79話 戦いの後
よろしくお願いします!
新たなスキルが目覚め、全力を出しきることでドレアムを何とか退けることができた。
その代償に、魔力も体力もスッカラカンになったけど。
限界突破を使用した後は、倦怠感で体は怠くなるが、今回は体にも結構な負担をかけてしまったらしく、体のあちこちに外傷と、内臓にもダメージを負わされた。
痛いし怠いしで、動く気にもなれずに地面に座りこんで体力回復に勤しんでいた。
「はぁ、いいようにボロボロにされたな。これはきっついなぁ」
自分のボロボロの姿に、思わずため息を吐いていると、聞きなれた声で名前を呼ばれていることに気づいた。
「お兄~ちゃ~ん!!」
遠くからナエの声が聞こえる。
声のした方を見ると、アルフィンと、シズクも一緒に居た。
俺の魔力を辿って、探しにきてくれたんだろう。
皆が無事なのは、魔力で分かっていたけど、こうして姿を見るとほっとするな。
「ここだ~。ここにいるよ」
右手を上げて、声に応える。
それを見たナエが嬉しそうな顔で、勢いとスピードをぐんぐんと加速させて走ってくる。
これは……いつものあれか。
またしっかりと、魔力を纏ってるな……。
前回は、まともにくらって痛かったから、今回は俺も魔力を――――やばい! 今魔力切れなんだった。
「あ、ちょっと! 待っ――」
そんな事お構いなしと、速度を上げて、魔力操作で威力が爆上げての突撃タックルが、腹に直撃した。
「ごはぁっ!」
盛大にぶっ飛ばされた。
「ああ! タクトさん! 大丈夫ですか!?」
「タクトさん! 命はありますか? これは! なんて酷い怪我を!」
アルフィンとシズクが駆け寄って来る。
シズクそれは、ドレアムにつけられた傷だ。
俺の容態を観て、アルフィンは直ぐに治癒魔法をかけてくれる。
痛い。ドレアムの一撃も痛かったけど、ナエのタックルも痛かった。
「お兄ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
ナエは、いまいち状況が分かってないみたいに首を傾げていた。
アルフィンに治癒魔法をかけてもらいながら、互いに首尾を確認しあっていた。
「……そうでしたか。タクトさん……良かったです。生きていてくださって……。もし、タクトさんの身に何かあれば……」
アルフィンが涙目になりながら、抱きついてきた。
「……タクトさんをここまで、ボロボロにするとは。恐ろしいですね、ドレアムは。でも本当に良かったです」
シズクも俺を支えてくれる。
「ありがとう。それと、心配かけてごめん」
皆に頭を下げて謝る。心配をかけてしまったな。
「だけど、色々と収穫があったみたいで、良かったよ。
皆も無事だったし、シズクもゲラルドに通用したみたいだね」
「はい。ドレアムの黒い渦に邪魔されましたが。
あと一歩で、倒せるところまで追い込みました。次はきっちりと決着をつけます」
シズクを見ると、やりきった顔をしている。
「頼もしいよ。ナエもよく無事だった。ラカンさんと、一緒に頑張ったんだな」
「うん。ラカンおじさんと頑張ったの。勝てなかったけど、負けなかったよ。それに、お兄ちゃんの教え通りに、魔法つかえたんだよ」
装備品が傷つき壊れているけど、顔はスッキリとしている。
「そうか偉いぞ。頑張ったな」
ナエの頭を撫で回す。
「えっへへ~! やったの褒められたの!」
ニコニコと良い笑顔だ。
「タクトさんの、新しい力というのも気になりますね。どのような力なのですか?」
治癒魔法をかけてくれながら、アルフィンが聞いてきた。
「うーん。俺もいまいち良く分かってないんだ。
突然使えるようになって、ドレアムの神級魔法の威力を弱めたんだけど」
「突然……ですか。何かきっかけとか、前兆のようなものはありましたか? 私の破魔は開花する前には、それらしいのはありました」
「あたしの収束も、キラキラが少しだけど、出ていたの」
二人の専用スキルは、そうだったな。目に見えて何か目覚めそうな、予感は感じた。
「前兆か……。この戦場に到着して、ドレアムを見たとき違和感みたいのがあった。アイツと戦っていくうちに、それが段々と強くなっていったんだけど、それが関係しているかもしれない」
「何か発動条件が必要だったのかもしれませんね」
「俺が貰ったギフトは、他の専用スキルとは違って、特殊なのかもしれないな」
レベルが上がると勝手に使えるようになると思ってたけど、違ったし。
限定的な、条件が必要だったのか。
女神に直接聞ければ、いいんだけどそれも難しいしな。
真相は女神のみぞ知るってか。
「一応、ステータスを確認したんだけど、スキル名は表示されてないんだ。分からないものを気にしてても進まないから、これからどうするか決めようか。隊長達や、魔物はどうなった?」
「はい。魔物は、怪我から復活した隊長達が、隊をまとめて対処にあたり殲滅しました。わたくし達が、タクトさんを迎えに来るときには、戦況は落ち着いておりました。ラカンさんは、本部の方へ戻られて、わたくし達の受け入れ体制を取って頂いていると思います」
「そうか。被害が最小限で済んで良かった。アルフィンも治癒魔法お疲れ様」
「ふふ。ありがとうございます。犠牲者が出なかった事が、何よりの救いですわ」
その通りだ。皆、大切な人達の為に戦ってるんだ。
帰りを待っている人達がいるんだから。
「よし! 傷も治ったし、本部へ行ってみようか。これからの事を話し合いたい」
まだ体は重いけどアルフィンの治癒魔法のお陰で、歩いて動ける程度まで回復した。
連合軍の隊長達と話す為に、隊長達の強大な魔力反応を辿って、歩いていくと。
圧巻の光景が待っていた。
二万人以上の連合軍の戦士達がずらっと整列し、俺達が来るのを待っていたのだ。
その光景に観入っていると、初老の男性と、クラウドさんが前に出てくる。
クラウドさんと一緒にいるということは、連合軍のトップの人か?
「タクトさん。こちらがアーロン皇帝です。連合軍のリーダーですわ」
アルフィンが俺の体の右側を支えながら、説明してくれた。
「初めましてだな。わたしが、連合軍のリーダーをしているアーロンだ。
クラウドと、ラカン、リューガから話を聞いている。
今回は本当に助かった。我々を助けてくれてありがとう!!」
アーロンさんが、頭を下げてお礼を言ってくれた。
その後、全員が頭を下げお礼を言ってくれる。
「間に合って良かったです。俺達は仲間なんですから、気にしないでください」
「ありがとう。色々と礼や話もしたいところだが、今日は、疲れたろう? あのドレアムと戦い、こうして生き残ったのだ。
城に部屋を用意するからゆっくりと休んでもらいたい。明日これからの事を改めて話し合いたいと思う」
流石皇帝だ。
話し方や、立ち居振舞いはまさしく王の風格が溢れている。
めっちゃダンディーだし。
「助かります。正直言えば、ヘトヘトなんで」
「はっはっは。そうだな我々もだ。今日ばかりは、この危機を乗り越えた事の幸運を噛みしめ、ゆっくりと休もう。また明日から戦えるように」
その後、重たい体を引きずり案内された部屋で、泥の様に眠りについた。
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