89話 襲撃
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医務室を出て、見透しの塔にいる竜王の元へ向かっていると、ちょうどシズクとナエが鍛練から戻ってくる所だった。
廊下の先から、二人一緒に歩いてくるのが見える。
「二人とも。鍛練お疲れ様」
「あ、タクトさん。お身体はもう大丈夫ですか?」
「ああ、もう大丈夫だよ。また心配かけたね」
「お兄ちゃん無理しちゃ駄目なの。お兄ちゃんが倒れた時に、お姉ちゃん達泣きそうになってたんだよ?」
「な、ナエちゃん! しー!!」
「そ、それは、黙っている約束ですっ」
「あ。言っちゃったの。ごめんなさいなの」
シズクがナエの口を押さえようとしたが間に合わなかった様だ。
ナエは、言っちまったよ。みたいな気まずい顔をしている。
やっぱり心配かけてたよな。
最近心配ばかりかけている気がする。
反省しないと。
「皆ありがとう。これからはあまり心配かけないように頑張るから」
「そうしていただけると助かります。タクトさんの身に何かあると、わたくし達は生きた心地がしませんので」
「アルフィン様の言うとおりです。もう無茶は控えてください」
「そうなの。お兄ちゃんがいなくなると寂しいんだから、メッ! なの」
三人から軽くお叱りを受ける。
だよなぁ。逆の立場だったら俺も心配でならない。
今後はなるべく気をつけよう。
「約束するよ。あと、これから竜王に会いに行こうと思ってたんだけど、二人も一緒に行こう」
四人で竜王の所へと、向かうことにした。
魔力を探ると、見透しの塔にいるみたいだから飛翔魔法で飛んでいこうと魔力を行使すると少し違和感を感じた。
あれ? 何か感覚がいつもと違うな。
魔力操作が安定しないというか、いつもどおりにコントロールしているんだけど、スピードが出過ぎてしまう。
「た、タクトさん……もう少し速度を抑えた方が」
「いつもよりもかなりの速度で、飛ばれています」
「リューちゃんよりも、ずっと速いの。でも、ちょっと怖いの」
三人から、飛ばし過ぎだと言われた。
空を飛んでいる竜王族も、猛スピードで飛んでいく俺を驚いた顔をして振り向いていく。
「ごめん。何か魔力操作がうまくいかないんだ。何だろう?」
少し飛んだら感覚を掴めたけど、これも向き合いの滝での修業の効果なんだろうか?
見透しの塔に到着して、天辺から内部に入り竜王の元へと移動する。
竜王は、三日前と同様の姿勢で横になっていた。
横にはリューガも一緒にいる。
「そろそろ来る頃だと思っていた。目が覚めたようだな」
「はい。修業が終わってから倒れてしまったので、来るのが遅くなりましたが、無事に終了しました」
竜王の奥底を見据える様な、視線というか感覚を感じる。
二秒程ゆっくりと確認でもしたのか見据えた後、続きを話し始めた。
「こうして、間近にすると分かるが、見違える様だな。
内在する強さも又、更に強大になっている。
それに、お主の体内にある魔力核も何倍も大きくなっている様だ」
魔力核。あまり聞いたことがない言葉だな。
「魔力核とは何なのですか?」
「魔力核とは体内にある魔力が内在する場所。
これはそれぞれに大きさは異なるが、お主はここに来たときには既に、大きさは尋常ではなかった。
向き合いの滝を乗り越えて、それが何倍にも大きくなっている。
ユーリ・ライゼ・トランスヴァールよりも、その大きさは巨大だ」
「それが大きいと、どうなるの?」
ナエが竜王に質問する。
「大きくなると、魔力総量が増えるのは勿論だが、扱える魔法のランクも上昇する。そのサイズならば神級魔法も安定して扱えるだろう」
向き合いの滝でも使用出来たのは、あの時には既に魔力核が大きくなっていたからなのか。
「今の世で扱えるのは、お主と、ドレアム、そしてハーディーンだけだろう。一度放てば世界すらも破壊しかねない程の魔法。
