93話 一つの決着①
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ドレアムが進化してパワーアップしたことで、戦いの激しさは増していった。
互いの拳と拳がぶつかり合えば、その衝撃で地形が変わり、拳の風圧で大きな岩は破壊され、蹴りを放てば地面に亀裂が入る。
このマギア・フロンティアで最強の一角を担う二人の戦いは、その一撃一撃が、一挙手一投足が街一つを吹き飛ばしかねない程の衝撃を生み出していた。
「うおおお!!」
「がああぁぁ!!」
今もまた、互いに殺すべき相手に力の限りの右拳を叩き込もうと降りかぶった。
「貴様は、生かしておけば神の障害になる。だからここで――」
魔力操作で、膨大な魔力を込めた拳が俺の顔面に飛んでくる。
「ここだな」
それを、黒との修業の時のように最善の動きをイメージし、その通りに体をなぞらえて避ける。
「――っ! なにっ!」
かわされるとは思っていなかったのか、ドレアムは驚愕の表情を浮かべる。
その拳に合わせるように、カウンターで鳩尾に拳打を叩き込む。
「ごふうっ! あがぁっ!」
「ビキビキ」とドレアムのあばら骨と、内臓にダメージが入る音が聞こえる。
激痛のあまり動きをとめたその顔に、風属性の特級魔法クラスの魔法を装填して殴りつけた。
「があぁぁーー!!」
魔法が炸裂して、ドレアムは前方に飛んでいく。
更にその体に。
「スタードライブ!!」
空から大量の光の球を、弾丸のように落とし撃ち込んでいく。
「ぐっ。まずい……」
ドレアムは、咄嗟に結界を張って身を守ろうとした。
何発かは防ぐ事ができたが、光属性最強の大魔法は一斉に標的へと飛んでいき。着弾した。
「ぐおあああああーー!」
苦痛の声と、「ズドドドドドドドッ」と魔法が撃ち込まれる轟音が戦場に響き渡り、大魔法が地面に当たり砂煙が巻き上がる。
砂煙がはれると、血を吹き出しながら倒れたドレアムの姿が見えた。傷だらけだけど、まだ魔力は衰えていない。
ステータスを確認すると、HPはまだ半分もあるから何発かは防がれたか。
その魔力操作からくる防御も流石だ。
「……ガハアッ!」
ドレアムの口からは、大量の吐血が出る。
体を少しふらつきながらも、立ち上がった。
「……ここまでの力とは……それに、俺の予想外の動きを……」
こちらをじっと見据え、何かを考え込む仕草をした。
「少しは、自分がやった事の重みが分かったか?」
「……この程度で貴様は勝ち誇る気か? 戦いは、まだこれからだというのに」
そう言って更に魔力を急速に高めていく。
この上がりかたは……あれを使う気か。
「果たしてこれは防げるか? はぁぁぁ!!」
やっぱり。
それなら、俺も。
「神級魔法か。もうそれだって、驚異にはならない。はぁぁぁ!!」
最強の魔法を撃つ為に必要な分の魔力を練り上げる。
「滅びるがいい! イクリプス・プロヴィデンス!」
「それは、お前だ! クラウプスユニバース!!」
二つの最強魔法がぶつかり合い、そのエネルギーは二人を包んだ。
タクトside
out
―――――――――――――――――――――――
シズクside
「やあぁぁぁーー!!」
アルフィン様の大切なトランスヴァールを襲撃した、四天王のゲラルドと私は戦っていた。
ナエちゃんの村も、トランスヴァールも襲いたくさんの人を殺し、あまつさえ二人に涙を流させたこの男を、私は絶対に許さない。
「クソッ! 俺様の体が……」
ゲラルドはその四肢の内の二本が、胴体から切り離されていた。
だが、依然としてその眼光の鋭さは落ちない。
小さな子供と、母親がこの男に襲われていた所を助け、戦いが始まった。
それからもう結構な時間が経つ。
私が駆けつけるまでに、街中にはたくさんの人達の死体があった。
そして、その返り血を浴びて真っ赤に染まるこの男に、天誅を与えようとその巨体を切りつけていた。
