかった。
中学生のとき、矢島さんと一度だけ隣同士の席にななったことがある。
その時は、毎休み時間ごとに話しかけてきて、本が読みたいのに読めなかった。授業中には教えてだのなんだので散々だった。
目で追うと、矢島さんは宏くんと話している。話が終わったかと思うと宏くんの左の席に座った。
宏くんの隣が矢島さんとは……。是非とも入れ替わって欲しい。そうすれば話すきっかけを作ることもできる。
「皆さーん。静かにしてくださーい」
若月先生のその声でちらほら立っていた人も座り、全員が着席している状態となった。
「今から自己紹介をしていきまーす。では出席番号一番の安藤くんからどうぞ」
自己紹介が始まり、私は自己紹介の傾向を見ることにした。
私が言うべきことは名前、出身校、入りたい部活の三点だ。一人だけ例外がいたが他の人はこの三点だ。もちろん宏くんがこの三点だったって事もある。
「三井栞里です。第一中学校からきました。まだ部活は決めていません。よろしくお願いします」
私がそういうと、当たり前のように拍手が起きた。その後は特に目立った人はいなかった。
「それでは一通り自己紹介が終わりましたが下校する前に、二組のクラス委員を男女一人づつ決めないといけませーん。やりたい人は挙手してくださーい」
私には関係ない話だ。今まで一回も目立つような役をやることはしなかった。宏くんがやるなら私もやっていたけど、宏くんもそういう柄ではなかった。
クラス内に沈黙が広がった。男子生徒はまだ誰も手を挙げていない。十秒ほど経ったあと、後ろから声が聞こえた。
「ぼく、やります」
何度も聞いてきた声。声変わりする前も後も聞いたことのある声。挙手したのは宏くんだった。
私は後ろの方に座っている宏くんを凝視してしまった。私以外にも宏くんのことを見ていたと思う。
宏くんは小学校も中学校もこういう目立つ役はやらなかったのに急にどうしたのだろう。
宏くんも変わったのだろうか。私が知っている西谷宏樹から、私の知らないうちに前に進んでしまったのだろうか。
「男子は西谷君でいいですか?他にやりたい人がいないなら西谷君にしますよー」
他に手を挙げる生徒はいなかった。
「では西谷君お願いします。はいみんな拍手ー!」
数秒たった後、ちらほらと拍手の音が聞こえてきたので私も便乗して小さな拍手をした。
私も女子のクラス委員になれば話ができるチャンスだ。だけど私なんかがクラス委員をやってもいいのだろうか。こういう役は矢島さんのような人がやるべきではないのか。頭の中で色々考えていると、時が思っていたほど流れていた。
「男子は決まりましたが、女子でやりたい人はいますかー」
私はここで手を挙げてもいいのだろうか。まだ迷っていると、また後ろの方から声が聞こえたので振り返った。
「じゃあ、私やります!」
手を挙げているのは宏くんの横の席の矢島さんだ。
やっぱり、私なんかがするべきじゃないんだ。矢島さんみたいな明るい人がするべき役なんだ。
きっと、今の宏くんの横に立つべき人も……
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