83話 不穏な予感
よろしくお願いいたします!
ハーブ村を狙っていた魔物の大群を殲滅して、残りがいないか一応周辺を警戒する。
何でこんな所にあれだけの、数の魔物がいたのか。
この村が狙いなのか、他に何かがあるのか。
その理由を突き止めたい。
「魔物の魔力反応は消えたから、もう大丈夫だろう。しかし、何であれだけの魔物が……」
「村を襲うのが目的だったのでしょうか?」
「それか、この大陸には何かあるのか――」
皆と話していると、村の戦士が近づいてきた。
「君達本当にありがとう。お陰で村が救われたよ」
「突然魔物が現れたように感じたんですが、何かこの大陸には特別な物とかありますか?」
「いや、この大陸にはこの村以外には何もないはずだが」
地図を確認しても、確かにハーブ村だけで他には何もないことになっている。
「……そうですか」
何かあると、思ったんだけど気のせいだったか。
「君達は、誰なんだ? 連合軍の戦士達という感じでもないが」
俺達の事を軽く話した。
竜王国に向かう途中にここを通って、魔物の群れを発見したことを。
「そうだったのか。急いでいただろうに、助けにきてくれたのか。あ、名乗りもしないで先に聞いてしまったな、すまない。俺はトーマという」
「タクトです。被害が出なくて良かったです。もしまた何かあれば」
言ってくださいと、言おうとしたら村の中から微量の魔力反応を感じる。
「すいません。ちょっと村を見させてもらってもいいですか?」
「もちろんだ。君達に救ってもらった村だ。お礼も返さないなんて、そんな恩知らずな事は出来ない。村長にも、報告したいし一緒にきてくれると嬉しい」
「では、お言葉に甘えさせてもらいます」
トーマさんの後をついて、村の中を歩いていく。
村は、そこまで大きくなく、せいぜい100人ぐらいが暮らす規模だった。
先程の戦いを見ていた人達もいたのか、俺達の姿を見ると、お礼を言ってくれる人もいた。
ちょっと田舎だけど、落ち着いた感じでいいところだな。
歩きながらキョロキョロと、村を見ていたナエが立ち止まった。
「ここは、ガルカリ村に似てるの。村ではいつも、お花さんにお水をあげてたの。もう戻る事もないのかな」
少し寂しそうな顔でポツリとこぼした。
「ナエちゃんは、わたくし達と一緒の所が故郷ですわ。もちろんトラスヴァールもですよ」
アルフィンがナエの手を握る。
「そうですよ聖樹教会もです。リアンヌ様もナエちゃんの事が大好きになると思います。それに、クリスタにはお父さん達が待っていますよ」
シズクも空いている方の手を握った。
「二人の言うとおりだぞ。だから、早く平和にしてお父さん達の所へ帰ろうな」
ナエの頭をワシャワシャと撫で回した。
「わわ! またグルグルなの!」
トーマさんは俺達の様子を見てニコニコと見つめていた。
「ここが、村長宅だ。あ、ちょうど家の前にいるな。村長」
「おお。トーマか。そちらの方達が、さっきの魔物を倒してくれたのだな」
「もう聞いてましたか」
「うむ。アルフィン王女お久しぶりでごさいます。まさか、村を救ってくれたのが、王女だったとは」
村長さんは、アルフィンを知っていたみたいだ。
この辺は、トラスヴァールから近いから知ってたんだろうか。
「申し訳ありませんが、以前お会いしたことが?」
「はい。お話をさせて頂いたのは、今回が初めてですが、以前王女の成人の儀に参加させて頂いた時にお見掛けしました。名乗らせて頂きます。ハーブ村の村長をしておりますマーマンと申します」
「よろしくお願いしますわ。わたくしの儀に来てくださっていたのですね」
「そうでございます。立ち話もなんですので、どうぞお入りください」
村長宅に入り、木製の椅子に座る。
村の名産物のお茶を出してくれた。
「このお茶は、リアンヌ様が好きな茶葉ですね」
「こちらは、各王家と、聖樹教会にも仕入れさせてもらっていますので」
「なるほど、どおりで」
村長が立ち上がり頭を下げた。
「改めまして、この度は助けて頂きありがとうございます。この大変な戦況なのに、本当に助かりました」
「ご無事で良かったです。ただ、奴等の目的が気になるのですが。元々この大陸の魔物の状況はどんな感じでしたか?」
「ここは、中級魔物程度までしか出ません。数だって大陸全体で見ればそこそこいますが、それでもあんな大群なんて考えられないことです。ましてや魔物が統率をもって一つの目標に向かう事もまずないことです」
と言うことは、ドレアムあたりが魔物を指揮したのか。
何の為に?
「ありがとうございます。この後、村の石盤を機能する様にしたいのですが、いいですか?」
「石盤ですか? ああ。村の外れにある物ですね。どうぞお好きになさってください。アルフィン王女近々トラスヴァール城へ、今回の御礼と、最高級の茶葉をお持ちしまして、伺いに行かせて頂きます」
「わざわざすいません。御父様によろしくお伝えください」
「ん?」
村長の許可を取り、村の外れにあるワープの石盤へ向かっていると、村の中から視線を感じた。
ただ興味で見られている感じではない、悪意のこもった類いのが。
「タクトさん? どうされましたか?」
「……感じなくなったな……気のせいか? いや、何でもないよ」
もう一度視線を探ったが何も感じなかった。
ワープの石盤の前に着くと、ナエが自分がやると言った。
「あたしに任せて。やり方は覚えたの」
前回は中々苦戦していたが、今回はあっさりと成功させた。
こういう所でも、成長を感じられる。
石盤を使える様にしてからは、村を出て、リューガに乗り大陸をくまなく探索した。
やっぱり何もないか。
前みたいに突然出来た、ダンジョンもないし、何か異変があるかと思ったが……。
「……いつまでもここにいるわけにもいかないか。移動しよう」
一抹の不安と、モヤモヤを抱えたままこの大陸を離れ竜王国へと向かった。
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(*- -)(*_ _)ペコリ




