96話 復活
最終章開幕です!
ドレアムとの戦いには勝てたものの、最後の封印の石碑は破壊されて、ハーディーンが復活してしまった。
ドレアムをも上回る力は、北大陸へと飛んでいく。
その黒色の光を見つめながら、自分の失態を責めた。
ここまでハーディーンを復活させないようにやってきたのに。
俺が気づかなかったから……俺のせいだ……。
俺は、大バカヤローだ。
「いい絶望の表情をするじゃないか。
貴様の考えている事は分かるぞ? 今までこれを阻止するために、必死に力を鍛えてきたのに……か?
それは、大変だったなぁ。だが、俺が貴様の頑張りを認めてやろう。
今日まで無駄な努力、ご苦労だった。
それに、頑張った者には、褒美をやらんといけないだろうから、今日までの貴様の無礼は許してやる。
神の復活で俺は機嫌がいいからな……クックック」
俺を嘲笑い、ドレアムは空間に転移魔法の黒い渦を造りだした。
「さて。貴様の悔しがる表情も見れたし、俺はここで失礼させてもらおう。流石にこの体では、何も出来ん。だが、帰って神に貰った力で、復活すれば――――」
「……それは、させない。お前は……ここで消えろ」
ドレアムの体に右腕を当て、この世からの存在の消滅をイメージした。
ユーリから、ドレアムはハーディーンに力を与えられて不死身の力を持つと聞いている。
だから、倒しても時間が経てば復活してしまう。
コイツを完全に倒すには、普通のやり方では駄目だと考えていた。
もう。
コイツには、何もやらせない。やらせちゃいけない。
もうこれ以上は何も。
もう二度と復活できないように、細胞レベルで消滅させてやる。
スキルを発動していくと、ドレアムの体が少しずつ溶けて霧散していく。
「……なにっ! バカな! バカな! バカなー! 俺の体が……消えていくだと……?
神から頂いた力が、作用していない……。
そんな……バカな……そんな……そんな……そんなーー!!
そんな……事は……ありえないーー!! ぎぃあああああああああぁぁーー!!」
断末魔の叫び声をあげて、ドレアムは完全に消滅した。
「…………」
これで、強大な敵を一人倒せた。
倒せたけど……。
俺は……。
「クソオオオオー! 何で気づかなかった! 何で阻止出来なかった! こうさせない為に、ここまでやって来たんだろうが!!」
自分の愚かさに嫌気がさす。
「だけど……ハーディーンが復活したなら次の手をうたないといけない。ユグドラシルの異変を解消して、守りを固めないとハーディーンが、来てしまう。……それから皆にも連絡を取って……そうだ。ユーリにも伝えないと」
(ユーリ。ユーリ起きてくれ)
深層に眠るユーリに、呼び掛けた。
【……ああ、起きた……】
(……ごめん。ドレアムは倒せたけど……ハーディーンが復活してしまった)
【……この魔力は……そうみたいだな。……こうなったら、奴をぶっ倒すしかない】
(ああ。その為に、向き合いの滝も乗り越えたんだ。やってみせる)
【奴も完全に力を取り戻すまで、まだ数日はかかるはずだ。その間に暗黒大陸に乗り込める準備を進めろ】
(分かったよ。これからアーロンさん達にも連絡をして、全世界に伝えてもらう)
【タクト。これからが、本当の戦いだぞ。ドレアムは前哨戦に過ぎない。ハーディーンはドレアムよりもずっと強い】
(石碑から解放された魔力はとんでもなかった。厳しい戦いになると思うけど、気を引き締めて全力で戦う)
【ああ。頑張れ。…………俺も覚悟を決めないとな……】
ユーリが最後に何か言ってけど、聞き取れなかった。
よし。
ユーリと話して、幾分か気持ちが落ち着いた。
いつまでも、へこんでられない。
今は動かないと。
まずは、アルフィンと、シズク、ナエに念話を送った。
《皆……タクトだ。聞こえるか?》
《あ、タクトさん……》
《お兄ちゃんなの》
二人とは繋がったけど。
シズクは、応答なしか。何かあったのかな。
《皆……ごめん。俺の落ち度で、ハーディーンが復活してしまった》
《いえ。悪いのは、御父様達の異変に気付けなかったわたくしです。ご様子がおかしかったのに、近くを離れてしまいました。
申し訳ありません。タクトさんにこの場を任せて頂いたのに、御父様達の洗脳に気づけませんでした……》
《いや。アルフィンは、悪くない。……とにかく今は動くのが先決だと思う。ハーディーンを迎え撃つ為に、聖樹教会の護りを固めないといけない》
《はい。それで、先程シズクから連絡がありました。
聖樹教会とシャトヤーン様を、トランスヴァールの戦士隊が占領していると。おそらくそれが原因で、ユグドラシルに異変が起きていると。怪我人もたくさんおり、その治癒にこれから向かおうと思っていた所でした》
《聖樹教会とシャトヤーン様が。それはドレアムに洗脳された人達だと思う。無効化すれば洗脳は解けると思うけど……先ずは、とにかく皆ユグドラシルで集合しよう》
《分かりました。レスターに状況の説明と指示を出して、ナエちゃんと向かいます》
《頼む》
二人に要件を伝えて念話を終えた。
「……今は、やるべきことをしないと。向かいながらアーロンさんにも連絡して、それからシャトヤーンさんを助けだして」
焦る気持ちを抱えながら、聖樹教会へ向かった。
タクトside
out
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