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パンを食べながら曲がり角でぶつかる事なんてあるわけがない!!

 "ラブコメでよくある出来事を体験したことはありますか?"


 と問われれば俺はノーと答える。


 例えば、朝急いでいる時食パンをかじりながら走っていると、曲がり角で女の子と衝突とか?


 そんな事あるわけがない!食パンかじりながら歩いたことすらない。


 昔、引っ越してしまった幼馴染みと高校生になった途端、再開するとか?


 そんな事あるわけがない!そんな都合よく世の中はまわっていない。


 まだ小さな子どもの時に、許嫁の約束をしたとか?


 そんな事あるわけがない!許嫁なんていつの話だ。時代劇なのか?


 再婚した親の連れ子がクラスメイトだったりとか?


 そんな事あるわけがない!連れ子がクラスメイトなんて、どんな確率だ。


 帰り道に美少女が一人で道端に座っていて、そこから同居が始まるとか?


 そんな事あるわけない!普通に犯罪だ。


 言語道断!こんなことありえないに決まっている。


 あったとしても国内では一握りの人間だけ。だから俺はラブコメが嫌いだ。それが俺のモットー。


 そんなラブコメが大嫌いな俺こと西谷宏樹にしたにひろきは今日から高校生となる。身長は中の中の下で、高くもなく低過ぎることもない。決してイケメンではなく、運動もできない。勉強は少しできる方だ。あとインキャではないと思っている。


 インキャでないならヨウキャかと問われれば困るが、インキャではないと思っている。何故思っている、なのかというと主観的と客観的では全然違うと言うことを身を持って体験したことがあるからだ。


 その体験のせいで、俺はラブコメをまったく見なくなった。嫌いとなった。さらには自分に自信が持てなくなった。


 今では、トラウマ的存在として自分のどこかにある。


「おーい。なにぼーっとしてんだよ。もうちょっとで順番回ってくるぞ」


 今、注意を促してきたのは俺の右側に座っている中野創也なかのそうや。小学校の時からの仲で、いつも一緒にいる。背が高く、筋肉質で運動はできるかわりに勉強はできない。正直なんでこの学校に入れたのかわからない。


 今年度から俺たちは高校一年生となった。今は入学式の最中で、ただ話を聞くだけだと思っていたが違ったらしい。


 担任に名前を呼ばれた後、起立して壇上にいる校長に一礼をしないといけない。


「ちょっと頭の中で自己紹介してたわ」


「どういうことだよ。やべ、つぎ俺じゃん」


「中野創也!」


 今気づいたが俺たちの担任、若月先生はめちゃくちゃ若い女の人っぽい。席の位置的に姿は見えないが、声は勿論聞こえる。声的に若い女の人というより小学生みたいな声だ。若月先生の容姿がとても気になる。


「はい!」


 創也は椅子から立ち上がり、校長に向かって礼をする。


「西谷宏樹!」


 俺の名前が呼ばれたと同時に創也は椅子に座った。

 次の人の名前が呼ばれたら、座るシステムのようだ。


「はい!」


 俺も創也同様、椅子から立ち上がり、壇上にいる校長に向かって一礼をする。


 壇上にいる校長の顔をよく見ると、少し笑っている気がする。


 俺も思わず笑ってしまった。校長は俺の叔父さんだった。


 その後はただ話を聞くだけで終わった。入学式の後はそれぞれの教室で自己紹介をするらしく、体育館から移動となった。


「二組に同じ中学だった奴っている?」


「男子は俺とお前だけだけど、女子は香夜と矢島と三井さんがいるぞ」


「よくお前受かったよな。河原さんのおかげだな。愛の力ってやつか」


「そ、そんなんじゃねーよ。まだ付き合ったりしてないし」


「まだ?まだって事はそろそろ付き合うのか?」


「う、うるせぇよ。けど一年以上、勉強教えてもらってたからな」


 創也と河原香夜かわはらかやさんは、家が隣どうしで昔からよく一緒にいたらしい。河原さんからここの高校に一緒に入ろうといわれたらしく、中学二年の頃から永岡さんに勉強を教わり始めていた。


