80話 行動指針
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翌朝。
ルーデウス帝国の城内にある大会議室で、連合軍のトップである隊長と、副隊長、国の重鎮を集めて、これからどうしていくのかを話し合うことになった。
昨日は部屋に案内されるや、そのまま爆睡したお陰で、疲労感は抜け体力も幾ばくか回復した。怠さも取れて体も軽い。
シャワーを浴びて、約一日ぶりとなった食事をした後、大会議室に移動した。
大会議室は、大きな竜王国の戦士達も入れるように、結構な広さがあり、天井部分が魔力でスライドして開けられる構造になっていた。
もうすぐ午後となる時間帯。
主要メンバーが揃ったところで、連合軍の今後を占う会議が始まった。まずはこの国の皇帝であり、連合軍のリーダーでもあるアーロンさんが前に出た。
「皆の者。改めて此度の防衛戦は、ご苦労だった。ドレアムの姑息な手でエリス王国が陥落し、最前線がここルーデウスに後退を余儀なくされ、その間も、執拗に繰り返される追撃の手を逃れ、何とか防衛戦を敷いた」
ここで一旦、アーロンさんが息を吐く。
一呼吸してから、続きを話し始めた。
「予想よりも遥かに多い魔物の数と、四天王の襲撃。我等の消耗を突かれて窮地に陥った。だが」
俺達の方へアーロンさんが顔を動かし目線を向けてきた。
それに倣うように、この場にいる全員も俺達を見た。
「まさに絶体絶命な時に、彼等、タクト達が来てくれた。
彼等が来なければ、我等は全滅していただろう。改めて礼を言わせてもらいたい。ありがとう」
昨日もお礼を言われたばかりだが、気持ちは嬉しいので受けとっておく。若干照れくさいけど。アルフィン達も同じ気持ちなのか、少し困った顔をしていた。
「昨日も言いましたが、俺達は、当たり前の事をしただけです。それに、俺は。このマギア・フロンティアをハーディーンの手から護る事を了承して、異世界から来ました。俺もこの世界を護りたい。だから、俺達は志が同じ仲間なんですから、もう気にしないでください。俺達もその方が、嬉しいので」
「……そうか。タクトは、異世界からこの世界に来たのか。これからの事を話す前に、その辺の事も情報を共有しておいた方がよいだろう。この場にいる者の紹介もさせてもらおう。先ずはわたしからだ」
それから、連合軍のトップの人達の名前とステータスを確認させてもらった。
アーロン・ハンク・ルーデウス
ルーデウス帝国皇帝、連合軍総指揮官
レベル78
スキル 魔力操作(特の上)、遠距離魔法(特の上)、身体能力強化(特の中)、同時魔法行使、王の品格
バハムート
竜王国防衛隊長、連合軍部隊長
レベル77
スキル 近接戦闘(特の上)、飛行能力、ドラゴンブレス(特の上)、身体能力強化(特の上)、魔力操作(特の中)
ジェクト・ガーデン
連合軍部隊長
レベル77
スキル 近接戦闘(特の上)、中距離戦闘(特の中)、身体能力強化(特の上)、気配察知、結界術(特の上)、破壊の鉄球操作
クラウド・ブレイブ
バラガン公国戦士隊隊長、連合軍部隊長
レベル78
スキル 剣術(特の上)、近接戦闘(特の中)、中距離戦闘(特の中)、身体能力強化(特の上)、魔力操作(特)、魔法剣作製、気配察知、戦術、作戦立案、生命解放
隊長達は、流石の強さだ。
昨日は、やっぱり疲労から全力が出せなかったのだろう。
今戦えば、違う結果になるかもしれない。
隊長達の他に、副隊長、国の重鎮達の名前も教えてもらった。
ついでに、俺達のステータスも教えている。
「その強さはまさしく魔王だな。アルフィン王女の治癒スキルに、シズクの破魔の力、ナエの収束スキルも、まさに文献に記されているとおり。400年前のユーリ陛下のパーティー、英雄達そのものだ」
確かに。
俺達は、狙った訳でもないのにユーリのパーティーと同じスキルを持つ者が集まった。