前回は、とどめを刺す所を逃げられましたが、今日こそ、その息の根をとめてみせます。
「あなた方は、どうしてこんな惨い事が出来るのですか? この国の人達も、ガルカリ村の人達だってあなたに殺される謂われはありません」
「ああ? 何だ? そんなくだらねぇ質問はよ。そんなの殺してぇからに決まってんじゃねぇか! お前ら人間を滅ぼすのが俺様達が造られた理由なんだ。だったらそれをやらねぇ理由はねぇよ! むん!! オアーー!!」
ゲラルドが叫ぶと、体の欠損が再生される。
進化はもうしている。
それ以外に、再生するなんて。
「まぁいいでしょう。また切りつけるだけです」
銀色に染まるエクソードアークを、上段に構え。
「聖破斬ー!!」
破魔の魔力を刀身に、溜めて振り下ろした。
「また、その技か!! うおおおーー!!」
駆け出しながら腕を交差して、斬撃を受け止めようとするも、再びその巨体を私の斬撃が、肩から腰にかけて切断した。
「……とどめです」
最期の瞬間を渡そうと構えると。
「うおおおーー!!」
またしてもたった今切り離した、体が再生される。
「……どういうことですか。なぜ再生を」
「気味悪いってか? 俺様が再生されるのががよ」
「あなたには、再生能力はないはずです。前回、戦った時にも使用していなかった」
「俺様の命を使ってるからな。どのみちここで終わりだしよ。最期は派手にいこうぜ! お前も最高の技でこいよ! うおおおああーー!!」
ゲラルドが、過去最高に力を解放した。
自身の命を使用して得た力。
勝負を挑まれたからには、私も剣士として絶対に負けられませんね。
「分かりました。はあぁぁぁー!!」
こちらもまた、破魔の力を最大まで高めていく。
「私の最高の一撃……受けなさい! 聖滅破斬!!」
最大限にまで高めた破魔の魔力の大きさは、刀身の長さを優に超え倍以上も大きくなる。
その魔力を刀に添えてエクソードアークを、振り下ろした。
「来たな! こりゃーすげー一撃だぜ! 俺様も最大だーー!!」
肉体に膨大な魔力を纏い斬撃に正面から体当たりをする。
普通であれば、体当たりなど無意味でその体を両断するのだが、この男は肉体を更に強化して、斬撃を受け止めた。
「……呆れますね。その身体能力強化の出鱈目さは」
「ぐおっ! まぁな! 俺様の肉体は、最高なんだ。うぐおあ! だけどよ……お前のその一撃も……大したもんだぜ」
斬撃を押しながらゆっくりと前へと進んでくる。
「その言葉は、素直に受け取っておきます。あなたに褒められても、嬉しくありませんが」
負けじと私も魔力を注ぎ破魔を強化する。
威力が増したことで、ゲラルドは斬撃を受け止めきれなくなっていく。
やがて、威力が最高値に到達した頃。
「けっ。いけ好かねぇ女だ。……だけどよ……楽しかったぜ……あばよ……」
更に威力を高めた斬撃は、体を真っ二つに両断してゲラルドは光の粒子になって完全に消失した。
光となって消えていくのを確認した後。
ふぅーー。
残心をして息を整えていく。
「ひとまず決着をつけられましたね。散々暴れて、被害は甚大ですが」
街中の悲惨な光景を見ていると、ユグドラシルの異変に気付いた。
「ユグドラシルの光が……消えている」
私が聖女付きの騎士だった時には、此のような事はなかった。
もしかしたら、シャトヤーン様に何かあったのかもしれない。
タクトさんは、ドレアムと戦っているから、念話をするのは邪魔になりますね。
街の方もリューガさんが、魔物を排除してくれていて、その数もあと少しまで来ています。
なので、そちらは大丈夫でしょう。
そうなれば、私が確認した方がいいでしょう。
ユグドラシルに何があったのかを。
私は、異変を探るために聖樹教会へと駆け出した。
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(*- -)(*_ _)ペコリ




