84話 竜王国
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ハーブ村を離れ、再び上空を移動していた。
今はまだ仕方がない事とはいえ、アイツらの出方次第な所は何とかしたいな。
受け身だと、どうしても対応が遅くなってしまう。
こちらから攻め込めればいいんだけど、今はまだ準備が出来ていない。
その為にこれからやらなくてはいけない事は、暗黒大陸へ行く前に決戦部隊を再編成する必要がある。
今まで世界中を移動して、各国と協力体制を築き、意志疎通してきた。
あとは、竜王に会えば全ての国とパイプを作れたことになる。
それらが終われば、連合軍と詳細な作戦を決めればだいたいの準備は終わる。
移動手段として、ワープの石盤を各大陸に設置するのも、概ね完了している。
現状、あと竜王国と暗黒大陸に設置すれば全ての大陸が繋がるからそれを利用して、暗黒大陸に部隊を送り込みハーディーンの所へ乗り込めればと考えていた。
「見えたぞ。あれが竜王国だ」
リューガの声で一旦思考を停止して前方を見る。
「これは凄いな……」
目の前に広がる雄大な景色に思わず感嘆の声がもれた。
二百メートル以上はありそうな巨大な樹木が、遥か彼方まで樹海として広がっており、半端ない太さの幹の上に大きな建物が建てられている。それらがたくさん集まり街の様相を醸し出していた。
見た感じ材料は材木がメインみたいだけど、特殊な素材も使われていて耐久性もありそうだ。
ここら一帯の空気というか、流れてる風も、何か神聖な物を感じる。
そして、この領域全体を包み込むように展開されている何層もの結界は、決して魔を寄せ付けない程の強力な物だった。
「うわぁ~! おっきな街なの。それに、リューちゃんやバーちゃんがいっぱいいるの!」
ナエが言うとおり、竜王国の民達が街の周辺を飛び交い警護していた。人間族程に数はいないと言ってたけどそれでも、結構な数だ。
「高さだけではなく、奥行きも相当な物ですね。一つの大陸そのままが街となっているかのようです」
「それに、流石清浄な竜王族の国ですね。ここまで清らかで、強力な結界が張られているのであれば、邪神軍も近づけないでしょう」
「あの結界は竜王のお力だ。1000年もの間ずっとこの場所を護られてきた力。竜王もお待ちだろうから中に入ろう」
リューガが翼をはためかせ街に近づいていくと、街の警護をしていた竜王族が近づいてきた。
「リューガよ久しいな。健在そうで何よりだ。今日はどのような用件だ?」
「ドラン久しいな。そなたもだ。今日は客人を竜王に会わせたく戻ってきた。竜王に連絡を頼みたい」
「分かった。待っていてくれ」
ドランさんが、街の奥にある一際大きな樹木へと飛んで行った。
あそこに竜王がいるのか。あれもデカイ樹木だな。
この国の物は全て人間族と比べると、建物一つ一つのサイズが規格外だ。
竜王族は、体躯が大きいから必然的に建物も大きくなるんだろう。
「入ってくれ。竜王は奥の『見透しの塔』におられる」
ドランさんが確認から戻り、中へと通してくれた。
「分かった」
多重に張り巡らされた紋章を解除してもらい、中に入っていく。街のなかは、上下様々な場所に、民家や、施設が建ち並んでいるのが見えた。
「あ、小さいリューちゃんがいるの」
下の樹木には、俺達を見上げている小さい竜王国の民がいた。
あのサイズは子供かな。それでも人間よりもでかい。
街の奥には、空高くまで伸びる建物があった。
あれが見透しの塔だろうか。
そこに近づくにつれ、空気がよりいっそう清んでいくのが分かる。
見透しの塔は、天辺から中に入れる構造になっていてリューガがゆっくりと旋回しながら中に入り、徐々に高度を落とし塔の地面へと降り立った。
中央部には体を支えるかの様に、木材で加工されたハンモックのような物に横たわる巨大な、竜王族がいた。
バハムートよりも大きな体で、鱗は虹色だった。
見るからに普通の生命体ではないのが分かる。
どこまでも、貴く高貴なオーラを出していた。
「あちらにおられるのが竜王だ」
リューガが竜王族流の挨拶なのか、短く咆哮をあげたあと翼をたたみ、頭を垂れた。
「竜王。リューガでございます。この度は竜王に魔王の称号を持つ、タクトという人間族にお会いしてもらいたく連れて参りました」
「リューガよ健在そうだな。そなたが来ることは、予見しておった。そちらが」
竜王は眼が見えないのか瞑ったまま、じっと俺を見るような仕草をした。
気配か何かで場所を察知したのか。
「お主がタクトか。……良い魂を持つ人間だ。
それに、久しい魂も一緒に存在しておるな」
竜王は、ユーリの魂が俺の中にあることが分かったようだ。
「ご慧眼御見逸れしました。言われる通り、ユーリ・ライゼ・トラスヴァールの魂は、俺の中にあります。今はドレアムと戦った時に力を貸してくれて疲れて寝てますが」
「懐かしい魂の響きだ。400年振りになる」
「はい。今日はこの戦いに勝つ為に、改めて協力体制を築かせてもらいに来ました」
「それも、予見しておった。勿論我等も同じ思いだ。だが」
そこでまた言葉を切って再度俺を見据える様に見てきた。
「そなたにはまだ目的があるようだな」
「はい。向き合いの滝で修業させてもらいたいのですが」
「……あれを使うというのか。確かにあそこで鍛練し、乗り越えられれば、そなたの望み通り自己の強化は出来よう。だが……」
竜王が何か言い渋る。
「何か……あるのですか?」
「本来向き合いの滝は、我等竜王族が己の鍛練の為に使用しているもの。己の悪の部分と戦い、乗り越えることで力を手に入れられる。だがもう一人の自分に負けることがあれば……その者は消滅する。
竜王族は、邪念には負けぬから影響はないが、人間族が使用すれば自己の邪念が強すぎて呑まれる。
そうなれば二度と帰ってこれなくなる。
……そして、今だかつて乗り越えた人間族は、ユーリ・ライゼ・トラスヴァールのみだ」
「……それは、あまりに危険すぎますわ。もし、もう一人の自分に負けることになれば……」
「お兄ちゃん危ないの?」
確かにかなり危険なんだろう。
だけど、ユーリは乗り越えたんだ。
俺も乗り越えないと、ユーリ達の領域にいけない。
ドレアムとハーディーンを倒せる程に、強くなる為には避けては通れない。
「例え危険でも、それでも俺はやる。それと皆をやらせる訳にはいかない危険すぎる」
「それはタクトさんも、同じです。ここは別の道で強化を考えた方が――」
「いや、これを避けてはドレアムにも、ハーディーンにも勝てない。俺は絶対に勝たないと駄目なんだ」
「……タクトさん」
「……決意は固まっておるようだな。ならば向き合いの滝を使用する時には、ユーリ・ライゼ・トラスヴァールの魂は一時的にそなたから離れる。この試練は、一人だけで乗り越えねばならぬからだ」
「はい構いません」
この試練を乗り越えないと皆を護る力が手に入らないなら、やるだけだ。
必ずやり遂げると、覚悟を決めた。
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