伝説級の魔法だ。向き合いの滝はお主を何倍にも成長させたようだ」
「途中で諦めてしまいそうにもなりましたが、乗り越えられたのは、彼女達のお陰です。その助けもあってもう一人の自分に勝つことができました」
「いずれせよ、よくぞ乗り越えた。やはり魔王の称号を持つ者は、強さだけではなく何か特別な因子があるのかもしれないな。
険しい試練を乗り越えたその力を世界の為に使ってもらいたい」
「その為にも、まずはやらなくてはいけない準備があります。この力をドレアムと、ハーディーンにお見舞いする為にも」
「うむ。三日前に話した通りに、我々もこの世界の安寧と平和の為に、協力は惜しまない。お主達のやるべき事が済み、準備が出来たらまた連絡してくれ。
存分に我々、竜王国の総力をハーディーンの根城に突撃をかける道標として振るわせてもらおう」
そういった竜王の魔力が高まっていく。
世界を脅かす敵として、ユグドラシルを狙う元凶として、ハーディーンを滅ぼすとの絶対的な決意が目に見える様だった。
「その時は、よろしくお願いします」
「任せるがよい。それと、リューガとバハムートがお主達に命を助けられたと聞いている。そのお礼として、リューガをお主達の旅に同行させよう。世界中を移動するお主達の力となろう」
「ありがとうございます。リューガの力は本当に助かります」
「やったの。リューちゃんも一緒なの」
竜王の横にいたリューガが前に出てきた。
「これから、またよろしく頼む」
俺達の旅の仲間として、リューガが加わった。
ここでやることも済ませ、竜王国を出発する前に、竜王にも念話カードを渡しておいた。
現在は、連合軍の本部があるルーデウス帝国へとリューガの背に乗り向かっていた。
俺は、この間にアーロンさんに状況の確認をと、連絡をとろうとしていると。
ヨーク公から連絡が入った。
《タクト君。聞こえているかい? タクト君》
《タクトです。ヨーク公どうされましたか?》
《ああ、良かった。やっと繋がったよ。助けて欲しい。四天王と、魔物の大群が北東大陸に突然現れた。奴等は真っ直ぐにバラガンまで、進軍している》
まずいな。今世界中から、各国の精鋭はルーデウスに集まっているはずだ。
四天王がいるのなら他の戦士達では相手にならない。
ヨーク公と話していると、アーロンさんから念話カードに連絡が入った。
ヨーク公にも聞こえる様に、繋げる。
《タクト、聞こえるか? こちらはアーロンだ》
《はい、タクトです。今ヨーク公から連絡が入り、バラガンに四天王と魔物が――》
《そうか。こちらもその連絡だ。今、クラウド、ラカン、バハムートがバラガンへと向かっている》
《おお、それは助かる。それまで何とか街の防衛に力を注ぐよ》
《バハムートの速度を生かして、一刻も早くバラガンへと移動している所だ。それまで、何とか耐えて欲しい。
しかし、まさかこのタイミングで奴等が動き出すとは。
暗黒大陸も、奴等の動向も監視していたが察知出来なかった》
何か動きがあれば、アーロンさん達が掴んでいたはず。
転移魔法か、何かで転送したのかもしれない。
《そういう状況なら、俺達もバラガンへ――――》
《魔王殿。聞こえるか? シーゲルだ》
今度はシーゲル陛下からも、このタイミングで連絡がきた。
同時にこのタイミングでの連絡。
何か嫌な予感がする。
《アーロンさん、ヨーク公。シーゲル陛下からも連絡が来たので繋げます》
胸のざわつきを抑えながら、シーゲル陛下からの連絡を全員が聞けるようにして出た。
《タクトです。シーゲル陛下どうされました――》
《……ドレアムと魔物の大群が突如として現れ…………トランスヴァールが襲撃された》
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