94話 一つの決着②
よろしくお願いします!
ナエside
「えーい!! ジャギ何かに負けないの! 氷リューちゃん!」
「なんだよ! 生意気だなぁ! ボルケーノ・イクリプス!」
二つの特級魔法がぶつかった。
あたしは氷属性の魔法で、ジャギは炎属性の魔法を使ってそれがぶつかって溶けて、シャワーみたいに「ザーッ」と降ってきた。
戦い始めて何度も、何度も魔法を撃ち合っているけど決着がつかないの。
「ジャギ。いい加減しつこいの! えーい!」
「なんだよ? そう言うチビだってしつこいじゃんか! これでどう?」
また、同じタイミングで魔法がぶつける。
だけど、お互いの魔法を消すだけだったの。
「チビ。この前よりも魔法使うの上手くなったじゃん? その装備が関係してるわけ?」
「そうなの。アーロンおじいちゃんにもらったんだよ。あたしの魔力操作をサポートしてくれるの」
「へえ~あのじいさんからね。まぁ、その装備もあってあのじいさんよりも、魔法扱う実力は上になったみたいだし良かったじゃん。それでも僕の方が強いのは変わらないんだけどね」
ジャギは、そんなの関係ないと自信満々にそう言った。
「そんなのやってみないと分からないの。それと、ジャギに聞いてみたい事があるの」
「なにさ? チビを殺す前に答えてあげるよ」
「ジャギは何でこんな誰かを傷つけたりとか、するの? お父さんやお母さんとか、いっぱい殺されて悲しい思いする人もいっぱいいるんだよ?」
「なんだそんな事か。そんなの僕達がそうやって造られたからに決まってるじゃん。造られた時から人間達は、敵だって刷り込まれてるんだから。だから、こうやって殺してまわってるんだ」
ジャギはそんなの当たり前だ、みたいな顔をして言う。
「ジャギ達が何も悪いことしなかったら、あたし達は何もしないよ? 誰かを傷つけたりするから、こうやって戦わないといけなくなるの。悪いことしないで大人しくしてればいいの。暗黒大陸? に他の人達と」
「あはは! 甘いね。チビが思ってる事と、あのじいさんとかが思ってる事は違うのにさ。それに――」
そう言ってジャギは、両腕にたくさんの魔力を作っていく。
この魔力は、やばいの。
あたしも、収束スキルで急いで魔力を作る。
「僕は、人間が嫌いだからさ! もうチビとも戦うの飽きたし、僕もここで、終わりみたいだから。決着をつけようよ!」
ジャギは四つの特級魔法でも最強クラスの魔法を造り、撃とうとした。
「うーん!! たくさん溜めるの!」
あたしも、魔力をいっぱい作って大好きな動物さんの魔法をたくさん造った。
「エクスパルーション! エクスブロード! グラストバースト! カインフォレストー!」
「大炎熊! 大風猫! 氷リューちゃん! うーん! 大雷音!」
たくさんの魔法は、押し合いになった。
「ううう! やっぱりジャギは強いの! まだあたしよりも魔法を使うのは上手なの。 だけど――――アルフィンお姉ちゃんの為にも、絶対に負けられない。絶対にジャギに勝つんだから!」
収束スキルで、もっともっとたくさんの魔力を造り、集めていく。
「……くうっ。チビの魔法の威力が上がっていく……嘘だ! 僕よりも、強いなんて。認められるかー!」
ジャギも精一杯の魔力を籠める。
押しては、押されてで魔法の中心があたしと、ジャギの間をいったり来たりしている。
その押し合いに負けないように頑張っていると。
「あっ……ジャギの体が透けていくの……」
「……タイムリミットか……。やっぱりここだと、ハーディーン様の力は弱まってしまうんだね……しょうがないか。チビ残念だけど、僕はここまでみたいだよ。最期に勝てなかったのは凄い悔しいけど、まぁ面白かったよ」
「どういうことなの?」
あたしはジャギの言っている意味が分からなかった。
「教えてあーげない。ほら、さっさと僕を殺らないと、あの魔王の人。ドレアムに殺されちゃうよ?」
「それは、駄目なの。タクトお兄ちゃんは皆で護るんだから。だから……悲しいけどジャギさようならなの。もし人間に生まれてきたら今度は一緒に遊ぼうね」
「え~チビと一緒に? ……まぁ、絶対に無いけどそれもいいかもね」