「それとナエの収束スキルだが、ルーデウスには初代ルーデウス皇帝が使用していた、専用装備がある。装備する条件に、収束スキルが必要だが、ナエならぱ装備出来るだろう。話しの後で渡そう」
「あたしの専用装備? やったの! これで、ジャギに勝てるの!」
ナエの専用装備。破魔を強化することが出来れば、多少の不利も覆せる。
ジャギにとっても嫌だろうな。
魔法耐性の高さに加えて、魔法自体も強化されちゃ。
「ナエ。専用装備で、かなりのパワーアップができるとは思うが、鍛練も変わらずやっていこうな。
俺もドレアムと戦って身に染みたけど、鍛えられる時には鍛えといた方がいい」
「うん、頑張る! もっと強くなって、ジャギを懲らしめて皆を守るの」
ナエは専用装備が手に入ったからって、鍛練をサボることはしないと思うけど、一応な。
少しでも力をつけておかないと、いざという時に大切なものは守れない。
「さて、それぞれの紹介と認識はこれで大丈夫だろう。次に本題である、今後の行動指針を決めたいと思う。
早ければ明日にも、援軍が到着することになると思うが、それを踏まえて一度、ここを正式に拠点としたいと思うがどうだろうか?」
「俺も、賛成だ。暗黒大陸に乗り込むにしてもこの戦力では話しにならないだろう。タクト達が共に戦うにしても、まだ準備は必要だろう」
アーロンさんの案に賛成の声を挙げたのは、軍師として作戦立案を決めてきた、クラウドさん。
「そうだな。今回でアイツら相手には、勢いだけだと負けると俺も、分かったからよ。この仮を倍にして返すんなら、準備しねぇとな」
「うむ。ジェクトがそう思うほどに、ワレもやられて骨身に染みた。同じ失態はしてはならないだろう。それと、タクトには何か準備する時間が必要だと、リューガから聞いている」
バハムートが前方に進み出て、リューガに話しを振る。
「それもあるが、竜王も、タクトに会いたがっていると思う。
それに、ワレを助けてくれたお礼もさせてもらいたい。ワレに乗ってもらい、竜王国に行きたいと思うが」
「うむ。竜王国の民は、命の恩人には最高の礼をする決まりがある。ワレも、四天王にとどめを刺されるとき助けられた。しっかりと、恩義は返すべきだ」
「なるほどな。タクトはどう動くつもりだ?」
「リューガと、バハムートがいうように、暗黒大陸に乗り込む前に、竜王国に行きたいと思います。
竜王にも協力体制を作りたいのと、俺自身の強化もしたいので。竜王国には、そういう物があると、聞いています」
「確かに、国には「向き合いの滝」がある。そこでなら、自己の強化も出来ようが、何故それを知っているのだ? まだ誰も話していないと思うが」
「俺の魂の中には、ユーリ・ライゼ・トランスヴァールの魂があるんです。俺がこの世界に転生した時に、女神から力を幾つか貰いました。その一つに、ユーリと俺を会わせるというのがあったんです。
それでユーリからたくさんのアドバイスと知恵をもらってきました」
「ユーリ陛下の魂がタクトの中に……。そう言うことであったか。ユーリ陛下は、自身の肉体が滅んでも尚、マギア・フロンティアの安寧の為に、動かれていたのだな。本物の誠の王だ」
同じ一国の王として、アーロンさんも思うところがあるのだろう。目が潤み何度も頷いていた。
「それで、石碑をもう一度作製して、ハーディーンを封印か。
材料は、もうあると言っていたかな?」
「そうです。あとは造るだけです。竜王国に行った後に、もう一度細かい部分を決めさせてもらいたいと思います。
ユルゲン陛下、シーゲル陛下、ヨーク公、アリサ女王にも協力を要請していますので、連絡も取りたいですし」
「分かった。今後の方向性は、それで進めていこう。
他に何もなければ、会議はこれで終了だ。それでは、専用装備を渡すからついてきてくれ」
ナエの専用装備を受け取りに、アーロンさんについていった。
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