「まさか三井さんまでいるとは思ってなかったわ。テスト毎回一位だったからもっと偏差値が高い高校行くと思ってたのに」


「そうだよな。俺も栞里ならもっと良い高校行くと思ってたよ」


「さすがは幼馴染。幼馴染の三井さんにだけは評価が高いんだな」


 三井栞里みついしおり。黒いろの艶がある長い髪がすらっとした見た目と白い肌を引き立たせ、長い睫毛に大きな目。身長は160㎝弱で頭が良いいことに加え、容姿が整っている。まさに才色兼備。なんといっても小さい頃から可愛い。というより美しい。しかしあまり人と関わることが得意ではなく、小中学校では本をよく読んでいた。


 栞里は俺の家の隣の隣に住んでおり、保育園に入る前から知り合いだった。小学校、中学校と時を同じくして過ごしたが、俺は中学二年の時に栞里に告白をした。結果はみごとに惨敗。「宏くんからの告白は受けられないの」そう言われた。


 それ以降は関わることをやめ、栞里が行かなさそうな高校に進学することにした。だが高校生となった今、何故か同じクラスにいる。


「西谷くん。ちょっといいかな。」


 後ろから聞き覚えがある声が聞こえてきたので、振り返ると校長、つまり伯父さんがいた。


「あ、栄輔伯父さん。」


「学校では栄輔伯父さんじゃなくて、校長先生と呼んでね。あくまでも公の場だから。二人の時ならいいけど」


「あ、じゃあ校長先生。何か用でも?」


「ちょっと校長室まで来てくれるかな。自己紹介の時間までには間に合わせるから」


「お前いきなりやらかしたのか?てか伯父さんって呼んでるってことは親戚なんだな」


「なんもしてねーよ。ちょっと行ってくる」


「わかった。中学の時みたいに教室間違えるなよ。お前ドジだから」


「はい、はい。気をつけるよ」


 そう言って、俺と伯父さんは校長室に向かった。周りからの視線が沢山集まり、少し怖かったというのは内緒。


 ⭐︎


「栄輔伯父さんが校長だなんて知らなかったよ」


「今年からこの学校に来てね。宏樹が入ることは知ってたけど内緒にしてたんだ」


 西谷栄輔にしたにえいすけ。俺の父親の弟であり、この学校の校長でもある。親戚の中では最も縁があり、一ヶ月に一回以上のペースで会っている。


「なんで校長室まで連れて来たの?」


「時間がないから単刀直入に言うよ」


「うん」


「簡単な話だけど、二組のクラス委員になってくれない?自己紹介の後に、クラス委員だけを決める時間があるからその時に立候補するだけでいいんだよ」


「俺がやるかどうかは置いといたとして、クラス委員になれる保証なんてないだろ?だれか立候補するかもしれないし」


「その心配はないよ。二組の男子生徒は誰一人と立候補しない。女子は誰になるかわからないけどね」


「俺なんかがクラス委員なんて務まるわけがないよ。創也みたいな奴の方が適役だよ」


「勿論ただでやれというわけじゃないよ。宏樹はあの大学を狙ってるって、亜耶さんから聞いたよ」


「母さんが話したのか」


「それで、今年から推薦枠を貰ったんだけど、色々と条件があるんだよ」


 俺は思わず聞いてしまう。クラス委員はやりたくないが、あの大学が関係することなら喉から手が出るほど聞きたい話だ。


「条件っていうのは?」


「勿論、勉強面のこともあるけど、宏樹ならなんとかなる。一番重要なのが、三年間の内最低でも二年はクラス委員をやるっていう条件があるんだ」


 普通の高校ならば三年生でもクラス委員が存在すると思うが、この高校に関しては例外で、クラス委員が存在するのは二年生まである。つまり三年間のうち二年ではなく、二年間のうち二年ということとなる。


「一年生でやらないとチャンスはなくなるってことか」


「そうなるね。だからこれはお願いというより、助言に近いかな。さっきも言ったけど、二組にはクラス委員に立候補する男子生徒は絶対にいない。出来レースと同じだよ」


「栄輔伯父さん、それは本当なんだよな?」


「ああ、本当だよ。それとクラス委員になったら、帰る前にもう一度ここに来てくれるかな」


「わかった。なれたら来るよ」


「待ってるからね、宏樹くん。」


 俺は校長室を出て、一年二組の教室に向かった


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