あたしの魔法にのみ込まれ、最期にジャギは笑顔を浮かべて光になって消えた。
「……終わったの……終わったけど……何かモヤモヤする……」
あたしの勝ちで、戦いは終わったけど。
気持ちがスッキリとしないの。
だけど、のんびりしてられない。
困っている人達もいるから、どうするか考えないといけない。
ジャギとの戦いが終わって、お兄ちゃんとお姉ちゃん達の魔力反応を探した。
「タクトお兄ちゃんは……まだ戦ってるの。助けに行きたいけど、あたしだと足手まといになっちゃう。シズクお姉ちゃんは、移動しているみたい。アルフィンお姉ちゃんにどうすればいいか聞いてみるの」
念話カードを取り出して、アルフィンお姉ちゃんに連絡した。
ナエside
out
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アルフィンside
タクトさんが、ドレアムを殴り飛ばし城を出ていき、戦闘が始まったようだ。
二人のとてつもない魔力がぶつかりあっている。
タクトさんなら、必ず勝利をして下さるから大丈夫。
この場の事を任せてくれましたので、わたくしも自分に出来る事をしませんと。
「レスター。今すぐ怪我を治しますわ」
まず。傷付き倒れているレスターに治癒魔法をかけることから始めた。
「あ、アルフィン様。申し訳ありません。邪神軍を止められませんでした……。国に甚大な被害が出てしまい……」
「レスターあなたのせいではありません。今タクトさん達が街の魔物の掃討をしています。マードックにも民の避難を進めさせているので大丈夫です。――はい怪我も治りましましたよ」
治癒魔法で、欠損箇所を治した。
「ありがとうございます。これでまた、戦う事が出来ます」
「治ったばかりですから、無理はしないでくださいね。レスターは、隊の編成をして街の方々の避難を優先してください。場合によって臨機応変にお願いします。御父様の状態を観た後、わたくしも避難を手伝いますので」
「はっ! 了解しました! それでは」
レスターが顔を引き締め、直ぐに動き出す。
これで街の方は大丈夫ですね。レスターは優秀ですから、的確に対処してくれる筈です。
後は。
「御父様。アルフィンです。分かりますか?」
様子がおかしい御父様に話しかける。
外傷はなく、特に体には異変が無い。
と、すれば精神的なものかしら。
目が虚ろで、口が半開きになって涎を垂らしている御父様の肩を揺すり呼び掛ける。
何度か、肩を揺する内に目の焦点が合ってきた。
「御父様。分かりますか? アルフィンです」
「……うむ。アルフィンよくぞ戻ったな。元気そうで……何よりだ……」
「はい。トランスヴァールが襲撃されたと、お聞きして戻って参りました
「……そうか」
まだ少し様子がおかしいけど、話せているので大丈夫でしょう。
「御父様。まだ調子が優れないご様子ですので、お休みください。わたくしも一緒に行きます」
「……すまぬな。頼む……」
肩をお貸しして御父様を謁見の間の近くの、休憩室に連れていく。
途中で、近衛隊の生き残りの『グリーズ』を見つけた。
彼は怪我をしていたので、治癒魔法を使い治す。
「……アルフィン王女。ありがとう……ございます……」
「いえ。無事で良かったですわ。一緒にこの先の休憩室に行きましょう」
グリーズに御父様を背負ってもらって、休憩室まで運んでもらう。
「御父様。ここでお休みください。わたくしもお側に居りますので」
「……分かった……」
「……アルフィン王女。ここは、わたしにお任せください……。王女には、陛下に変わって陣頭指揮をお願いしたく……」
確かに。御父様が動けぬこの状況。
わたくしが、代理として動くべきですね。
「分かりました。それでは御父様を頼みますね」
「……はい。……お任せください……」
御父様のご様子が少しおかしい事など一抹の不安が残りますが、一人でも多くの人を救うために休憩室を後にした。
アルフィンside
out
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